25話 黒刀の斬撃 其のニ
「あはは!ここまでやったのに失神しなかったのは1000年間で君一人だよ、すごいすごい。」
あたしのせいだ、自分がやらかしたからグリさんがこんなに…
「はぁ…はぁ…まだ、俺はぁ…やれるぞ…」
「寝た方がいいよ痩せ我慢、僕が内臓切りまくったからね、止血しな、君は殺したくない…」
トリスはグリドールの眼前に包帯を投げジャックへ刀を向ける。
「敵からの慈悲を受けるかよってんだ…!」
「はぁ…もういいよ、君」
呆れたようにグリドールの方へ体を向け、瞬きの瞬間グリドールの体は吹き飛ばされ血を吹いていた。
「あ、ぁあ…グリさん…」
「ふぅ、じゃ君もああなりたくないなら降参してね、僕は早くあのエルフ君のとこいかないとだから。」
「い、嫌っす…あたしは最後まで粘るっす…!」
ガンブレードを持つジャックの体は恐怖と無力化で震えていた
「やっぱり可愛いねぇ君、そうやって恐くて震えてるのにまだ歯向かうとこ…」
何かないっすか!?ルナさんが来るまでの時間稼ぎ…!あたしが一人でこいつを倒すのは無理っす!
「ま、まだ奥の手は見せてないっす…」
右腕からエンジン音が鳴り煙幕を辺り一面に張るジャックの頭の中は怯えとグリドールの安否の不安で埋め尽くされていた。
「ヴァイラちゃんが言わなかった?僕目見えないんだよ、だから煙幕は無ー駄。」
ジャックの影へ斬りかかるとその影は文字通り煙に消えてしまった
「これは…光学的煙幕っす…実体の無い分身を作り出せる特殊な煙で出来てるんす…!」
「へぇ…人間は面白いものを作るねぇ…」
指を顎に回し考え事をするトリスに弾丸を撃つが全て避けられてしまう…
(これを続ければ…)
「君さぁ…そうやってずっと遠くから撃ってればいいと思ってるでしょ」
「…!!!」
回避行動を取るがそれよりも速く強く飛んでくる刀をジャックは避けられず左の腕を突き刺されてしまう。
「ぐあぁ…痛いっず…」
「はい、おしまい、頑張ったね、おやすみ。」
「待てよ…この野郎…そいつに触れるな…!」
その圧倒的な殺意と存在感にトリスは思わず額に冷や汗を流す。
「あぁグリドールさんまだ傷は治って無いですよ?!動いたら…」
「てめぇ、俺のジャックの腕をよくも刺しやがったな?」
「うん、刺したよ、それが何か?邪魔だったんだから可愛くてもやんなきゃね。」
腹より臓物を撒き散らしながら月光にグリドールの顔が射し込んだ須臾、トリスは数十M吹っ飛んだ。
「その傷で動けんの?マジかよ君化物だな」
「お前を…殺す!許さん!」
グリドールとジャックがトリスと死闘を繰り広げていた時、一方その頃ルナフェナは…
「ヴァイラちゃん大丈夫ですか…ってその角…」
「ルナフェナ…!きてくれたの!」
「今鎖を解きます、動かないで…」
ルナフェナは鎖を解きながら、ヴァイラに事情を聞いていた
「あのね、なんかわたし1000年眠ってて…えと、そもそもわたし竜人じゃなくて元は人間で…」
「ちょ、情報量が多いです!落ち着いて一から説明しましょうヴァイラちゃん!」
「…でね、そういうことがあってあいつはわたしをここに連れてきたらしいの。」
「成る程…複雑ですね、でもヴァイラちゃんが嫌がってるのに止めないのは解せませんね…」
鎖を半分程解き終わった頃、ルナフェナ達の近くに何かが高速で突っ込んできていた
「うわぁ!?何です!あれグリドールさん…?」
ヒューヒューと息が腹部から漏れ出るグリドールの姿はほぼ死体であった。
「心臓は…まだ動いてる!止血して最低限治すしか…!」
「グリドールさん大丈夫…?」
「…はぁ!走馬灯が見えたぜ…」
決死の治癒により意識を戻すグリドールであった
「グリドールさん、状況は最悪です…!ジャックさんが時間を稼いでくれてますがまだヴァイラちゃんも解放出来てません!」
「これぐらいでいい、もう動ける、後少しで何かが掴めそうだ…」
ルナフェナの制止を振り切り立ち上がるグリドールの目にはジャックが殺されそうになっている現場であった。
そして今に至る
こいつ…なんて速さだ、なぜここまで怪我を負ってそこまで動ける…?
「脇腹ががら空きだぞ!」
「わざとだよ馬鹿」
幾度となく斬られようとトリスに突撃するその姿正に堅忍不抜そのものであった
「そんな…グリさんもうやめるっす…本当に死んじゃうっす…!まだあの時の答え言ってないのに!」
「ジャックさん!ある程度の止血はします、早くグリドールさんの加勢に…!準備が出来次第私もヴァイラちゃんと一緒に行きます!」
ゆっくりと、しかし着実にトリスの息は上がっていった。
須臾←しゅゆと読みます




