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パパと娘の異世界転生記

作者: 咲良喜玖
掲載日:2026/01/26

 パパと私の異世界転生記 ー序章ー


 パパが面と向かって話してくれたのは、死ぬ前を除くと高校の入学式の時だった。

 玄関先で。


 『似合ってるな』

  

 のたったの一言、会社に行く前にぼそっと言った。

 新しい制服に袖を通している間に、会社で緊急事態が発生したとの連絡を受けて、急遽私の入学式には行けなくなったから、そのお詫びで私を褒めてくれたんだと思った。

 今だったら分かるけど、せめてもの褒め言葉だったんだと思う。

 パパは不器用だったんだよ。きっとね。


 でも、その時の私は、なんで今日は喋ったのって思った。

 それくらいに、パパは話すことが無い人だった。

 もっと小さい頃から考えても、パパと一緒にいても話す機会ってあんまりなかったと思う。

 でもその頃はそれが嫌だとかは思わなくて、無口な人なんだとも思わなくて、それが当たり前の事だと思ってた。

 それって、あんまりパパって人を知らなかったからだと思う。

 周りのお友達のお父さんたちが、お友達と普通に話してたのを見てからは、私のパパがおかしいんだって気付いた。

 だから、その時気付いた時から、なんだか上手くいかなくなった。

 仲良くなれなかったんだ。

 10歳を超えたあたりでは、会話なんて、ほとんどない。


 だから私は、ママに。


 『どうしてパパと結婚したの』


 って聞いたら。


 『たまに話す時がカッコイイのよ。それと頼りたい時に頼りになるの。普段は不動だけどね』


 って言っていた。

 普段の生活でも、ママが一方的に話す姿しか見た事が無い。

 いつもパパはお地蔵さんの様に置き物みたいにどっしり動かなくて、背筋を伸ばして真っ直ぐ椅子に座っているだけの人だと思ってた。

 それで、たまにママとの会話で。

 

 『うん。そうだね』


 って言うのが限界のパパだった。

 でもそういうなんでもない返事が返って来た時のママの顔はとても嬉しそうだった。



 高2の春。

 私は死んだ。

 一家惨殺事件に巻き込まれて、亡くなっちゃったんだ。

 家に強盗たちが押し入ってきて、皆殺しにあった悲惨な事件だと、テレビとかで報道されただろう。

 まさか、普通に暮らしていた私たちがこんな事件に巻き込まれるなんて。

 そんな事生きていた時は思いもしなかった。

 あの時、パパはママと私を守るために戦った。

 私たちを二階に避難させてから、パパは一階のリビングで死闘を演じたらしく、物が壊れる音と、相手の叫び声が聞こえた。

 たぶん、パパが何人か倒したらしい。

 昔、武道を習っていたなんて、話していたのを覚えている。

 そんなパパでも、やっぱり数には勝てなくて、お腹を刺されて倒れた。

 強盗たちも私たちを逃してくれることもなく、こっちもお腹を刺されて駄目だった。

 ママなんて心臓を刺されたからすぐに死んじゃった。

 悲しいなんて思う暇もなく、体が冷えて、自分の命が尽きかけた時に、パパは自分の命だって尽き欠けているギリギリの状態だったのに、二階にまで来てくれて、最後に私の頭を撫でた。

 そして、先に死んじゃったママと私の名前を言った。


 『・・・成長を・・・大人になった姿を見たかった・・・すまない・・・守れなかった・・・秋・・・夏』


 と右目の下にある黒子が左を見る。

 パパって、私の頭を撫でる時に、目を合わせて言ってくれたことが一回もなかった。

 こんな事を思い出したのは、死ぬ時だった。

 小さい頃はいつも撫でてくれていた。でもその時も目なんて合ったことが無い。

 死ぬ時も目が合わないなんて、パパらしい。


 にしても、なんであの時になって、それを思い出したんだろう。

 私は馬鹿だった。

 パパはずっと私を愛してたんだ。

 絶対。絶対。ぜったいに、愛してるなんて一回も言ってもくれないんだけど、絶対なんだよ。



 ◇


 

