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瞳を魅せる男の異世界譚  作者: ヤギー
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5話 村長と話そう①

 慎也の魔法を知らない宣言により一時、話が進まなくなった。

 主に、メリーが「あり得ない!」を連呼していたせいだが…。

 それでも、少しでもこの世界の知識を得ようと慎也は少し話を聞いた。



「メリー、少し静かにして。村の人たちが起きてしまうわ。

 …でも、慎也くんは、私の予想を遥か斜め上をいく何も知らない状態だったわ。

 細かい常識とかは明日にしましょう。さすがに説明しきれないわ。

 今日は、もう寝ましょう。」

 お母さんは少し呆れた様子で言った。



「すいません…。

 あの…自分は廊下でもどこでも大丈夫なのですが…どこに寝ればいいですか?」

 慎也は恐縮しながら尋ねた。


「さっき寝ていた処で寝てちょうだい。

 今は…誰も使っていないから。」

 お母さんは言った。




 メリーにおやすみの挨拶をして、メリーが自分の部屋に入った後、お母さんを呼びとめた。

 そして、慎也は悩んだが、自分のために、と思い切って聞いた。

「あの部屋は…メリーちゃんの父親の部屋…ですよね?

 今は調達などで長期間出ているのですか?

 それとも…もう亡くなったのですか?」



 お母さんは驚いた顔をして、目線を落として答えた。

「頭がいいのね…。

 そう…あの子の父親…私の夫は死んだわ。

 正確に言えば、死んでないかもしれないけど、もう帰ってくることはないわ。

 マギーという名の…魔法を悪用する奴がいてね…。

 そいつに捕まってるの…。

 …

 ごめんなさい。詳しい話は村長さんに聞いて…。

 おやすみなさい…。」



 慎也はしばらく立ちつくしていたが、布団に横になった。

(…出来ることなら、メリーのお父さんを助けてあげたい…)


 あまりにも衝撃的なことが多かった一日だったので、またすぐに眠ることが出来た。






 次の日、朝食を取ってから、村長さんの家を訪ねた。

 メリーは一緒に行くと言っていたが、お母さんの説得でお留守番となった。




「ようこそ。村の者以外の来客は何年…いや何十年振りかのう。」

 村長は好々爺と呼ぶにふさわしい、やさしそうな風貌で、小柄な白い立派な顎鬚が特徴の老人だ。



「はじめまして。慎也と言います。

 この村に迷い込んでしまって、どうにか力を貸していただけないかと思ってお尋ねしました。」

 慎也は丁寧に頭を下げて簡潔に要点を述べた。



 村長は愉快そうに言った。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。礼儀正しい青年じゃ。

 実は、状況は聞いている。そのことを含めて、いろいろと説明しよう。

 少し長くなるが大丈夫かの?

 …あぁ、マ…メリーの母親よ、席を外してくれ。案内御苦労さんじゃ。」


 お母さんは、分かりましたと答えて出て行った。


 慎也も昨日から、今日にかけてどのタイミングで村長に話がいったのか不思議に思ったが、素直に助かると思って言った。

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします。」



 村長は向かいに座っている慎也の顔を見ながら説明を始めた。

「まぁ、まずは魔法についてじゃ。

 魔法は基本的に誰でも使える。程度の差は大きくあるがな。

 そして、それは普通は15歳からじゃ。

 15歳の誕生日を迎えると魔力の存在を知覚出来るようになるのじゃ。

 じゃから、13歳から15歳の間に座学で魔法の勉強して、15歳になって使ってみるのが普通じゃ。

 そこで、才能があるとなると魔法を活かした職業に。そうでなければ、それ以外の職につくのじゃ。

 魔法を仕事に出来るのは50人に1人くらいだから、決して多くはないがの。

 じゃが、魔法を知らない人は…まぁ、おらんの。幼子くらいじゃ。

 魔力を知覚出来なければ、他人に魔力を操られることはない。

 しかし、魔力を知覚してからは別じゃ。

 だから、本名ではなく通称を使うのじゃ。ここまではいいかの?」



「はい、大丈夫です。

 …自分も魔法を使えるのかすごく気になるところですが。」

 

 と、慎也が答えると、村長は笑顔を見せて説明を続けた。


「それは説明が終わってからじゃの。

 あとはこの村が、他の村と交流を持たず、ひっそりと暮らすようになったのか、大神様との関係とかじゃの。

 ここらへんは全て繋がっておるのじゃ。

 実は、この村は比較的歴史も新しい他所の村や街から溢れ出た者の集まりなのじゃ。

 さっき、魔法は15歳になったら使えると言ったがの、それは一般的な話じゃ。

 理由は分からんが、15歳より前に使えることがあるのじゃ。

 …わしは人格が影響していると考えているのじゃ。

 この村の住人がみんないい人たちばかりじゃからな。

 しかしのぉ、そういう異端児は概して仲間外れに遭うんじゃ。

 それで、同じ境遇の人が集まって村を作ることにしたのじゃが…。

 他の村の近くに作っても、結局は仲間外れになって、大して交流出来ない。

 じゃったら、いっそのこと誰も寄り付かん大神様の山の麓に村を作ったのじゃ。

 別の所にあるような人が寄り付かない場所とは違って、ここの山は大神様のお陰で凶暴な魔物は存在しない。

 そして、わしの得意魔法は遠くにいても意思疎通が出来る魔法なのじゃ。

 結構、難しい魔法なんじゃよ?そんなに遠くまでは使えんがの。

 話が逸れたが、これは知性の高い生き物なら人以外にも使えるんじゃ。

 そして、大神様と交渉したんじゃ。

 村の作物の一部と山方向の村の安全をじゃ。

 …あぁ、わしが君の状況を知っていたのもこの魔法じゃ。

 もし、メリーの家に何かあったらいかんかったからの。」



 慎也は、村長の分かりやすい説明で、今までの疑問がどんどん解けていくのが嬉しかった。

 この世界の人はいい人しかいないのかと思ったら、いい人が集まって出来た村だったとは…。

 そして、村長は軽く説明したが、村が出来るまではとてつもない苦労があったのだろうな、と思った。



「いろいろ分かってきました。ありがとうございます。

 自分の魔法が気になるんですが、その前に1つお聞きしたいことが…。

 …メリーのお父さんが悪い魔法使いに捕まったと、お聞きしたんですが…。」


 慎也が、遠慮がちに尋ねると、村長は一度目を閉じ、大きく息を吐いた。

 そして、ゆっくり目をあけると、説明してくれた。



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