26話 そしてそれがどうしても出来なかった者はこの輪から泣く泣く立ち去るがよい
「俺らの分隊は主にジャフの目とやらの偵察とその周辺にいる魔物の排除及び魔王城での交戦…か」
「聞いてた情報と違いますよ、動き0です。」
「もう魔物のストックが無いとかじゃねぇのか?辺りに魔物もいねぇし…」
日が昇ってきている早朝、グリドールの分隊は結界の外の仮拠点でジャフの目を見張っていた
「まぁ、作戦決行の時間まではこちらも動けないから今は情報を伝えるしかないね、ロアさん通信機を繋いでくれるかい?」
「あいよ、なぁトリス、あの目についてどう思う?」
「どう思うって言われてもね…千年生きてきてあんなもの見たことも聞いたこともないからね、かろうじて魔力で構成されていることは分かったけど…」
報告と違い魔物を排出しているはずのジャフの目及びそこから突出している腕は静止していた
「あの静止状態…嵐の前の静けさかあるいは…」
「どうやら他の区域でも同じ状態らしい、一体何が起こってるんだ…?」
グリドールの分隊が怪訝な目で空に沈黙するジャフの目を見ていた所、突如としてポータルが皆の前に開く
「おい!聞こえるか?!俺だスリーフだ…お前らに繋がったのは奇跡だな…とにかく今ヤバい事が…」
「うぇあ…スリーフさんどうしたんでしょうか」
ポータルの中にスリーフの姿はなく声が聞こえるのみであったがその焦燥感から何かが起こっていることは明白だった
「どうしたんだ、話せスリーフ。」
「あ…不安定に…にげ…」
「あぁ?途切れてて聞こえな…」
グリドールがポータルに近付いた瞬間、ジャフの目からこの世のものとは思えない叫び声が聞こえ突風が吹き仮拠点は分隊ごと吹っ飛んでいった
「ぐあっ!?一体全体何が…!?」
「グリドール!避けろ!」
空中に放り出されたグリドール達が目にしたのは正に地獄そのものだった
「うぉっと!?こいつは…肉?」
ジャフの目は血の涙を滝のように地面に浴びせ血を含んだ地面は血となり肉となり正に血肉沸き踊る光景となっていた
「んだこれ…離れねぇ…!はっ!皆大丈夫か!?」
吹き荒れる風は小さな旋風を巻き起こし台風のような形となりその地面を抉りグリドール達に肉をぶつけていた
「こっちは大丈夫だ!今は自分の事を考えろ!」
「僕も同じく…!君はどうだいグリドール!」
その巨体を生かしロアはマリアッチを守りトリスは襲い掛かる肉片を刀で全て切っていた。
「この肉片は力づくで離せる…まずいのは…」
「マリアッチとやら!高高度から落下しても助かる魔法は無いか?!」
「あります!でもそれには条件が~!」
旋風はグリドール達を上へ上へと昇らせ雲に近付き始めていた
「皆集まって輪になってください!そうすれば助かっ!」
突如、旋風は停止しグリドールの恐れていた自由落下が始まる
「ぐぅ…!空中だと…踏ん張れねぇから動きずれぇ…こいうとき…」
「こういうときヴァイラがいたら~って思ってるね?」
「トリス…!?お前その縄…!」
空中で回転するグリドールを引き寄せ体勢を立て直したのは光る縄を持ったトリスであった
「他の人も引き寄せるから僕の手握ってて…ねっ!」
縄をロア達の方向へ投げ引き寄せるトリスの刀は消えておりグリドールはまさかと思う
「お前…もしかしてその縄…」
「ふっ…ん!気付いた?君が苦労して取った金属は伸縮自在でねっ…!圧力を掛ければこうやって縄にもなるんだよ…」
「まずいですぅ!地面が近付いてます!早く輪に!」
ロア達を引き寄せ終わりグリドールの分隊は空中にて輪になる
「これで…いいんだな!?」
「はいです!わたすを信じて前傾姿勢になってくださいです!」
「分かった!」
三人はマリアッチに従い前傾姿勢になる、がそれは落下速度を上げていた
「これ本当に大丈夫なんだよなマリアッチ!?」
「ごぅえ…ちょ、ちょっとこっち見ないでください…!」
「うっ…」
落ちていく瞬間、グリドールは目撃する、目の前にいる獣人が口から胃液が混ざったゲル状の物を吐きそれを衝撃吸収材として使おうとしていることを。
「ご…ごれをつがってくだざい…」
「いやいやいや!こんなの使いたくねぇよ気持ち悪い!トリスもそう思うよな?!」
「は?何!?聞こえないんだけど?!」
落下速度が早くなり空気は押し退けられ騒音を発していた
「ああくそ!トリスじゃ目が見えねぇからこれがどこから出た物か分かんねぇ!はっロア!おいお前はどう…」
「…あいつ、どこいった?」
「もう地面が近いでず…早くごれを…」
「くそくそくそ!もうなんとでもなれ!」
グリドールの分隊(ロアを除く)はマリアッチの吐き出した物をクッションにし地面に衝突する…
「がはっ…あー最悪の気分…」