 十六年前。

 永皇211年4月3日。


 この日に私は異世界転生をしたらしい。後の記録で分かった。

 まさかこの私が、漫画やアニメの主人公みたいに異世界転生をする日が来るなんて思いもしなかった。

 アニメみたいに凄い力で世界を変えられるんだ。

 なんて思ったのは最初の内で、どうやら私にはそう言った類の凄い力はないらしい。

 ただの普通の人だった。あ。でもお姫様になってるから、周りの人よりかは、ちょっとだけ良い思いはしてる。



 この世界の名は大和。

 和名の通りに和風ファンタジーの世界で、戦国か江戸くらいの歴史観だと思う。

 お侍様が国を治めているのだ。

 それに、ファンタジーが付いている理由は、私は見た事がないんだけど、化け物もいるらしい。

 妖魔って言ってたけど、私がお姫様だから、お屋敷と城下以外の外には出た事がないので、まあ、会ったことがない。会っても怖いけどね。


 そんな凄い化け物がいるのに、対抗手段として魔法がなかった。どうやって戦うのかと思ったら、剣と忍術ってので対抗するらしい。

 お屋敷の中で、火遁とか水遁とか、変なことを叫んでいる人たちがたまにいるから、忍術の存在は確認している。

 技が出てる所を見た事が無いけどね。


 私は、せっかく異世界転生してもただのお姫様。

 でもお姫様といっても、大名の子とかじゃなくて、その下の『松』の更に下の『竹』の家の出だから、大名の側近の部下くらいの家みたい。松竹梅でランクがあるから、私の家は割と大きい方。

 でも私のお父様は、あんまり戦闘が得意そうに見えないから、細々と家を守っている感じがする。

 

 松は、群を守る。竹は、お城一個。梅は、城下で暮らせる。

 この三つのランクがあって、お父様は真ん中の竹で、国主と呼ばれる者らしい。

 国を任されているつもりで、城を守れと言う意味で使われる言葉だ。

 お姫様というから、さぞ丁寧に扱われるのかと思いきや。

 そんな事は無く、城下町の子供たちと一緒に遊べるなど、普通の子供として育った。


 常時、鼻を垂らしてるたれ蔵君に。

 山登りで遊んでたら、うんちを漏らした事がある忍太。

 この間、川辺でおしっこを漏らした玉ちゃん。

 なんか、私の友達のやってる事、酷いな。

 みんな下ネタ三昧だよ。

 色んな所に締まりがない子たちが、私のお友達です。

 でも皆優しくて大好きだ。

 他の人たちも穏やかで、お父様がそういう人だから、皆似たみたい。

 城下はいつも賑わっているし、元気一杯だ。


 

 だから今まで幸せな暮らしをしていた。

 転生者だけど、何不自由なく幸せな時間を過ごした。

 でも、それでも私は、満足できなかった。

 一目でいいからパパに会いたいと思った。

 前世の事は謝って、また一緒に暮らしたいって言いたい。

 私が転生したんだから、同じ時に死んだパパだって、ママだって、もしかしたら転生してるかもって思ったんだ。

 会えるのかもって思ったんだ。

 でも、会えない。

 あのムスッとしたゲジゲジの眉も、絶対話さないぞという横一文字の唇も、右目の下にあるセクシーな黒子も全部全部、パパの事は、いまだに覚えているのに。


 なのに、まだ会えない。

 転生してないのかな。パパとママ。

 私、一人だよ。寂しいんだ。

 心に欠片が出来たみたいで。

 一片だけ、あっちの世界に置いていっちゃったんだよ。

 どうしてもその寂しさは埋まらないんだ。

 会いたいよ。パパ。ママ。


 

 ◇


 

