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ワンダーエンド  作者: 凩夏明野
第一章-興奮エンド-
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IVE

イヴになる人間は甘党である。

極論ではあるが、間違えではない。

イヴは個々に持つ『ADOM(アダム)』を使うと、かなりの疲労感に襲われる。

そんな時、疲労回復に役立つのが甘い物という訳だ。

だからイヴは甘党、元い甘い物が食べられる者がなる。

という俗説がある。

実際、適合出来ずに死んでいった連中は甘い物が食べられない奴が多かったらしい。

ま、どうでもいい事だな。

そう、どうでもいい事だ。

今はそれより重大な、それでいて重要な案件を抱えているんだからな。


「……遅い。」


この言葉、まあ俺が発した物なんだが、客観的に見てみよう。

この言葉から察するに彼、『如月薫』は何かを、若しくは誰かを待っているんだろう。

例えば飲食店だった場合、そのどちらの可能性も有り得る。

頼んでから30分経っているのにラーメンが出てこない。

器に足が生えていて、勝手に出てくる想像をした君は、感受性豊かで、それでいて馬鹿なんだろうがほって置こう。

待ち合わせの時間から30分経っているのに待ち人が来ない。

責めるべき大罪だな。

セブンシンズとか、そういう物全てを遥かに凌駕する大罪だと言っても過言では無いだろう。

タイムイズマネーでありマネーイズタイム。

時は金成りであり金は時成りなのだ。

突き詰めてしまえば、俺はこの30分働けば、時給の半分を貰える事になるのだからな。

だが安心してくれ。

ラーメンを30分待たせる店は、俺が知る限り取りあえず無い。

大体、俺カップラーメンは好きだけど、店に行ってまでラーメンを食おうとは思わないし。

だがしかし、それは置いておくにしても、置いておいていいにしても、30分遅刻する奴はいるのだ。

いや、32分以上と言うべきだな。

これは最早死刑を宣告されても、抗う事すら許されないレベルの所業だ。

何故だ、何故俺以外時間を守る奴がいないのだ。

怒りを通り越して泣けてくる。

俺はお前達、と博士をそんな風に育てた覚えはない!

更に言うならお前達と博士を育てた覚えもない。


「……遅いいいいい!もう我慢の限界だ!ここまでくると、何で俺だけ律儀に時間守ってるのか分からなくなるぞ!ゲシュタルト崩壊だあああ!」


「そう怒鳴らんでもいいじゃろ如月。ほれ、わしは来た訳だし。」


「うぇっ!?」


扉に背を向け一人咆哮を唸らせる俺の背中に掛けられる声。

キャラ作りとしてやっているとしか考えられない言葉遣い、それに加えて、いやこっちで考える、元い推察するのが当たり前なんだが、中年の様な声。

知っている人なら後ろを見ずとも博士だと分かるだろう。


「……遅いですよ博士。41分の遅刻です。」


「ふむ。わし実は沖縄人なのじゃ。」


「そんな下手な嘘吐かないで下さい。貴方根っからのオールドシティーボーイでしょ!」


「また懐かしい単語を持ち出したな。」


ほっほと笑いながら博士は珈琲を入れはじめた。

どんだけマイペースなんだ。


「まあ慌てるな更月。時間はたっぷりある。その証拠に何も起きておらん。違うかな?」


「起きてますよ。俺以外全員が遅刻するって異常事態が。」


「薫。焦らない焦らない。急いては事をし損じるって昔の偉い人が言ってたでしょ。」


再び背中から掛けられる声。

しかし、俺の背中には今鉄壁の護り手ならぬ岩壁の護り手、つまり壁しかない。

この声がもし男だったとしたら、俺は怒っていただろう。

何故ならそいつが俺の背後にいたとなれば、確実に壁をぶっ壊していただろうからだ。

掛けられた声は女。

それに対しては驚きもしないし怒りもしない。


「43分の遅刻だぞ凜。」


「あらあら薫。そんな細かい事ばかり言っていると飼い犬にすら逃げられるわよ。」


俺は犬なんて飼っていない。

一人暮らしの身ではあるので、ペットなんかを飼いたい気持ちが無い訳ではない。

しかしな、やはり色々と面倒だし、死に相対したくもない。

だから飼わない。


「博士と宗司が遅刻するのは、納得は出来ないにしても理解は出来る。けどよ、お前は準備出来しだい飛べばいいじゃん。何で遅刻すんだよ。」


「こんな事で一々アダムを使いたくないわよ。遅刻した方がマシよ。」


「その考え方はどうかと思うぞ……。」


「せやで凜。俺なら、んな便利なもん持っとるなら使いまくるで。」


「……仮定の話をして、更に他人を出しにして話を逸らそうとしても無駄だぞ宗司。」


「あら、あかんかった?なっはっは、まあええやないか。」


48分の遅刻はええやないかで済む物じゃない。

いつもの様に、熱気を纏った宗司が扉を開けて入ってきた。


「何にしてもこれで全員集合じゃ。ではそろそろ始めよう。大脱出劇をな。」

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