28話 償い
「え…?」
「もう争うのはやめよう、僕は戦意喪失しちゃったよ。」
「な、なに急に?」
「好きにしてくれ、煮るなり焼くなり殺すなりね」
突然の出来事にその場にいた全員が混乱していた
刀を手放し、大の字になり胸ポケットから薬を取り出しジャックとヴァイラに投げトリスは目を瞑った
「傷付けちゃってごめんね、それで治してね。」
「し、信用出来ないっす!きっとこれは毒っす、ヴァイラちゃん使っちゃ…」
ジャックの警告遅く既にヴァイラは薬を服用していた
「大丈夫よ、ジャックさん、彼に敵意は無いわ。」
ヴァイラの声色が変わりトリスに膝枕をする。
「あぇ…ヴァイラ…ちゃん?っすよね?」
「違うわ、名前は同じだけどね。」
「なぁ、ヴァイラ、僕はどうすれば良かったのかな。」
「あなたは罪を償うのよ、過去にやってしまったことはもとに戻らないわ、だから今までのことを精算するの。」
天を仰ぎ疲れきった顔でトリスはため息を吐く。
「ヴァイラ、僕は謝りたかったんだよ、あの時からずっとね」
「知ってるわ、私も昔からずっとね」
「え…ヴァイラ?」
「いいのよ、怒ってもいないわ、でも他の人は違う、貴方にそれを伝えたくて私も千年耐えたの。」
先程まで命の取り合いをしていた筈が今では優しさと暖かみに溢れている状況にジャックは俯瞰することしか出来ていなかった。
「じゃあ、私はもう行くわね、この子を守らないと…」
「そんな、短すぎるよヴァイラ、いかないでおくれよ…!」
縋るトリスの手を握りヴァイラは落ち着いた声で宥める。
「もし、貴方が罪を精算し終わったらまた会いましょう、それまではお互い離れましょう。」
「ヴァイラ…」
涙を見えない目から流しトリスはそのまま眠りに就く、それと同時にヴァイラも気を失った。
「今のは、一体…」
「うわーっ!?グリさんゾンビみたいになってるっす!?」
「誰がゾンビだ…取り敢えずそいつを拘束しよう、王国の法に基づきそいつは罰せられる。」
「いや~危ないとこでしたよ、てか一回グリドールさん死にましたし。」
「えマジ?」
そこからトリスを縄で縛り付けヴァイラを背中に担いで3人はスリーフの開いたゲートに入っていった。
「よぉ、おかえり、随分と派手にやったみたいだな。」
「ただいまっす、無事といっていいか分かんないっすけどヴァイラちゃんは取り返したっす!」
「あぁ、俺はもう休みたい…」
「グリドールさんは本当に休んだほうがいいですよ、あぁそうだスリーフさん、ヴァイラちゃんの身に何が起こったか調べて欲しいです。」
「それは別に構わないが…そいつ、起きてるけど…」
スリーフの指差す先には既に立ち上がっているトリスの姿があった。
「あ、おはよう君たち。」
武器を一斉にトリスへ向ける4人、それを焦りながら躱すトリスの顔は安堵が溢れていた。
「あちょまって!敵意無いって!もう僕やる気無いって!」
「えぇ…」
「にしても何で急に戦意無くなったんすかね~ヴァイラちゃんの様子も変だったし。」
傷を癒しながらコーヒーを飲み語るジャックであった
「そうだな、やはりあいつは何かヴァイラと接点があったんだろ、ルナフェナ、お前もエルフだろ何か知ってないか?」
「あー…私は何も知らないですね。」
「そうっすかぁ、でこれからどうします?」
3人はこれからのことを話し始める
「まずはトリスの野郎を檻にぶちこむ、そんで次は俺の勇者候補試験だな。」
「あたしはちょっとセントゲート帰るっす、親方に顔見せたくて…すぐ帰ってくるっすよ」
「そうか…寂しくなるな。」
「私は一応ヴァイラちゃんと一緒に居ますが…」
「わたしグリドールさんと一緒に行きたい!」
「これですからね」
ヴァイラが会話の輪に入り賑やかになっているのをトリスは物憂げに眺めていた
「罪かぁ…」
「よぉ、なんか食うか?一応お前も客人だしな」
「君は…不思議な匂いと音だね、死体と生体の狭間のような…まぁ取り敢えず茶でも貰うよ、ありがとう」
「はいよ、せいぜい楽しむこった、すぐに監獄行きで味の薄い物しか食えなくなる」
「はは…」
乾いた笑いをするトリスの表情は心なしか柔らかくなっていた。
「…面会だ。」
「あれ、君はあの時のエルフの…」
「ええそうです、ルナフェナです、貴方のことについて処罰が決まったので伝えます。」
そっか、僕はあれだけの人を殺したんだ、仕方ないよね。
「貴方は釈放です」
「…そっか、理由を聞いてもいいかな?」
「貴方は1000年以上生きてきたので生きる歴史的証人何です、全て話し合えたら処刑です。」
「うん…ありがとうね、伝えてくれて、ルナフェナ。」
ルナフェナは下唇を噛み締め精一杯取り繕う。
「これ、刀ですもう斬れないようになってますが、貴方にはこれが無いと駄目だと聞いたので」
「君に尽くしてもらってばっかだなぁ…じゃあ僕からも一つ教えてあげるね。」
「君の両親はね、魔王から君を守るため死んだんだ、僕は可哀想に思ってゴーレムに君を託したんだよ」
「…!」