 永皇216年5月1日


 五歳の時。

 お父様の元に子供の平民がやって来た。

 身分は、おそらく下の下。

 オンボロな服を着ていて、今にも破けそうで、服の意味を成していない服を着ていた。足なんて草履も履いていない。

 

 彼が12歳だと言っていたから七つ上の人だった。

 彼は最初、お城の門番に掴まったらしくて、お父様の場所にまで連れて来られた。

 盗人かと思ったのだが、門兵さんたち曰く、理由があるそうなのだ。

 詳しく聞くと、門でお父様に一目会いたいと懇願していたらしい。

 それで、あまりにも必死だったから、門兵さんたちが可哀想に思って、お父様の所まで連れて来たそうだ。

 たぶん、よそのお城とかよその国だと門前払いだったんだろう。

 お父様が優しいから会ってくれたんだ。


 「君はなぜ、我が城に?」


 お父様の名は、津吹左衛門。

 津吹家の当主。

 一城の主だから、ここでは主の役割だとして厳しい口調だけど、言葉の端々は丸くて柔らかい普段の口調が見え隠れする。


 「お殿様。どうか、こちらで雇って頂けないでしょうか」


 学なんて到底無さそうな子供の話し方が、まるで大人のようだった。


 「君みたいな子は、たくさんいる。君だけ救うのも、城主としては出来ないんだ。すまない」


 お父様は酷な事だがと言った。


 「いいえ。自分は他とは違います。姫の護衛を任せて頂けないでしょうか。命を賭してお守りします」

 

 それでもあきらめずに、深く頭を下げ続けた。

 畳で頭が擦れるくらいに・・・。


 「ん?」


 あまりにも真剣すぎてお父様は戸惑っていた。


 「自分は、平民の中でも下の下。だとするとただ無駄に死ぬだけの下民です。城主様の領土で、何もご恩をお返しできません。このままいけば、到底お役に立てぬ命なのです。こんなさもない命であらば、無駄に死なせるのも惜しいでしょう。であるのなら、いざという時の為に、この命を使って頂きたい。必ずや自分が命を投げだしても、姫様をお守りします」

 「・・・ん?」


 子供の決意にしては固い。お父様は止まった。


 「どうか。お願いします。お殿様」

 「・・・わかった。教育してから決めよう。能力を見る」


 実力で示して欲しい。

 お父様はそう言って、少年を迎え入れた。



 ◇


 永皇221年6月6日。

 

 十歳の時。

 私の護衛係にその人がなった。

 最初、私は七年間も会ってなかったから、相手の顔が全く変わっていて、誰だか分らなかった。

 身なりが整ったからだけじゃなくて、すっかり顔立ちが変わっていて美男子になっていた。

 前世の世界に居れば、アイドルや俳優になっているだろう。

 背筋がまっすぐ伸びているから所作も美しく、あれだけ身なりが悪かったのに、この時は侍の刀を持っていた。


 「朝陽。今日から朧がお前の護衛になったぞ」

 「朧?」

 「こやつの名前だ。お前を何が何でも守るのだそうだ。将にしようにも、そう聞かなくてな」

 「・・・はぁ?」


 初対面の時、朧さんは顔を真っ赤にしていて、全然私と顔が合わなかった。

 私が、彼の周りをちょこまか動いて色んな立ち位置に入っても、絶対に目が合わずで、絶対に顔を背けるんだって意志を感じた。

 でもその時の目には、涙みたいな潤いがあった。

 やっと護衛になれたから感動してるのかな。

 よほどこの人は嬉しかったんだと、その時の私は思った。


 「よろしくお願いします。朧さん」


 と私が言ったら、朧さんの左目から涙が流れた。

 ツーっと静かな涙で、私に向けた方の顔だったから、誰にも見えていない。

 なんで泣いたんだろう。

 

