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38話 やさしい神父さま

…空腹だった、私が10歳になった誕生日は姉が用意した乾いたパンの破片がプレゼントだった


親は私達を捨て消えた、誰にも見向きされず私達はゴミを漁り生活していた


長女の…お姉ちゃんのベルは優しかった、親に捨てられたというのに迎えに来てくれると信じていた


真ん中の私はそれを笑った、でもお姉ちゃんは信じてた


末っ子のワープは奇形だった、歩くだけで石を投げられ全てを拒まないと唄う教会に行くと血だらけで帰ってきた


でも…


「ふっふっふ…妹達!今日はなんと砂糖がまぶされたパンを見つけたわよ!」


「おねーちゃんナイス!久しぶりの甘味だぁ…」


「アスモ、わたシも食ベタい」


「大丈夫よワープ、食べ物は姉妹で分ける、それが掟なんだから!」


でも…幸せだった、姉と可愛い妹、それだけで充分だった。


「てめぇら!うちの所に来るなって何回言えば分かるんだ!」


「っ逃げるよアスモ!」


捕まった、栄養の足りない体じゃ走ることもままならずに三人とも。


身元が無い私達に人権は無かった、娼館に売られ妹とは離ればなれになった


幸か不幸か…私は男に媚びる才があった、すぐに雑用を脱却し専用の部屋まで貰った


「おねーちゃん…部屋だよ…天井も壁もあるよ?」


「アスモ…」


おねーちゃんの目に映る私の姿は何だったんだろう


でも、この世の悪意を全て受ける私達にも、愛を向ける人がいた


「こんにちは、今日から君達を引き取るカナン神父です、よろしくね。」


その人は見世物になり虐げられていたワープを救いだし私達も町外れの教会へ引き取った


…分からなかった、何故そんなことをするのか。


「あの…私を、私達を引き取ったということはそういうことですか?」


服を脱いだ、礼の仕方なんてこれしか教わってなかった、でもあの人は…


「はい、勿論そうですよ…」


私達をお風呂に入れた。


暖かかった…透明な水は久しぶりに見たし泡で遊ぶワープの姿は愛おしかった


「では、ご飯にしましょう!」


…見たこともない食事が並んでいた、食器の使い方は分からなかったけど、優しくゆっくりあの人は教えてくれた


「お勉強もちゃんとしましょうね。」


文字を教わった、ワープは絵を描いていた…おねーちゃんは物覚えが良くすぐにあの人に手紙を書いた


家族…私達には三人しかいなかった物が増えようとしていた


「お父さん!雪!ゆきだよ!」


「はい、寒いですから長居は駄目ですよー」


いつしか私達はあの人をお父さんと呼び…確かな幸せがそこにあった


「君達も15歳、シスターになれる年齢ですね」


「しすたー?」


「ええ、神様にお祈りして人々を悩み、苦悩から救う人です」


どうして?


神様なんて居ない、居るとしたらなんで私達を救わなかったの?


あなた以外は私達に石を投げたよ?


「やだ…しすたーなんてならない!私はお父さんと一緒に居ればそれでいいの!」


「あ、アスモ…!」


神様、どうしてワープは一人で立てないの?どうして私の記憶からあの娼館での出来事が消えないの?どうしておねーちゃんはいつも夜中に一人で泣いているの?


どうして…


どうしてお父さんはいつも咳をして血を吐いているの?


「…ごめんね、これは私の願望なんだ、私は若い頃神という存在に救われてね…」


「その神様が皆を救うことを期待してたんだ、でも現実は違った。」


「君達は神に見放された、可哀想な子達だ、だから私が救った…」


「でも…神様は無限の命を持つけど、私はそうじゃない…だから、私じゃなくて神に仕えてほしかったんだ」


気が付くとお父さんは病床に伏せていた、弱々しく、ご飯も私達があげないと食べれないほど弱っていたけど…優しさは変わらなかった


「けほっ…この手は…アスモちゃんかな?おはよう」


「ふふ、分かるんだね、具合はどう?お父さん。」


日に日にお父さんは吐血の量が増えていった、毎日洗うタオルの赤味が増すのが嫌だった


…病気について、調べた…それは大量なんて言葉じゃ飾れないほどに


町の医者は信用出来ない、ワープを薬の実験台にしようとしたから。


「感染性…魔力欠乏?」


お父さんの症状に合致するのはそれしかなかった


ハエを媒介として感染するウイルスという小さな生き物が引き起こす病気…


臓器にへばりつき、魔力という物を吸うらしい


治療法は無い、ただ…少し症状が緩和されるというのが神の信仰とされていた


「ふざけっ…!」


図書室に積み重なった本を崩す、神の信仰?じゃあなんでお父さんは治らないの…!?


汚らわしい子供に石を投げる人達のほうが神様を信じてるの…!?


神の信仰じゃない治療法を見つけてやる…!


「お父さん…起きてる?」


「んん…もう…少し…近くにおいで…」


お父さんの耳は…捻れて小さくなっていった、神様は私達の声を聞きずらくしているの?


「あのね、私ね、もしかしたらお父さんの病気治せるかもなの。」


「…そうかい、それは…よかっげぶっ…!」


「あ、いぃ今タオル持ってくるね!?」


血が黒くなっていた













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