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ワンダーエンド  作者: 凩夏明野
第一章-興奮エンド-
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危機脱出の勧め

何なのかは全く理解出来ていなかった。

ただ言えるのは、いきなり床や天井、果ては壁からせり出したこの真っ白な壁が、俺を助けてくれたのは確かだという事だ。

でなきゃわざわざ俺と敵を分断なんてしない。

俺は壁を作った、若しくは出現させた奴の好意を無にしない為に凜達の下へと走り出した。

「っは!は!は……はあ、はあ。くそ……やっぱり、思いの外体力を消耗してたんだな。」


いざ走り出すと、脚が鉛と言うか、床に固定されてるんじゃないかと思う程重たかった。

春日井と対峙していた時は、その緊張感故にアドレナリンでも過剰分泌していたんだろう。

その糸が解けた瞬間これだ。

堪ったもんじゃないな。

しかしだからと言って脚を止める訳にもいかず、亀の歩みよりはマシだろうと思える速度で階段を下る。

……徒歩で移動するパターンの場合、確か地下5階の倉庫に行くんだよな。

そこに抜け穴があるからそれを滑ってこいと博士に言われた。

滑ってこいとはどういう意味なのか、いまいちよく分からない。

まさかとは思うけど、その地下の電車とやらまで続く滑り台でも作ったのか?

いやまさかな。

そんな物素人だけで作れるとは思えない。

日曜大工じゃあるまいし、俺達に内緒で博士一人で作るなんて有り得ない。

しかし地下5階か。

こんな場所まで来るのは初めてだ。

そもそも地下5階って。

大学に地下なんて必要あるのか。

何て事を考えつつ、相変わらず重い脚を何とか稼働させて、ようやく例の倉庫に辿り着いた。


「全く、徒歩で来る可能性を想定してるなら、もう少し、近くに、しといてくれれば、いいのに……。」


息を整えつつ、倉庫のドアノブに手をかける。

鍵はかかっていない様で安心した。

此処まで来て鍵がないから帰ってねでは洒落にならない。


「……ふー。さて、この倉庫の何処かに地下に続く抜け穴が……って、これか。」


これなんだろうけど、いやいや駄目だろう。

抜け穴とか秘密の通路ってのは、隠されているのが常じゃないのか。

滅茶苦茶分かりやすく『抜け穴』って書いた立て看板がこれまた分かりやすく外れやすそうな蓋の側にある。

御丁寧にふりがなまでまで……。


「ま、分かりやすくていいけどなっと。」


蓋を開けてみると、ぽっかりと穴が空いていた。

微かに風を感じるが、もしかしてマジで滑り台みたいな物を作ったのかあの人は。

落ちない様に慎重に中を覗いてみると、中は入り口より幅が広くなっている。

直径は凡そ2m程か。

人が入っても大丈夫そうなスペースではある。

ではあるが、この中に入るのは少しばかり勇気がいるな。

大体出口がどうなっているのか分からないのにこんな所に飛び込める訳がない。

探知されるかもしれないが仕方ない、此処は一先ず博士達に連絡を―――


「って、うおおおおおお!?しまったあああああ!」


ずるっと、そりゃもうギャグ漫画でずっこけて一回転する位の勢いで脚が滑った。


「うおおおおおお止まらねええええええ!」


怖い怖い怖い怖い!

春日井と対峙した時より断然怖い!

速すぎ!

案の定中は滑り台と言うかスロープと言うかまあそんな作りだった訳だが、どう考えても角度を間違えている。

人はこんな角度を滑り降りてはいけない。

何故なら加速が過ぎるし、何より終着点で怪我をする可能性が高くなるからだ。


「っくそ!全く減速する素振りがない!殺す気かあの人は!」


そうだ“Speed”を使って時間を止めれば……って、俺自身の体感時間を早めた所で俺は動き続けるから意味ないか。

この滑り台自体が動いているならまだしも、こいつは止まっているしな。

何て落ち着いて考えてられるか!

後で博士に会ったら文句の一つや二つや百言わなきゃ気が済まないレベルだぞこれは!


「くうううううう!って、何か明るくなってきたな!」


どうやら出口はもうす―――


「うぬおあ!?」


確かに出口はもう直ぐだったが、俺の予想していた物とは大分違っていた。


「……何で最後の最後で落下させやがったんだこの滑り台は。」


出口は落下地点から約2m程上だった。

そう、出口は宙にあったのだ。


「遅かったの如月。無事で何よりじゃ。」


「確かに無事で何よりですよ。今から言いたい事を適当に羅列するんで聞いてくださいね。先ず原点使いの―――」


「分かっておる。だが今は先ず電車に乗り込むとしよう。話はそこですればいい。」


……まあ、それもそうかもしれない。

今の今まで春日井が追い付いていない理由は分からないが、それはあいつから逃げ切った事にはならないのは分かる。

現時点でまだ追われている可能性はあるから、さっさと此処を離れるのが得策だろう。

という訳で、俺は博士、宗司、凜と共に何処に行くとも知れぬ電車に乗り込んだ。

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