表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瞳を魅せる男の異世界譚  作者: ヤギー
28/47

27話 歩くの飽きた

 慎也は、ルーイといろいろな話をした。

 そして、強く感じたのがルーイの常識の無さ。


 まず、ルーイは1人で出かけるのはこれが初めて。

 そして母親に、人間に近づかないように強く言われているのに、すでに慎也と仲良く話している。

 他にも、細かく約束事があったらしいが大して覚えていない。


 慎也は、成り行きとは言え、ルーイに出会って仲良くなったことに運命的な物を感じていた。

(ルーイに、人というのを正しく理解させてあげたいな…。

 ……時間がかかりそうだが…時間はあるし、悪くない。)




 暗くなって休んでいる慎也は、横で休んでいるルーイに声をかける。

「もう暗いし、今日はここで寝ることにしよう。」


「えっ?

 僕はまだ全然眠くないよ?」


「…普通はどれくらい寝るんだ?」


「う~ん、1週間に1回くらいはちょっと寝るくらい。

 でも、寝ようと思えば、寝れるかも。」


 そう言って、ルーイは慎也にくっついて寝転がる。



 慎也は、頭を撫でながら言った。

「…そっか。

 じゃあ、これからは毎日、夜は寝よう。

 …オレが見張りをしてるから、ゆっくり寝るといい。」


 ルーイは、頭を撫でられて気持ちよさそうにしながら言った。

「じゃあ、兄ちゃんも一緒に寝ようよ。

 …見張りなんていらないよ。

 人間は違うらしいけど、魔力を抑えられないやつだって、僕に挑んでくるなんて…ほとんどないよ。」



 慎也は、魔力を抑えられないやつが魔物だと思い当たった。

(…まぁ、たしかに相手の力量を測れないのは人間くらいか。

 ……ルーイに人の姿をさせておくのは、そういう点では危険だよなぁ。

 元の姿だったら、よっぽど組織的に、かつ計画的にやらなきゃ、ルーイを捕まえることなんて無理だしな…。 …というか、龍には魔法が効かないって話だから、この世界じゃ無理か。

 何にしろ、オレがそばを離れなきゃ大丈夫な話か。)


 ルーイは眠たくないと言っていたが、慎也が頭を撫でていると、慎也より先に眠ってしまった。

 慎也とルーイは仲良く眠りについた。





 次の日の朝、慎也とルーイは歩き出した、のだが…


「もう歩くのあきた…。」

 ルーイは立ち止まってしまった。


 慎也としてもだんだん話のネタがなくなってしまったし、街の様子の話などは、ルーイの街への興味を増させるばかりだった。

 そして、景色はずっと変わらず木々ばかり。

 到着予定はこのペースだと、3日くらいかかりそうだ。


「…止まったらいつまでたっても着かないぞ?

 ゆっくりでも歩き続ければいつかは着く。」


 慎也が(さと)すように言うと、ルーイは元気よく答えた。


「飛べばいいんだよ!

 すぐに着くよ。」



 そう言うと、しゃがみ込んでギュッと腕も縮める。

 そして、光を放って龍の姿に戻った。


 慎也は魔法を使って、ゆっくりと言い聞かせるように言う。

「……ふぅ…分かった。

 でもルーイ、2つ約束してくれ。

 1つ、人前では姿を変えないこと。

 もう1つ…飛んでるのや、着地を人に見られないようにするんだ。

 遠回りしてもいいから。」


『ん、わかった! 早く捕まって!』

 ルーイは元気よく答える。


 慎也は、絶対分かってないな…と思いつつ、背中からルーイの首に捕まった。


『いっくよ~! 手を離さないでね。

 離しても、空中で捕まえあげるけど。』


 慎也には、ルーイが変身する前だったらどんな顔をしてるか、目に浮かぶようだった。

(ニコニコしてるんだろなぁ…。


 ……オレも楽しまなくちゃな。)




 空の旅は予想以上に快適だった。

 最初こそ羽をバタつかせるので、かなり揺れたが、一度飛び上がってしまうと滑空飛行が多く、ほとんど揺れない。

 スピードも高度も抑えてくれているのか、バイクに乗っている時のような爽快感がある。

 …速く飛べないだけかも知れないが。


「気持ちいいな。 …最高だ。」


 慎也が言うと、ルーイが答える。


『街に入った後も、たまには一緒に飛ぼうね?

 一緒にいろんなところを見てみようよ!』


「そうだな~、それもいいな。

 でも、取り敢えずは街をいろいろ見てみよう。

 パール王国は街並みがきれいで…たしか、劇とかが有名だから。」


 慎也が村長に貰ったメモを思い出しながら言った。


『…げきってなに?』


「あぁ、そっか。 知らないよな。

 …楽しい物だよ。

 楽しみにしとけ。」


『うん!』


 ルーイは、喜びを体で表現して、ぐるっと横に1回転する。


「わっ!!

 …バカ、危ないだろ。」




 慎也とルーイが、楽しく空の旅を楽しんでいると、早い物でもう街が見えてきた。


「これがパール王国か…。

 大きいなぁ…。」


 大きな街並みが広がっている。

 自然と調和した綺麗な街…というか国だ。

 緑があり、川も何本も見える。

 そして、一際大きな建物…きっとあれが城なのだろう。

 日本の城とは、全然違うが、ヨーロッパの宮殿とも違う…4つの丸い大きな塔がオセロの最初の状態のごとく並んで建って、くっついた形をしている。


(……あそこにイリスがいるのかな…。)


『イリスって誰?』


「えっ?

 あぁ…オレがこの国に来た理由を作った人さ。」


『ふ~ん。

 …いい人?』


「…すっごくいい人だよ、たぶん。」


『そっかぁ。

 じゃあ、僕もその人に会いたいな!』


「そうだね…。」

 慎也は、ルーイの頭を撫でながら答えた。




 慎也は、ルーイに森のはずれに着陸させると、人間の子どもの姿に戻させた。

 そして、入口に続く門へ向かう。



「……おい、待てよ。

 見ない顔だな…?」


 門番に止められた。

 門の柱に寄りかかっていた制服を着た門番に声をかけられた。


 慎也は、門番がいることに気づいてなかったので、驚きながら答えた。


「あっ…、はい、初めてです。

 でも…私は仕事で…ほら、会員証。」



 門番は無言で慎也たちを、しばらく見てから言った。

「そうか……通っていい。」




 慎也は、門番に止められたのは初めてだったが、逆に好感が持てた。

 国民に対して、しっかり責任を持ってるように感じたからだ。

 ただ、門番は若そうなのに威圧感があって、もう少しフレンドリーだったらな、と思った。


 こうして、慎也はようやくパール王国入りを果たしたのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