 「はい・・・守ってみせます。必ず」


 と全然顔を見ないでお屋敷の壁を見ていた。

 この人の顔を見ない意思が、なんかパパみたいで似ていたんだけど、パパはイケメンじゃないから、全く感覚が違う。

 ちょっとパパと似ている性格のシャイな人なんだと思った。



 ◇


 そして、運命の日。


 私の運命は、こちらの世界に来てもよろしくないようだ。

 幸せな時間は、唐突に崩れた。

 一城の主であるお父様が、下剋上にあってしまった。

 お父様の家臣で斜景という人が、クーデターを起こした。

 破壊されて、ぐちゃぐちゃになったお屋敷内では、その人が本当の犯人かどうかも、その時は分からなかった。


 お父様も殺されて、乳母の人も死んだ。

 城下町も襲われたみたいで、かなりの人たちも死んでいったらしい。

 お友達だってどうなったか分からなくて、心配だった。

 でもそんな心配する余裕が無かった。

 だって、私自体も生きられるのかの瀬戸際だった。

 

 焼け崩れるお屋敷の中を、私と朧さんは並んで走っていた。


 「姫。前へ」

 「え!?」

 

 ドンと背中を押されると、次に聞いた音は、金属が鳴る音だった。

 後ろを振り返ると、朧さんが、追手と戦っていた。

 刀対小刀。

 相手は軽装の敵で、三人もいる。


 「・・・雇い主は!」

 「・・・」


 普段からあまり喋らない朧さんが怒鳴ると、敵が黙った。

 相手は忍びって人たちだと思う。額当てと、顔にマスクみたいなのを着けて、構えが侍のようなどっしりとした構えじゃなかった。

 三人いる中で奥の人が、息を吸い込んだ。

 

 「火遁・花吹雪」


 小さな火の粉が渦を巻いて大きな火になる魔法・・・じゃない。

 これは、忍者の技みたいで、大道芸にしたら威力が凄い。

 この火を躱すには、廊下が狭い。

 逃げ場がなかった。


 「ふん!」


 朧さんが、火に対して剣を振り下ろす。

 炎が真っ二つに斬れた。


 「なに!?」


 火を噴いた人じゃなくて、手前の人が驚いた。

 

 「これにてご免。斬!」

 

 一番手前の人が斬られる。

 朧さんの攻撃が鮮やかすぎて、斬られたことも感じなかったみたいで。

 

 「何を格好つけて、刀を振り上げている。無防備だぞ。小僧が!」

 

 相手が言い返してきた。

 でも次の瞬間には膝が崩れる。

 

 「な!? 馬鹿な。す、すでに。私は、き。斬られていたのか」

 

 まるで時代劇の悪役のように、忍者の人が倒れた。

 

 「何故、姫を狙う」

 「・・・・」「・・・・」


 敵二人に返事がない。

 しびれを切らして朧さんは攻撃を仕掛けた。


 「言わないのであれば、生かす義理も無し。斬!」


 たったの二回の攻撃で、二人を撃破。

 あまりにも華麗な動きで、私が瞬きしてたら、終わっていた。

 その強さに驚いた私の足が止まると。


 「姫。走ります」


 手を引いてくれた。

 温かで優しい手だった。


 「は、はい!」


 また二人で並んで走る。

 廊下を抜けて、裏口に。

 表は敵に囲まれているだろうからと、朧さんは裏の秘密の道から裏山にいこうとした。

 この城は山城なので、秘密の道がいくつかある。

 

 だが・・・。


 「甘かったな。朝陽」


 敵は数十人の侍。

 お父様の部下だった人と、そのリーダーには・・・。


 「え。あ、あなたは・・・斜景さん」 


 厭らしい笑みで、ニタニタしている。いつも以上に気味が悪かった。

 

 私の前に朧さんが出た。

 何も言わないけど、守ると、背中が語ってる。

 朧さんは、行動で示してくれる人なんだ。


 「貴様が、主を斬ったのか」

 「ふん。護衛の分際で、私に話しかけるな。侍でもない小僧が!」

 「そうだ。自分は侍じゃない!」

 

