9話 釈然とせず、悪は去る。
「視えるぞ…お前の動き…!」
「獣、だな。」
付けられた傷に魔王も動揺しグリドールと肉弾戦を繰り広げる
「ま、マジか…何も見えねぇ…」
「わたすもです…一体目の前で何が起こってるのか…」
瞬きを一切せず魔王のみを捉えグリドールは猛攻を仕掛ける、それに応え魔王はあしらうのではなく本気でグリドールを殺さんと拳を握る
「ふっ…ふっ…」
「息が切れているぞドワーフ!もう限界かッ?!」
拳がぶつかり、その後に音が生じるほどの速さと力強さで交戦するグリドールと魔王はもはや他者には細い何かに見えていた。
ピッ…
「ぁ…がっ…」
「心の臓に何か呪詛のようなものが掛かっているぞ、取ってやった。」
「グリドールさん!」
脈打つ心臓はグリドールの体内にはもはや無くルナフェナの掛けた鎖によって動いていただけであった
その鎖を、魔王は意図も容易くグリドールの胸に穴を開け取り出す
「ヒュー…ヒュー…かはっ…」
「それで終わり、か。」
「私を忘れたの?」
魔王が振り向くその先にはアスモデウス…病気と色欲の悪魔が指で四角を作り魔王に照準を向けていた
「白血病、脳腫瘍、緑内障、糖尿病、肺炎、悪性黒色種、胃潰瘍、脳虚血発作、肝臓癌、免疫不全症候群。」
「余になにをっ…」
「動脈硬化、気管支喘息、気胸、全身性エリテマトーデス、重症熱性血小板減少症候群、多発性硬化症、潰瘍性大腸え…」
アスモデウスが様々な病名を言っていくと魔王は段々と咳や吐血を初め鼻血等に苦しみその場に倒れていく
だがその代償大きくアスモデウスも鼻血と吐瀉物を撒き散らし立ったまま気絶をする
グリドールは心拍が止まり血を流さず床に倒れていた
「ぐぅううう!小癪な…」
魔王は姿形を変え体を触手に変えてワープを取り寄せる
「召喚に当たる義務を果たせ!命じる!余を何処かへ飛ばせッ!」
「ギぎギぎ…!」
ワープは抵抗し魔王の支配から逃れようとする
「従え!余が命じているのだぞ!」
「がッ…」
ワープの抵抗虚しくゲートが発現する…がそれは魔王のみに開いた物ではなかった…!
ゲートはグリドールにも開き魔王と共に何処かへと飛ばされていくのであった
「ワープ君!」
リオハが駆け寄るも遅く、既に魔王とグリドールの姿は消えワープとアスモデウスは気絶、仲間は傷だらけ血だらけの凄惨な現場をリオハは黙って治癒魔法を掛け続けるしか無かった。
「おお!魔王を打ち倒した勇者達が返ってくるぞ!」
「国を救ってくれてありがとう!」
「これで安心して暮らせる…」
これで、良かったのだろうか。
あの時から3日経った、魔王討伐完了のパレードに招かれ私はオーロライト王国で国民から尊敬の念で見られている
「…っち?リオっち~?」
「あぁ…何だい、また晩餐会の招待かい?」
牢獄で救った男は私の執事となり虚ろな目をしている私の補佐を任せている、とは言っても私は何もせずこうやって椅子に座っているだけ…
他の分隊はそれぞれの国へ帰りあれから連絡を取っていない、悪魔達も何処かへ消えていった、トリス君はまだ見つかっていない。
「いやそれがさ、何か良く分かんない工房からの招待が届いてるんだよね」
「工房?彼の…グリドールの親族かな?」
グリドールの死は王国中に伝わり彼は英雄、死に誉れを見いだしたドワーフの強靭なる…もういいか。
「ま行ってみれば?リオっちここ最近全然外出てないでしょ!」
「そうだね…今日くらいは私が出向くよ。」
久しぶりに朝日を見た、こう光に当てられると…自分が嫌になってくる。
あの時、私は何が出来ただろうか。
「こんにちは、リオハです、招待状を…」
「ぐっ!」
あれ、なんで私天井向いて…違う、この痛み…殴られた?
「この無能!グリドールさんを返してよっ!」
泣いている…竜人…?
「ヴァイラちゃん、下がっててね、すみませんリオハさん、私の身内が粗相を…」
あの子…ヴァイラって言うのか…素敵な名だ、私を無能と言っていたな…やはり彼の親族か…
私はルナフェナというエルフに案内され椅子に座り茶を出される。
「用件は…やはりグリドールのことかい?」
「はい、彼の事、亡くなったとき何を言っていたか、何をして…すみません、少し…」
彼は泣いていた、静かに、哀愁を漂わせて。
「言っても信じないと思うけど…」
「貴方しかいないんです、彼の最期を知っているのはこの王国に。」
「だから、教えてください。」
「…うん。」
リオハはヴァイラに殺意の目を向けられながらグリドールの最期を語る。




