23話 責務を背負う者
~魔王襲撃まであと1日と14時間~
「…ルナフェナ、そういえばヴァイラはどうしたんだ?姿が見えないが…」
「ヴァイラちゃんですか?彼女は…」
ルナフェナは言い淀み目を逸らす。
「グリドールさんが居なくなった後、ジャックさんも目を醒まさなくなって…少し精神が不安定になってるんです。」
「そうか…そうだよな…」
「部屋に閉じこもって…ご飯もまともに摂れてないんです、最後に見たときは…」
「その部屋に案内してくれ、俺が話をする」
ヴァイラがいるという部屋にグリドールは歩を進める
「ここです、じゃあ私ジャックさんの様子見てきますね…」
「…ヴァイラ、入るぞ。」
扉を開け、中の様子を見る…明かりは点いていなく、ベッドの中からは唸り声が聞こえていた。
「俺だ、グリドールだ…」
「うぅっ…!」
グリドールに飛び掛かり腕を噛むヴァイラは泣いており、角は痛々しくも歪に伸び赤く染まっていた
「っ…」
グリドールは振りほどきもせずただ直立しヴァイラに腕を噛ませ続ける…
「ひぐっ…うぐっ…な、んで?」
「…」
「なんで、居なくなったの?」
少し我に返りヴァイラは涙ぐみながらグリドールに話し続ける
「どうして、置いていったの?」
「ルナフェナさん、泣いてたよ?ジャックさんも…」
「…ひどいよ、グリドールさん…!」
千年以上生きているはずの竜人は幼子のような姿で縋り続ける
「悪かった、訳を話すから噛まないでくれ。」
痛みは特段感じない、が心の痛みをグリドールは感じていた
「むりなの…!何か噛んでないと…不安で…!」
ベッドの方を見ると、枕は既に噛みちぎられ中身が出ておりヴァイラの方も腕に噛み傷が付いていた
「…分かった、そのまま聞いてくれ。」
居なくなったはずの仲間に再開し安心したのか既に甘噛みとなっていた
「信じるかは任せる、だが俺は今ここにいる、それだけは確実だ。」
一時間程、訳を話したグリドールはドワーフ特有の大きい手でヴァイラを撫でる
「ジャックさん、治るの?ルナフェナさんはもう泣かなくて済む?」
「その為に俺は戦わなきゃいけない、これ以上仲間を悲しませたくはない…!」
「…わかった、信じる…でももう居なくなっちゃだめだよ?」
「ああ、約束する…ジャックともしたしな!」
昔は刺し違えてでも魔王を殺すつもりだったが…仲間が出来て、俺の命に価値が出来ちまった…
「…話は済みましたか?」
「ああ、まだ外には怖くて出れんらしい、俺はリオハ…とある人に呼び出されてるからいってくる。」
「はい…いってらっしゃい。」
ジャックの為、ヴァイラの為…仲間や人々の為に俺はあいつを…魔王を殺す…!
「苦労をかけたなルナフェナ、ありがとう。」
グリドールの目には、決意の炎がゆらゆらと燃え盛っていた
「緊張するな…」
グリドールがリオハに呼び出された場所は王宮…その中では国防省や魔法省、更には軍の元帥が集まり復活したとされる魔王について会議をしていた。
「失礼いたします、メガロス大隊少佐、リオハ・エルノです、彼は魔王討伐の際死んでいたと思われていたグリドール・フェノメノンです。」
「今回は彼に証言を聞き、魔王復活について国防省、魔法省の意見をお聞かせ願いたく存じます」
「…ほら!私が喋ったんだから君も!」
「えっ…あっはい…えー今回はお集まりいただき光栄です、ご紹介に預かりました新米勇者のグリドールです。」
10数人に見られながらグリドールは魔王復活の証拠、根拠、不在期間の一週間の間何が起こったかを説明していく
「では根拠から、おれ…私が魔王と交戦し、打ち倒した時、奴は生きており仲間の魔法により西側諸国のとある森へと飛ばされていました。」
「…証拠は。」
「こちらに、これは天気予測器が計測した魔力異常のデータです、魔王の魔力の波と非常に…いえ、全く同じでございます。」
「それだけでは資料にならん、他は。」
「その通りでございます元帥殿、他にもこちらが、これはカドロ公国の協力により得た伝説上の存在、不信の神イスカリオテの現像写真であります。」
「神だと?ここは協会ではない、そんなもの存在する訳が無い。」
オーロライト王国陸軍元帥は厳しく意見を出す、それにグリドールは完璧に応えていく。
「了解致しました、では見て貰った方が早いでしょう、スリーフという学者を呼んでおります。」
「懇切丁寧にどうもグリドール…」
天井からスリーフが降臨するかのごとく降り、神の証明をしていく。
「そ、空を飛ぶアンデット…?」
「えー私は…神の遣いのような者です、今回貴殿方に神の証明をしたく遣わされました」
「神…というのは宗教的な物ではなく生物です、こことは違う次元の世界におり貴方達に干渉することは基本ありません、が…」
「奇跡、というものを起こす場合がございます。」
スリーフが指を鳴らすと大きい鉱石がゲートを開け顕現する
「こちら、王国で摂れる鉱石で一番硬く国の名前の由来ともなっているオーロライト鉱石の原石でございます」
更に指を鳴らすと、鉱石は分解される
「これは聖者ダンテの持つ権能、真理であります、効果は対象物を分解し内部構造を把握、もとい変形…真なる姿へと戻す能力であります」
オーロライト鉱石は姿を変え…魔力となり霧散していく
「オーロライト鉱石は数千年間魔力を石に閉じ込めた物です、その頑強な結束と構造により破壊が不可能とまで言われていた物を今彼は破壊しました、これでどうでしょうか、魔法省の意見をお聞きしたい」
グリドールが意見を求めると魔法省の面々は話し合い、結論を出す
「え~…魔法省、ケルナー・ゾンです、この現象は魔力では不可能と結論が出ました、故に私は神を、魔王復活を支持します。」
魔法省の結論に場がざわつく、それを見逃さずグリドールは鶴の一声をあげる
「イスカリオテは破滅を司ります、そして私は魔王から伝達を受けた!それは翌日夜!魔王もとい神が我々人間の国をもう一度滅ぼすというものです!」
「それを許してもいいのでしょうか!先日の大陸各所に目を宛がったのも魔王!次は何をしてくるか分かりません!神を連れているから!」
「オーロライト王国を軍事国家とし軍力を増加させ魔王を退く、それがあなた方のする最善かと…私からは以上です。」
グリドールは演説を終え会議の場を後にする…会場内は騒然となり満場一致でグリドールの案が可決されることとなっていた
「あー疲れた…もう二度とああいうのはごめんだ…」
「お疲れ様、始めてにしては頑張った方だよ。」