 今度は会話を交わすこともなく、朧さんが戦闘に入った。

 1対10の圧倒的不利な状況。

 朧さんはそれでも敵に立ち向かっていった。


 「小僧。この数じゃどうにもならんぞ」

 「自分は、貴様が選ぶような義の無い兵に負けるわけがない」


 華麗な立ち回りで一人、二人と次々に斬っていく。


 「す。凄い・・・朧さん強すぎじゃん・・・」


 呆気に捉えていたら、後ろに人の気配がした。

 口を塞がれる。


 「んぐっ」


 体が宙に浮くと分かった。自分が誰かに持ち上げられていると。


 「ふははは。大人しくせい。小僧。形勢逆転だ」

 「な、しまった」


 ほぼほぼ勝ちが決まっていた朧さんだったのに、私のせいで動きが止まった。

 喉に刃を突き付けられている私を見て、朧さんの顔はいつもの無表情から曇った。


 「忍者がいないとでも思った小僧」

 「・・・」

 

 隠しの兵に忍者を混ぜていた敵が一枚上手だった。

 私のせいで、朧さんが刀を置いて、両手を上げる。


 「ほう。殊勝な事だな。堅物そうに見えていたから、ここまで物分かりがいいとは思わなかったな」

 「・・・物分かりがいい?」

 「そうだ。自分の命が助かる行為を選んだな。うん。小僧は賢かったか」

 「自分が、自分の命可愛さに刀を捨てただと! ありえん!!」


 珍しく朧さんが声を張り上げた。

 感情の起伏が少ない人だから、ここまで大声を上げるなんて思わなかった。


 「ん?」

 「自分は、今度こそ守る! 貴様らのような不埒な者から我が子をな」

 「我が子?」


 全ての人間の不意を突いた行動。

 朧さんは地面に置いた刀を蹴り上げて、そのまま刀を蹴り飛ばした。

 私の顔の横をその刀が掠めると、私の事を捕まえていた男の顔に刀が刺さる。


 「ぐあっ・・・な、なに!? 馬鹿な。この女に当たると思わないのか」

 「思わん! 自分が当てるわけがない」


 敵が倒れると、私は力強く抱きしめられたような状態で持ち上げられていたから、解放された拍子に前のめりになった。

 つま先が着いたと同時に倒れそうになると、朧さんが片腕で支えてくれた。


 「すまない。夏希。また怖い思いをさせた」

 「え。夏希・・・今、夏希って」

 「詳しい話は後だ。自分は今、怒ってる。必ず助けるから、今は生きることに集中しろ」

 「う、うん」


 夏希は自分の前世の名前だ。

 朝陽じゃない名前で呼ばれたのは十六年ぶりだった。

 だからまさかと思ったけど・・・。

 でもそんな事を考える余裕が無かった。


 川の水が邪魔な岩を避けて流れるように、朧さんは斜景の間にいる敵をするりと抜けていきながら、全て急所を斬っていった。 

 私には刀が上に行ったり下に行ったりを繰り返してるだけにしか見えないけど、それは凄い剣技なんだって私にだってわかる凄さだった。


 「斜景! なぜ主を裏切った」

 

 全てを斬った後の朧さんは、刀を斜景に突きつけて言った。

 その姿がまるで漫画の主人公のような姿でカッコいい後ろ姿だった。


 「こ、小僧・・・金は出す。命だけは」

 「何故裏切った!」

 「命だけは」

 「理由を言えば、斬らない!」

 「ほ、本当か。じゃあ、た、頼まれたのだ。朝陽を攫えと」

 「何!? 姫を? どうして」

 「それは、竹よりも上。『松』の・・・ぐあっ」


 話している途中で、斜景が誰かに殺された。

 背中に矢が刺さっている。


 危険だと状況判断した朧さんが、私の肩を抱きしめて、守る態勢に入った。

 

