兄×妹?弟×姉!?
アタシ、今日もカァイイ♪
ミニのチェックのプリーツスカートをつまんで、鏡の前でくるんと一回転。
ショートカットの髪がふわぁっと、天使の羽根みたいに軽やかに広がる。
モデルみたいにポーズをとってみて、やっぱり、カァイイ……。けど。
「ムネ、ほしいなあ……」
ポツリとつぶやいた。
その時。
ドカ!ズドン!バタン!
ユンボが我が家を解体しに来たかと思う破壊音が階下から聞こえた。
「ヤバい!拓海が帰ってきた!」
アタシはバタバタとカァイイスカートを脱いでベッドの下に押し込んだ。ガチャーン、ドン!
象がドアを蹴破ったかと思う破壊音が部屋に響く。次の瞬間、アタシたちは火花が散るような視線で睨みあった。
「妹の部屋に勝手に入ってんじゃないわよ!何してんのよ!」
「何してんのは、こっちのセリフだ!なんだ、その格好は!」
「私がどんな格好しようが、私の勝手でしょ!」
「健全な精神は健全な身体に宿るんだ!健全な身体には健全な衣服をまとうべきなんだ!」
「私の格好のどこが不健全だっていうのよ!」
「婦女子の分際でズボンしか履かないとはなにごとか!拓海!」
「男のくせにスカート履く変態兄に言われたくないんですけど!」
アタシは何を言われたか理解できなくて、固まった。
オトコノクセニスカートハクヘンタイ?
「は、ハハハ。な、何を言ってるんだ、拓海。お兄ちゃんがいつ、スカートを履いたと……」
拓海は無言でツカツカとベッドに詰めより、押し込んでいたチェックのスカートを、サテンのブラウスを、ニーハイソックスを、真っ赤なリボンを引きずり出した。
「なんか言うことあるのか、ヘンタイ」
半眼で見下ろされて、兄、真澄の権威は地の底まで失墜した。
「ぁりません……」
パンツ丸出しで妹の部屋で妹にさげすまれ、森重真澄の硬派な高校生活は露と消えたのだった。