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ワンダーエンド  作者: 凩夏明野
第一章-興奮エンド-
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最悪の重展開力

結果から言おうか。

この出会いによって、良い結果と最悪の事実が同時に出現した。

どっちから聞きたい?

良い事を聞いた後に落とされるか、それとも悪い事を聞いた後で上げられるか。

お約束としては、良い事なんだろうけど、良い事の方は結構分かりにくいと思うんだ。

だから、良い結果はこの話の最後で言うとしよう。

だから最悪の事実を話す。

いやまあこれにしたって想像は付いてたんだけどね。

IFLCに『重力の原点使い』がいた。

ただそれだけの、最悪な事実さ。

「さて、では今更ながら作戦を説明しよう。と言っても、大塔君の“複数飛行”を使って地下の『列車』に移るだけじゃがね。」


「簡単に言いますね博士。私はその『地下の列車』とやらがある場所なんて見たことないんですよ?」


「俺もや。正直んなもんがあるなんてと疑心暗鬼ですわ。」


「俺も。大体、なんたって大学の地下に列車なんてあるんですか?」


すげえ便利じゃん。

俺も使いたかったくらいだ通学に。


「ふむ。まあ備えあれば憂いなしというやつじゃな。一応、今回の様なケースを見越して創っておいた。」


「そうなんですか。じゃあさっさとそこの地図見せてもらえます?急がないと不味いでしょ?」


「そうじゃな。杵築君と如月君は外の番をよろしく頼む。」


「了解です。」


「ほな行ってきま。なるべく早うしてくんさいね。」


ご指名を受けた俺と宗司が外に出る。


「慌てなあかん時にえらい落ち着きようやよね博士。」


「ま、元々危機感なんて物とは無縁な人だからな。」


あの人が慌てていた所なんて見たことがない。

常に冷静に物事を判断する。

呼び名からも名前からも言える事だが、とことんまで科学者だよあの人は。

博士の紹介を勝手にしていた俺に、宗司が伸びをしながら話しかけてきた。


「しっかし、『IFLC』と全面対立かー。そんなに力があるんかねその……何やったっけ?」


「忘れんなよ……。『C.D.C』だよ。なんの略かは俺も知らねえけど。」


『C.D.C』。

そして『IFLC』。

説明せねばなるまい。

が、悪いんだけどそれ所じゃなくなった。

俺達の前方6m程の天井が、埃や砂煙、でいいのかは知らんが、まあそれらを発てず、ただし音は、まるでこの世全ての石っころが大気圏から落ちてきたような音が鳴り響き、俺達の耳をかなり刺激した。


「ぐ……。目が(いて)え。」


「……何やねん全く。あ、もしかしてあれか。引っ越し作業でえらい忙しい俺達を手伝いに来てくれたんかね。」


「お前はあんな激しい登場の仕方をする中途半端にオールバックで甚平姿の男と、さながら特殊部隊の様にロープを伝って、さながら特殊部隊の様な格好をして登場する奴らが知り合いにいたのか。お前との付き合いはそれなりに長いと思っていたが、やれやれ、俺はまだまだお前の事を分かっていなかったらしい。」


