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第六話

 結局、午前中の授業はなくなって給食の時間中に校長先生からの校内放送が流れた。

 「皆さん、午前中の授業が無くなってしまい、大変困惑しているところかと思います。すみませんでした。しかし、皆さんに伝えなくてはいけないことがあります。」

教室中がざわついた。こんなに真剣な声で放送する校長先生を知らなかったからだ。

「明日からの一か月間学校を休講とします。」

学校中からどよめきが起こる。たかが爆弾が落っこちてきた割には大げさすぎるとごねる奴が多かった。

 私は内心そいつらを馬鹿にした。だって、大げさだとか言う癖して、こいつら任務に出たことが無いからだ。

あの場に一度でも立てば分かる。爆弾一つで命なんか消し飛ぶから。


「皆さん。休みとは言いましたが、これは特別課外活動を実施するという事です。」

一気に学校中が静まった。

「ここからは術師育成課特別員の」

教室中がそんな奴いたっけ、と大騒ぎ。スピーカーから流れる息遣いは全員が聞いたことあるヒーローのものだった。

「彩ちゃん、これもしかして…?」

後ろから彩の頷いた声が聞こえた瞬間。

「みんな、こんにちは。特別員を務める、」

その声が学校中に響いた瞬間。空気が一変して、その場にいる全員が息をのむように静かになった。

それから爆発的に校舎全体の熱が跳ね上がった。


 「一瀬 将です。」

放送が続いている中、皆湧いてしまって収拾がつかなくなっていた。

耳のいいメイに放送の内容を尋ねる。

「なんか、戦争始まるらしいね。」

簡単に言った…。あまりの簡潔さに食べたものが丸ごと出そうになった。

その呟きが妙に教室中に響いた。興奮していた皆はすぐに席へ座りなおした。ほぼ同じタイミングで同じようなことが起きたのだろうか、学校中の喧騒が一斉にして止んだ。

「そこで力を持つべくして育てられた君たちに、私から任務を預けたい。」

とても硬く。そして優しさを持つ声が話す。みんなの緊張が伝わる。

「みんなには、この町だけでなく、この日本中を救って欲しい。数ある術者育成校の中でも、こここそが一番機転の利く者が集まっていると思う。」

機転の利く奴は、怜利ぐらいしか浮かばない気がした。他にいるだろうか。

「だから君たちには、苦行を強いるかもしれない。しかしやり遂げてくれると信じている。今から三時間後、呼ばれた子たちから校長室に来てくれ。

逃げるならば、それまでだ。以上」

 放送が切られた。えらいことになってしまったらしい。みんなが物凄く焦っている。その中でも、やっぱり疾風と幸璃は黙って給食を食べている。らしくない。


 「おはよー」

皆が騒いでいる中に一人のんきとも取れる声で教室のドアを開けた。怜利だ。何か荷物を持っている。

「お!れい~」

と仲のいい奴らが怜利に寄っていく。あーだこーだ言うが、怜利は全く動じない。こう見ていると本当に同じ年の子供かと思えない。

何も言わないで、大きな音を立てながら窓際にあった教卓を、左手の念力で引き寄せて教壇の真ん中に置く。


 皆その様子を見て、いつもと気が違う怜利に注目していた。怜利に寄っていた奴らも皆逃げる様に席に座った。

「みんな、放送聴いたと思うんだけど、けっこーびっくりしたよね?」

明らかにいつもとは違う話し方をしている怜利。誰も口がはさめないようなリズムだった。

「全国で見ても、ここのクラスが一番術者が多いのは知ってるよね?」

皆の頸が一斉に上下に動く。不思議な光景だった。全員が怜利だけを凝視する。

「ここには級持ち術者だっている。五級術者のヨウ、四級のハヤテ、三級のセイラ、二級のメイ、それから、五級術師の私ね。」

それぞれが頷いて、皆は硬直したかのように止まっていた。

「だからどんなのが来たって安心して争いに挑んで、誰も被害者にならないでほしいんだ。それが私からの願いです。聞いてくれてありがと。」

怜利は一瞬廊下の方を気にして、びくっとした後、一気に私達の頭上を飛び越えて自分の席に座る。

隣に落ちた衝撃で、歯ブラシを入れたコップがカランと音を立てる。


 その後すぐに、一度会ったことのある人なら分かる。あの強者の雰囲気が教室を覆う。

怜利の方をちらっと見ると、緊張しているような顔で、目を合わせてくる。

あの人?と訊こうとすると

「ね、」

と、怜利が口にする。


 大きな音を立てて教室のドアが開く。

思った通り、一瀬さんと、陸弓先生だった。

 私たち以外が反応する前に、一瀬さんは気を放つ。身から多くの妖力が滲んで教室中に飽和した。肉食獣のような匂いが微かな風圧と共に流れてくる。

 めまいがするほど濃い力だった。クラスの半分以上がその場で気を失っていった。中には、机の上のお皿に顔を突っ込んだ子もいた。

少しずつ倒れるようにして、数が減っていった。

中には、立ち上がって、頭を抱える子もいた。そういう私もかなりの頭痛と同時に、視界の端が白く弾けていく。

 怜利と疾風だけがすぐに立ち上がって、身体を倒した方向が机からずれている人を直しに行った。

「悪いな怜利、疾風君。今起きてる君たちには校長室に来てもらいたい。来れるかい?」


 足を震わせながら立ち上がって、ふらつく明、足が震えておぼつかない陽と、パンを咥えたままのバカと一緒に、怜利の後ろについて行く。


 私たちは、明るい校舎に未知の影が差しているのをまだ知らなかった。

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