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瞳を魅せる男の異世界譚  作者: ヤギー
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39話 Bランク昇格試験②

 1つの対戦が終わり、穏やかな空気が流れていたが、それをルーイの声が吹き飛ばした。


「あ~、前に兄ちゃんに『やりすごし』された姉ちゃん!

 兄ちゃんが謝るって!」


 ルーイは観客席の中でも一番前に座っていたので、闘技場の様子がよく分かり、大声で言った。

 他の観客が静かな時だったので、その声はよく響いた。

 観客からは失笑がもれる。


(また、間違えてる……。

 あとで、もう一回教えなきゃ。)


 慎也は恥ずかしさで赤面しつつ、一気に言った。

「あの……この前は、すみませんでした。

 ずっと、イリスに会いたいって思ってたんで、『八つ当たり』してしまいました。

 別にAランクになることを諦めたわけじゃないですが、とりあえず……すいませんでした。」


 アンナは失笑が聞こえる雰囲気に、眉間にしわを寄せつつ言った。

「……今さらそんなこと言ってなし(・・)にして貰おうたって、そうはいかないわよ。」


「そうじゃないんですけど……。

 試合するのは構いませんし。

 それより、今日はイリスも来てるんですか?」


 慎也は、偉い人が来ていると分かった時点から、イリスが来ている微(かす)かな可能性に胸を躍らせていた。

 そして、イリスのそばを離れなさそうなアンナが来ていることから、期待感がかなり高まっていた。



「……私に勝ったら、教えてあげてもいいわ。」

 アンナは、さらに顔をしかめ、明らかに舌打ちをしてから言った。

 そして、結局アナセンの返事を貰っていないのに、慎也と距離を取って戦闘態勢に入った。



 慎也がアナセンの方を見ると、アナセンはやれやれという顔をしていた。

 それで慎也はアンナとの試合が行われることを悟った。

 そして、慎也も先ほど投げた剣を拾い、戦闘準備をする。


(しかし、よくよく考えるとすごい構図だよな。

 あっちは普通に世話係としての服装だしな。

 つーか、スゲー毒舌だけど、姿勢いいし、凛とした感じあるし……周りからどう映ってるのか考えると恐ろしいな。

 ……はぁ。そんなこと考えてる余裕ないな。

 前に見せられた動きはハンパじゃなかったし、おそらく風の魔法をガンガン使ってくる。

 やっかいだな。)



 予想外の乱入者に観客は驚きの声をあげたり、歓迎の野次を飛ばしたりと盛り上がりを見せている。

 しかし、これから対戦する2人には全く耳に入っていない。

 戦闘準備をしながら集中力を高め、2人の間には緊張感のある空気が流れる。




「仕方ありませんね。

 2人とも殺し合いではないことだけは忘れずに。

 では……はじめ!」

 アナセンの合図と共に、序盤から大きく戦局が動く。



「まずは小手調べよ。」

 一気に慎也に接近するアンナの顔には、若干の笑みが浮かんでいる。

 アンナは両手に短刀を持ち、流れるような動作で連撃を加える。


 さっき戦った剣士のように剛腕を活かして足を止めて剣を振るうのではなく、足を止めず上下左右と様々な方向から攻撃をしかけてくる。

 1撃にそこまで力はないが、2刀であるメリットを活かして、左右から同時に攻撃したり、回転しながらの2連撃で威力を高めたりと多彩な攻撃だ。


(手数が異様に多くて、攻めづらい……けど)

 慎也はアンナの攻撃を受け止めると強引に剣を振り返し、アンナの体勢を崩した。

 普通ならそこから攻勢をかけるのだが、慎也はアンナと視線を合わせる。



 ―― アンナ side ――

 アンナは、急に切れの良くなった慎也の攻撃に少し驚いた。

 けれど、スピードには自信を持っているし、この程度で遅れを取るつもりは全くない。


 避ける、避ける、避ける。

 僅かな攻撃と攻撃の合間に反撃を試みようとする。

 しかし、急に視界に入ってくる剣閃。

 全く持って把握できていなかったが、持ち前の反射神経を活かして間一髪で避ける。


(くっ……急に手数が…。

 最初は様子見だったというの?

 いや、そんなはずはないのに。

 ……私がこんなに後手ばかりに回るなんて。)



 ―― 観客 side ――

 盛り上がっている観客席で、試合を見ながら2人の兵士が話している。


「あれって、イリス様付きの世話係兼護衛役のやつだよな?

 たしか、噂では目でも負えないくらいの速さを持つ実力者なんじゃなかったっけ?」


「そのはずだけど……。

 本当は近衛隊でやっていけるほどの実力がありながら、王女様に異常なほど崇拝をしてるから、世話係に自ら願い出たっていうのは有名な話だしな。」


「そうなんだよな。

 服装からして世話係で、普通の世話係が戦えるわけないしな……。

 でも、最初こそ威勢良かったけど、あれじゃあ、避けるのが精一杯でとても目で追えない速さとは思えないけどな。」


「確かに。

 それどころか、あの男の方の攻撃がそんなにすごいようにも見えないんだよな。」


「心配すんな。

 あの場に立ったら、お前じゃ絶対避けらんねぇから。」


「違いない。」


 2人が笑いあっている間に、戦局は大きく変わり始めた。


 ―― 慎也 side ――

 戦局は確かに慎也が優勢だったが、慎也は内心でアンナの実力に舌を巻いていた。

(完全な不意打ちになってるはずなのに、直前で反応して避けるとかどんな反射神経なんだよ。

 けど……そろそろ捕まえてみせる!)


 慎也は、どこからの攻撃が有効か頭を巡らす。

 普通であれば有り得ない速さで、慎也が剣を振っているように魔眼を使ってアンナに魅せていく。


 頭を狙った水平に一閃する攻撃を魅せると、アンナは頭を下げて避ける。

 そこですかさず、本命の下から上に切り上げる実際の攻撃。

 普通ではありえないタイミングでの攻撃なのだが、アンナは素早く上体を起こし、後ろに下がる。 



 そこで、慎也にとって予想外のことが起こった。

 アンナの胸の谷間部分の服を剣が切り裂いたのだ。

 激しい動きに伴い、その露出部分は大きくなる。

 その結果、慎也の目に扇情的な豊かな谷間が露わとなった。

 アンナは着やせするタイプらしく、胸は慎也の思いのほか大きかった。


「あっ……ごめん…。」


 この時、驚きで魔眼の効力が切れてしまった。

 アンナの方は、この事態にも大して表情を変えずに、千載一遇のチャンスと言わんばかりに大きく距離を取った。

 そして、慎也の方を警戒しながら、ロングスカートの下の部分を破り取ると、胸に巻きつけた。



「だいぶ、そっち方面はお子様なようね。

 少しばかり後手に回ったけど、こっからは格の違いっていうのを教えてあげるわ!

 まぁ……見えたらの話だけどね。」

 アンナはそう言うと、艶(あで)やかな笑みを見せる。

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