「……なあ薫。確かに相手の見た目を説明するのはえらく大事や。けどな、一つのボケに、んな長い突っ込み入れられても困るわ。」


とか何とか言いながらも、まあ俺もだが、宗司は落ちてきた相手と降りてきた相手から目を離す事はなかった。

所謂臨戦体勢である。


「んんんんんんんんんんんんん?」


半端オールバックが『ん』を連呼し始めた。

……やばい、ギリシャ文字っぽいのに見えてきた。


「はっははー。お前らあれだ、木更津香と木次惣太郎だ。」


「は?」


「誰やねんそれ。」


名前を間違えている。

文字数までだ。

いや香って、女の名前じゃねえか。

半端オールバックはニヤニヤしながらこちらを見ていたが、特殊部隊風の一人に肩を叩かれ耳を貸しはじめた。

と言ってもいきなり耳を引き千切った訳じゃないからな。

その後も男のニヤニヤは収まらなかったが、特殊部隊風に何かを耳打ちされ、改めてこちらに向き直った。


「何だよ、きさ……如月薫?と、き……杵築宗司じゃねえか。名前が(ちげ)えならさっさと言えやタコ共。」


「てめえが勝手に間違えただけだろうが甚平。」


「勝手にあだ名付けんなボケ。」


ケラケラ笑いながら頭をボリボリ掻いている。

……ただもんじゃないのは分かるが、どっちだろうか。

全体的にやばい奴か、頭だけやばい奴か。

どっちにしても関わりたくない種類の人種だ。


「……どうするねん薫。あれ絶対やばい奴やで。」


「ああ。俺の思考も取りあえずそこには至った。ついでにこれは確信で核心だと思うんだが、IFLCだろあいつら。」


一応あっちに聞こえない様にこそこそ話す。

聞こえた所で気にしなさそうだけど。

さて、あっちから攻めて来る気は無さそうだし、改めて敵の装備等を確認しよう。

まず、半端オールバックこと甚平。

あれは十中八九イヴだろう。

周りの特殊部隊風を見れば分かる。

奴ら、三人いるんだが、甚平とは打って変わって重装備。

恐らく超硬度ナノチューブで編まれ、更に布の継ぎ目数ミクロン単位に立方晶窒化炭素を埋め込んだ服とズボン。

それに六方晶ダイヤモンドと呼ばれるロンズデーライトで出来たボディーアーマー。

右足のホルスターには俺から見て左の奴から、H&KUSP、グロック17、デザートイーグル。

そして手には、FNP90、ステアーAUGA3、PPSh-41。

……いやいや。

P90とAUGは分かるが、マンドリン、バラライカことペーペーシャ・ソーラクアジーンって。

いや好きだよ、俺も好きだけどさ。

ペペシャちゃんが作られていたのは1950年代までね。

100年以上経ってるぞ……。

……とまあ、特殊部隊風の奴らはあれ程『警戒』して此処に乗り込んできた訳だ。

だのに半端オールバックは甚平。

そんな度胸がある奴は相当馬鹿な甚平か、かなりの実力を持つ甚平くらいだ。


「なあ、あー……更月涼治だっけ?」


「誰だそれは!どっちを呼んだかも分からねえ間違え方をするな!」


「あー?糞生意気な事言うじゃねえか糞餓鬼。お前を呼んだんだよ男A。」


「俺はモブじゃねえよ。」


何なんだよコイツの記憶力は。

ミジンコ以下何じゃねえか。


「今すぐ殺してもいい……いやこれだと違えな。今すぐ殺したいと俺は思ってんだがよ、まあ出宮(いでみや)はともかく、大蔵(おおくら)は基本的に平和主義、更に言や蒐集家なんだよ。」


大蔵ってのは確かIFLCの代表取締役とかそんな感じの奴だな。

けど、出宮って誰だ?

ま、そんな細かい事はいいか。


「だから、世界に点々と存在するイヴを集めてんだよ。Indraの連中まで引き込もうってんだからな。糞迷惑な話しだぜ。」


「そりゃあ迷惑だな。その何とかって言う連中にとっても、……俺達にとってもな。」


語尾を低く、威圧する様に言ったが、効果なんて全く無いだろうな。

実際、半端オールバックはニヤニヤしたままだ。

全く以て不愉快だ。


「ま、つー訳でよ、えー……如月薫。」


やっと覚えたかこの野郎は。


「と、杵築宗司、と、その扉の向こうにいる軽石と嬢ちゃん。大人しくついて来いや。」


「拒否する。お前らIFLCは信用ならねえし、俺はお前らと仲間になりたいなんてまるで思わねえ。だから拒否だ。」


「俺もや。あんたらはイヴの世界作ろういう考え持ってんやろ?その為にするだろう事も何となくやけど予想が付く。だから拒否や。」


「っち。はー。そらそう言うだろうな。糞ボケ共が。面倒くせえったらありゃしねえ。」


半端オールバックがスッと右手を挙げる。

と、それに釣られる様に三人の特殊部隊風がそれぞれの銃、それぞれPDW、アサルトライフル、短機関銃と定義される銃を構えた。

無論俺達に向けて。


「本気の威嚇射撃だ。死ななきゃいいな。はっはははははは。」


そして銃口は火を噴き、同時に更に激しい火が、俺の左隣から放たれた。


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