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22話 傷を見せろ

「おい!セル!」


「あ、あちょ!患者さん困りますよ勝手に外出なされては!」


目に涙の雫を浮かべ早足で病院から去るセルを引き留めたのは誰でもないグリドールであった


「何よ…」


「魔王討伐隊の件、やっぱり俺が参加するぜ。」


「はぁ?何急に、もうアタシは決めたの、向こうにいって皆と一緒に居るの」


「どうせあんたには分かんないでしょうね、信頼出来る仲間が圧倒的理不尽な暴によって死んで一人残されたアタシの気持ちなんて…!」


その言葉はグリドールにとって地雷だった


「俺も、ドワーフの村で仲間を大量に失った、信じてもらえるかはこの際良い」


「お前の気持ちは分かる、痛いほどな、一夜にして開いた心の穴はそう易々と埋まらん、でも!もしお前が本当に仲間の事を想うならそいつらのことを後世に伝えようとは思わないのかよ…!」


「俺は死んだあいつらに報いる為に働いて体を鍛え宿敵を倒した、だがお前は!」


「そうやって卑屈になって自分も楽になろうとして!死んだ奴らの想いを背負おうともせずそいつらと同じ運命を辿るつもりだ!」


「仲間を…なんだと思ってやがる…!」


セルの胸ぐらを掴みグリドールは力説する


「じゃあ…じゃあどうすればいいのよ!仲間は消えて!精神状態が不安定とか変な理由でアタシのペット達は没収されて!何も残ってないのよアタシには…」


「何もないなら、詰め込め…!全部!仲間の分まで!お前にはその責務があるだろ…!」


セルの鞄が地面に落ち数々の物品が床に散らばる


「…っ!皆の…!」


「遺品か…よし分かった、お前はこれを身に付けて死ぬまで仲間の事を忘れるな、それが今のお前に出来る最善だ。」


「なんで…何でそんなことが分かるのよ…!」


「俺も、それをして助かったからな。」


グリドールは乾いた血の付いた布を取り出す


「これは俺の戦友の止血布だ、殺される前、俺にくれた最期の物だ、俺はこれで数多の戦いを生き抜いてあいつの願い、戦いに明け暮れ止血布を血塗れにするというのを叶えた。」


「今じゃどんな洗剤で洗っても落ちない屈強な汚れ…いや、想いがこれに篭ってる、お前もそういうのあるんじゃないのか?」


「っ!」


仲間との記憶を思い出しさらに涙が溢れるセルをグリドールは宥める


「騎士団長…皆に平等に優しくて身寄りの無かったアタシにも居場所を与えてくれて…研ぎ石をくれて…」


「同期のサツニ…右も左も分からなかったアタシに勉学を教えてくれて…万年筆…それがあいつの遺した物…!」


「そうか、ゆっくりでいい、そのまま話してくれ、お前の仲間はどういう人間でどういう生き方をした?」


近くの椅子に座り日が落ちるまでセルの話を聞くグリドールであった。


「だから、これは首に巻き付けるの、あの娘はアクセサリーが好きだったから、装飾品に。」


「あぁ、そりゃ良いな、墓参りは派手にやってやれよ。」


「これで全部、ありがとう…あんたのこと、誤解してた、分かってないのはアタシの方ね、あんなこと言ってごめんなさい。」


「いいさ、ああやって感情を発散させるのは大事だ、それで討伐隊の件だが…」


「ええいいわ、あんたが行っても、アタシはこの国を守るわ、あんたは安心してあの野郎をとっちめてきなさい。」


「ありがとう、また仲間の事話してくれ、俺も出来る限りの後世に伝えてやる、じゃあな。」


「ええ…さようなら、次会うときは平和になってるといいわね…」


夕暮れ時、グリドールは一人の人間の心を軽くし病院への帰路に着く。












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