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36話 再建、言語の壁。

(あの金髪がルナフェナ達を呼びに来るまで後数分と言ったところか…俺の今すべきことは…)


グリドールは金髪の男の背中を見送り息を深く吸う


(時間稼ぎ…!)


「すー…ふっ…!」


心臓の音が鳴り響くグリドールの頭は高速で思考し魔王を足止めかつ出来るだけ怪我を負わない方法を模索する…


(まずは距離をとっ…!?)


「兎のほうがもっと速いぞ。」


脱兎の如く走るグリドールの前に現れたのは魔王…


「やばっ…」


市街地の入り組んだ道はグリドールにとって有利であったがそれを圧倒的な速度で魔王は上回る


「これでは戦いではなく狩りと言えよう!背中を見せるその姿…正に人間の愚かさその物だ!」


「教えてやるよ…確かに人間はひ弱だ、だがな!」


グリドールは地面に腕を翳す


「だからこその知能なンだよぉっ!」


塗装された道は割れ、潜んでいたいばらが魔王を囲む


「姑息な罠を仕掛けたな…」


「トラバサミもネズミ取りも捕まえた後は狩人が回収するもんだぜ?」


魔王の体はいばらごと…空間ごと裂けるように真っ二つとなる


「んなっ…?!」


魔王は思い出す…血の一滴すら着かず、その月光を鏡のように反射する刀身を…


「てめぇは今から全ての業の罰を受ける…この一振りはその一つだ。」


隠していたトリスの刀を抜き、グリドールは強く柄を握る


「道具に頼るとは…!」


「道具?違うな…これはあいつの体の一部だ、これが目であり手でもある…」


「断罪の時間だ。」


能力を使い再生する魔王の腕を切り落とす…


「くはっ…無駄だ、そのような憎しみでは余は倒せ…」


喉を切り目を潰す…


(違和感…俺の偽物と同じ感じた…手応えが感じられない…)


「っ!?」


血を流していた筈の魔王の姿はどこにもなく、ただグリドールの前には魔王の形をした灰があるだけであった


「ぁえ…?」


そしてグリドールは気付く、自身の腹を貫いている腕の存在を…


「ごふっ…」


弱々しく背後に刀を振るうもその刀身が体を切ることは無く、グリドールは腹の流血を止められずにいた


「…なんとも、呆気のない男だ。」


「ははっ…そうかもな…」


グリドールの腹を貫いたのは歪にも変形した魔王の腕であった


「俺はな…!」


「何…?」


瞬間、魔王の頭が弾け飛ぶ…


「着弾確認っと!」


グリドールの横目には大隊を引き連れてきた金髪の男の姿があった


「あいつの周りを囲め!魔導支援小隊はグリドール大尉の治療を!」


剣や盾、杖を持ちぞろぞろとグリドールの部隊は魔王の飛ばされた頭と泣別れとなった身体を囲む


「大丈夫ですか?グリドールさん」


「ルナフェナ…いや、治療は必要無い。」


「ただ腸が無くなっただけだ、それだけで立てないと抜かす俺じゃない…」


「えぇ…さっ、最低限の事はしますからね!」


掛けよったルナフェナを押し退けグリドールは静止している魔王に近付く…


「おい狸寝入りしてんじゃねぇよ、起きろ。」


「興というものを知らんのか汝は…」


魔王の体は灰となり、頭に集まり再臨する…


「さて…三人集まれば文殊の知恵と言うが…」


数十人の殺意に囲まれ魔王は腕を天に掲げる


「それは言語あってのこと…バベルの塔という話を知っているか…?iscariot prodosia.」


閃光が走り、兵士は目を閉じる


「うぐっ…な、なんだ?今何をされた…?」


「Esta meno dome?」


「は、はぁ?お前何言ってんだよ…」


「神に近付こうとした人類は怒りを買い言語をバラバラにされた…という物だ、この世界では魔法により言語統一を果たしたようだがな。」


ある兵士は舌を使わない言語を、ある兵士は口笛のような言語を使い部隊は混乱に陥る


「くっ俺の言葉が分かるやつ返事をしろ!」


グリドールの言葉はカオスに内包された現場には届かず、魔王は高笑いをする


「くははっ…!意思疎通が取れんだけでこの有り様…訓練された兵士とは思えんなぁ?」


「マリアッチ、兵士の足止めを…!?」


グリドールは理解する、自身の指示はもはや意味を成さず、それを理解できるのは自分だけだと


「わん。」


「…え?」


「わんわんわん!ばふぅ、わん!」


「ああそうそう、獣が人語を司るのは自然の摂理に反する、獣は獣でなくてはな?」


マリアッチは野生に返ったかの如く犬の鳴き声を発し杖を噛んでいた


「わん!わぉ~…ぶふー!ぶふー!」


「うわっやめろ舐めるな!離せ!」


「ぬははは!実に愉快!余、爆笑。」



…戦場は魔王の笑い声と兵士の困惑で埋め尽くされていた。





















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