12話 空虚、それは君の居ない世界。
…何か大切な事を忘れてるような…あれ、俺は何でここに居るんだ?ここに来る前は…何でここから出ようとして…頭痛ぇ。
「スリーフ…何か頭がっ…」
「ん、そろそろ効果が薄れてきたかな」
なんだ?視界がぼやけて…あーなんかこれ不味い気がする!
「もう切ってもいいかな、頃合いでしょ。」
あっ…
瞬間、グリドールの脳内に流れ込む魔王城での出来事と勇者パーティの思い出。
「お、おいアルさん…これ大丈夫なのか?グリドールめっちゃ苦しそうだけど…」
「うん大丈夫だよー、これは記憶の拒絶反応、すぐに良くなる。」
バタバタとのたうち回るグリドールを2人は眺める
「っはー…!っはー!」
「はーい深く息して~…」
「こ、これ何…お前何してっ」
「君、僕達が発見したとき心臓が止まっててね、脳に酸素が言ってなくて危なかったから一回取り出したの~」
え?脳を?
「グリドール…あれは酷い光景だったぞ…」
「それで…記憶と味覚を一時的に失う代わりに君は生きてるんだよ~」
「じゃあ俺の心臓はどうなんだよ、俺には呪いが心臓に掛かってて…」
アルディスの目が開き白い瞳孔でグリドールを見つめる
「聞くな。」
「っ…は、はい…」
何なんだあの目…!見つめられただけで心臓が暴れて汗が噴き出す…!あいつやべぇ…!
「うん、いい子いい子!ご飯にしようか、おいで」
「グリドール、俺からも言っておくが心臓については何も詮索するなよ。」
スリーフまで…俺の心臓は一体どうなってんだ…?
~オーロライト王国から離れたどこかの森~
「ねーワープぅーまだ見つかんないのー?」
「うるサイ、どコ探してもイなイの。」
「はぁー…ベルちゃんもグリドールもいないからつまんないよ~!」
ワープはグリドールと魔王の居場所を探しアスモデウスは暇を持て余していた
「グリドールのナニが良い?アの男はキケンだ。」
「そこが良いんだよ~…あーあの心音思い出したら興奮してきた…ち、ちょっとだけワープの心臓止めていい?」
「ヤメろ変態!サワるな!」
ワープに噛みつかれアスモデウスは大人しくなり夜空を眺める
「痛いなもう…ね、実際人間のことどう思う?」
「キラい、群れテるしワタしを迫害すル。」
「あはは…まぁ私もグリドールが居ないなら人間の味方する必要無いしてきと~な世界見つけてそこ行こうよ」
「イた。」
「え?」
「魔王、イた。」
閑静な森に魔王というそぐわない言葉が響く。
「魔王、ね。」
「どウスる?人間達に伝えル?」
「私はいい、ワープに任せるよ、寝るから腕貸して~」
アスモデウスはワープの腕を枕にし眠りに入る
「人間…魔王いタラ死ぬ…なニ?こノ気持ち?」
ワープは知らない感情に心を捕まれていた、人間は嫌い、だが何故か人間が居なくなるのは…
「寂しイ…」
~オーロライト王国領地セントゲート~
「解剖、すべきでしょうか…」
3日前程、突然ジャックさんが倒れてずっと眠っている、その後にグリドールさんの訃報を聞いて私はどういう顔をすれば良いか分からなかった。
「おそらく私が掛けた想い人の呪いが関係している…心臓を見れば…」
メスを握り、古風なやり方で腹を裂こうとしている私はどういう風に移るのか、と考えメスを置く。
「はぁ…グリドールさん…」
「ルナフェナ?」
目元のクマを治癒魔法で治し無理矢理笑顔を作って私はヴァイラちゃんと話をする
「はい、どうかしましたか?」
「…大丈夫?ここ最近わたし心配だよ、ご飯も食べてないし…一緒に食べよ?」
「…そうですね、お腹も、空いて…きて…」
これはなんだろう、ここ最近視界がにじんできて…胸が苦しくなる。
「ルナフェナ…」
「わ、わたっ…私は大丈夫ですので、先に下へ降りてください。」
「うん…」
あれ以来リオハという人以外グリドールさんと一緒に居た人とは連絡が取れていない、もう、どうするべきか私には…
「ルナフェナ!大丈夫だよ、わたしが居るから…わたしは何処にも行かない。」
ヴァイラはルナフェナを抱き締め宥める。
「ぐっ…私はぁっ…君の保護者だから強いとこ見せないとぉっ…」
「泣いてもいいよ。」
もう、駄目だ、感情を抑えられない…
人の少なくなったセントゲート、時計塔にて、一人のエルフの悲哀が流れる。




