硬派な日曜〜真澄の場合〜
「ッセー!ッセー!東郷!」
「ッセー!ッセー!東郷!」
私立東郷学園のグラウンドに野太い声が響く。
文武両道を旨とするこの学園は、運動部の活躍も著しいものがある。
特に野球部は甲子園の常連校であり、近在の野球部では歯が立たない。
……はずだったのだが。
「ぅあ!また打たれた!」
「バカ!我々、応援団部が諦めてどうする!」
「す、すみませんっ!真澄さん!でも……」
「ぁあっ!満塁ホームラン!?」
「諦めるな!最後まで諦めるな!三三七拍子!」
「ウッス!」
軽快な三三七拍子に乗せて男たちの悲痛な叫びにも似た応援が続いたが……。
「ゲームセット!三ツ星高校!」
自校の敗けを告げた主審の声を茫然と聞いていた真澄が膝をついた。
汗臭い学ラン達が駆け寄る。
「……負けた……。三年間無敗の東郷学園野球部が……」
「真澄さん!大丈夫ですか!」
「オレのせいだ………」
「違います!真澄さんのせいじゃないッス!」
「オレが……オレが……ヘンタイなせいなんだー!」
「真澄さん!?なに言ってるッスか?しっかりしてください!」
「オレがヘンタイだからー!」
「真澄さん!真澄さーーーん!……」
真澄がヘンタイを自覚した最初の瞬間だった。