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瞳を魅せる男の異世界譚  作者: ヤギー
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20話 何でも屋

 予定通り、馬車に乗る前にステラを袋に入れ、丁寧に運んで馬車に乗る。

 途中、馬車の揺れで、ステラの声が漏れて、他の乗客が辺りを見回すということもあったが、何とか無事に首都オーフスまで着いた。



「着いた~。あ~、窮屈やった。

 緊張したんやで?バレへんか、ビクビクやったで。

 ここには、何回か来たことがあるんやけど、こんな方法で来たことは初めてや。」


 ステラは伸びをしながら言う。


「…途中、勝手に食糧食ってたやつが何言ってんだよ。」

 慎也は冷めた口調で言う。


「あ~…バレとったんか。

 だって、あんな体勢じゃ寝られもせんし、ヒマやったんやもん。」


 ステラは、頬を膨らませて言う。そして、続けて聞いた。

「で、どないするん?

 だんだん宿も取らなきゃならんけど、まだ少し時間あるで?

 どこか行きたいとこあれば、案内するで?」


 慎也は心の中で、珍しく気のきいたことを言ったな、と思いつつ答えた。

「そうだな…。

 ラナースに着く前にいた村で、世話になった人には、何でも屋として金を稼ぐといいって言われたから、そこに顔を出してみたいかな。」


「あそこかぁ…。

 あたいの伝手(つて)も何もないとこやし、誰でも行けるところやないんやけど…。

 まぁ、案内くらいするで。」

 ステラは少し苦い顔をして言った。




 2人は、比較的大きな食堂のようなところに着いた。

「ここ…なのか?」

 慎也のイメージする仕事の斡旋所とは異なっていた。


「ここや。

 そんなに何でも屋の仕事は常にあるわけやなし、安定した利益のためにこういう店が多いって話や。

 しかし、慎也はよっぽど田舎もんなんやな?

 小さな村以外だいたいあるで?」

 ステラは、得意げに話をする。


「…どうする?

 ここで、待ってるか?」


「待ってえな!

 あたいみたいなんが、ここに入れるんはそうそうないんやから、一緒に入るわ。」

 ステラは慌てて答えた。




 食事時ではないので、人はほとんどいない。

 ただ、屈強そうな男が4人でテーブルを囲み、大きな声で話しているので、賑やかではある。


「初めまして。『何でも屋』へようこそ。

 仕事をお探しでしょうか?

 まずは、会員証をお見せ下さい。」

 受付のようなところにいた女の人に声をかけられた。


 何でも屋というのが、名前だったことに少し驚きながら、慎也は言った。

「ご丁寧にどうも。

 でも、初めてなので会員証は持っていないんです。

 作ることは出来ますか?」


 受付の人は、少し驚いた様子で答えた。

「…ご入会を希望ですか?

 それでしたら、誰かの紹介や実力を証明する物がありませんと…。

 命の危険が伴う仕事も多いので、誰でも出来る訳ではありませんし、人手がそれほど足りない訳でもありませんので。」


 慎也は、まさか仕事を請け負うことが出来ないと思っていなかったので困った。

 村長の時は、人手不足だったのかな、と思った。


 そして、ふと思いだした。

「あの…これでどうですか?

 途中で、倒した魔物の角なんですが…。」


 慎也は、リュックから角を取り出して言った。


「これは…!

 少々、お待ち下さい。上の者と相談してきます。」

 受付の人は、角を持って、慌てて奥へ行ってしまった。




 慎也が、少し手持ち無沙汰にしていると、4人でテーブルを囲んでいた男の1人が、慎也に声をかけてきた。

「おい、兄ちゃん。

 女連れていい御身分だなぁ?