 「誰だ! 気配がないぞ。どこにいる」

 「斜景は喋り過ぎた。まさか、護衛がここまで強いとは・・・今日は引く。だが、いずれは手に入れるぞ。朝陽をな!」


 謎の声が私たちの元に聞こえた。


 「どういうことだ。姫に何かあるのか。城の人々を皆殺しにしてまで手に入れたいのか?」


 朧さんが止まってると、後ろの天井が焼け落ちた。


 「くっ。ここは駄目だ。急ぎ脱出する。裏にいこう」

 「うん」


 時間が無いからと言って、朧さんは私をおんぶしてくれた。

 その感覚が子供の頃と同じだった。

 パパの後ろ頭と同じ頭に感じる。



 ◇


 脱出後。


 裏の山にて。

 崩れ落ちる屋敷を見て、朧さんは。


 「ここがなくなる・・・この先、どうすればいいのだろうか。松となれば、大名の下か。そんなお偉い人間が、なぜ、竹の姫を? 位が下なのに、そんなに姫が欲しいのか? 城を焼いてまで・・・」


 独り言を言っていた。

 真剣に考えてそうだから、横から茶々を入れてみた。


 「ねえ。パパなんでしょ。朧さんってパパなんでしょ」

 「うん・・守らないとな。今度こそ」

 

 と言った。考え事をしているから咄嗟に言葉が出てるみたい。

 面白いからまだ話しかけてみた。


 「パパ! 生きてたんだね」

 「うん・・そうだね」

 

 これだ!

 って思った。

 ママが喜んでいたのは、この言葉だったんだ。

 安心を与えてくれる魔法の言葉だ。


 「パパ。大好きだよ。ありがとう。今までも、ここでも、ありがとう」

 「・・・ん!?」

 

 私はパパに抱き着いた。

 顔を寄せ合って、子供の頃みたいに、一緒に遊んでいるみたいに・・・。


 「朝陽・・・いや、夏希。今度こそ、パパが守る。この世界で、お前を守らせてくれ」


 顔を離して私はパパを見たんだけど、やっぱりパパは目を合わせてくれなかった。

 でも、幸せだった。だってわかってるんだもん。

 愛してくれているんだって、前世を超えても・・・。


 「うん!」


 この物語は、私が前世のパパと異世界を生きる物語。

 愛する家族と一緒に、困難な世界を生きる物語。

 過去も多難だったのに、前途も多難。

 それでも、私は家族と共に前へ行く。

 明るい未来を作るために。



 パパと私の異世界転生記  ー序章完ー




ギュッとまとめてみました。

短編にまとめるために、幾つかの話を飛ばして、時系列で作成。

もし本編を作るとしたら、この間の話を少しだけやりたいと思っている事と、今回は娘の日記帳の形で、物語が進んでいますが、パパ側の視点も入れようかなって思っています。


パパは不器用だけど、娘を愛しています。

娘相手に顔を見られないくらいにシャイですけどね。

ただ、社会人なので、いちいち人見知りをしては仕事ができないので、娘以外の人となら、結構話せます。


この物語の基本は、娘にだけ緊張してしまうパパのカッコいい姿を見せる物語にしています。

無駄に話さず、背中で語る。

今どきのお父さん像とはちょっと違うかもしれませんが、不器用だけど娘を愛している。

そんなパパを読者の皆さんが愛してくれると嬉しいです。


それと補足で。

世界観は和風です。

六つの大国がありまして、大名が六人。その下に松竹梅と、位の高いお侍さんがいる感じです。忍びもいくつか流派を持って存在しています。

書いてない事として、というよりも書けなかった部分として、パパは護衛になるまでの間の物語ですね。

ここは娘目線だと、急に現れた事になりますが。

ここのパパは山籠もりで修行していまして、仙人みたいな人から武芸を習っています。

とんでもない技の数々は、その人から伝授されました。

娘を守るために、死に物狂いで修練をした結果の強さです。

これも家族の愛の力ですね。ええ。


それで、今回津吹家は、忍者が少なくて、裏の戦闘で死んでしまいました。

なので、表で、パパが大活躍したので、娘が助かりました。


以上作者からでした

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