 そんなに強いのかい?それとも…その嬢ちゃんが魔法を使えるとでも言うのかい?」


 慎也は、内心、どこの世界でも酔っ払いは変わらないなぁ、と思いつつ軽くあしらおうとした。

 しかし、先に口を開いたのはステラだった。


「あたいは、魔法なんてすげぇもんは使えへんよ。

 けどなぁ、慎也はすごいんやで。

 でっっかい魔物やって倒せるし、頭もごっつ切れ…」


「…黙って。」


 ステラは自信満々に話していたが、慎也が黙るように言うと、契約の魔法が効いて黙った。

 すると、酔っ払いの反応が変わった。


「ほぉ。契約かいな。

 …じゃあ、嬢ちゃんのでっかいおっぱいを毎日堪能してるわけだ?」


 酔っ払いがニヤニヤした顔で言うと、ステラは怒った様子でん~、ん~と何か言おうとするが言葉にならない。

 慎也は、なるべく印象を悪くしないように、ステラの頭に手を置いて、困ったように言った。


「まぁ…そうですね。

 もう、病みつきでね…。

 1人にして、いなくなられると困るんで、こうやって連れてるんです。」


 酔っ払いは、そりゃ、そうだ!といいながら、仲間のところへ戻って行った。

 慎也がステラに喋るのを許可しても、ステラは顔を赤くして俯いたまま静かにしていた。

 慎也は、不審に思ったが、静かにしててくれる方が助かるので理由は聞かなかった。




 そうこうしてるうちに、息を切らせて受付が戻ってくる。

「…お待たせしました!

 奥で社長がお待ちですので、こちらへ…。」


 慎也はどうでもいいことを考えながら、後について行った。

(…社長って…何でも屋で、入会で、社長って…統一感ゼロだな…。

 想像するに……何らかの魔法か何かで、こっちの言葉や文字を理解出来るんだけど、こっちの言葉で、元の世界にぴったりの言葉がないと、勝手に近い言葉に変わって聞こえる…のかな?)



 社長の部屋に入ると、貫禄のある男が、座ってじっとこちらを見ていた。

 歳は50は超えてそうだが、若々しく、屈強だ。


「…座ってくれ。」

 深い声で、威圧感がある。

 慎也は、その威圧感に上手く言葉が出てこず、黙って指示に従う。

 ステラは、受付の人に部屋を出されてしまった。

 と言っても、ステラは、慎也よりもずっと萎縮していたので、部屋にいても何も喋らなかっただろうが。


「…もう聞いたかも知れないが、ここはそう簡単に新しく人が入ってくるような所じゃない。

 それなりの実力者が、自分の弟子を連れてきたり、目立った活躍をした噂が入ると、こっちから勧誘に行くこともある。

 …誰でも知ってることだ。」


 社長は、鋭い眼光を慎也に向けながら話す。

 慎也は、言葉を挟んだ。


「申し訳ありません。

 私は、他の街と交流の乏しい小さな村の出身でして、知りませんでした。

 そこの村長に、ここでお金を稼ぐように勧められたのです。」


「…なるほど。

 ……別に、実力のない者を入会させるのは大した問題ではない。

 すぐに、いなくなるのだからな。

 …正直に言ってみろ。あの角は、誰かから手に入れたのだろ?」


 社長の言葉は、疑問形で喋っても、相手に肯定しか返させない重みがある。

 しかし、慎也は、小さく深呼吸してから答えた。


「…まぁ、証拠はないですけど、あれは自分で倒した魔物から取った物です。

 別に、信じて貰わなくても構いませんが。

 それより……その角は返して下さいね。もう、私の物ではないので。」


「…誰の物なんだ?」


()れの物です。

 私は、別にいらなかったのですが、連れが商人でして、欲しいと言われ持っていただけなので。」



 すると、堪えられない様子で社長は小さく笑い出した。

「……そうか、いらなかったのか。

 この角は、薬の材料になるから、高値で取り引きされるのだぞ?

 あの子には、そう簡単に安値で売らないように言ってあげてくれ。

 なんだったら、ここでも買い取ってるからな。

 そこまで、高くは買い取れないが、多くの人のために使われることを約束しよう。

 …あぁ、会員証の話だったな。もちろん、発行しよう。

 他にも、困ったことがあったら、言ってくれれば助けになろう。

 …常識が足りないようだからな。」


 社長の手の平を返したような対応には、少し驚いたが、常識が足りないのは自覚があるので、素直にお礼を言って、何でも屋を後にした。




 首都オーフスの整然とした街並みと、器の大きい人に出会えたことに感動しつつ慎也は、浮かれ気分で宿を探して歩く。

 その横で、ステラは、時折顔を赤くしながら、まだ、酔っ払いにからかわれたことを、ぶつぶつ言っていた。


 やがて、対照的な2人は、1つの宿へと入って行った。


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