14話 弱い子
竜に愛を教えてはや3年、村人の男と竜の間には子供が出来ていた。
「君との間に出来た子供の生誕祭を今度村でやるんだ、きみもこないか」
人間とふれあい警戒心が無くなった竜は快諾し、男とささやかな生活を満喫した。
しかし生まれた子はひ弱で、一人で立てないほど体が弱かった。
「なんて嘆かわしいことだろうか、この子は一人では生きていけないだろう、君も悠久を生きるわけではない。」
子供の自立を懸念した2人の親は様々な魔法を試してみたものの、まるで呪いのようにしがらみつき、身体能力は向上しなかったそうだ。
「嗚呼、これではこの子は風が吹いただけで死んでしまうだろう。」
竜は深く悲しみ、我が子を哀れんだ、しかし希望が潰えたわけでは無かった。
「なんだって、それはきみが持たないだろう」
封じられ、歴史に葬られた禁術を使おうと、竜は子に印を結んでいた、それを制止する男はあまりに非力であった。
自身の命と子を1000年眠らせる代わりに、強大な能力を授ける禁術は正に竜の魔力量でしか出来ない芸当であった。
「私が約束しよう、この子は私の身が滅ぼうと守ろう。」
「最期に、私は君に愛を教えると思っていた、だが逆に私が教えてもらっていたことを詫びよう。」
そうして竜の命を犠牲に子は眠りに入った、長く、それは人の文化が変わるほどに
これが、歴史上はじめての竜人の誕生である。
「という、お話でした。ご清聴ありがとうございました」
吟遊詩人が吟い終わったその時、ヴァイラは涙を大粒流していた。
「感動したっす~!」
街の人々はその場で拍手喝采を巻き起こしていた。
「いやぁ~いい唄を聴きましたっす!笛の音色も凄まじかったし!」
「あぁそうだな、ルナフェナに聴かせてやりたいぐらいだ、」
人が離れた後、ヴァイラの異変に気付いた2人は心配を掛ける。
「ヴァイラ、どうしたそんなに俯いて。」
ヴァイラが顔を上げると涙で目の辺りが赤くなっていた。
「なんか、涙とまんない…」
文字通り涙が滝のように流れているヴァイラに事情を2人はゆっくり聞いていた。
「なんか、あの人の吟きくとね、涙とまんなくなっちゃって。」
「何か関係ありそうっすよねあの吟…」
「わたし弱い子でごめんなさい…役に立てなくてごめんなさい…」
ヴァイラは丸まり慟哭を始めた。
「あちょ、大丈夫っすよ!ヴァイラちゃんは弱くないっす!」
「右に同じくだ、お前は役立たずじゃない、もし弱くても俺ら仲間がいるだろう。」
俯瞰していたルナフェナも加わり、3人全員で一晩中慰めたが、メンタルの回復には時間が掛かりそうだった。
「にしてもヴァイラちゃんなんで急にあんなになっちゃったんでしょうか…」
「やはりあの物語に感情移入してしまったんだろ、子供ではよくあることだ。」
「あれじゃないっすか?実はあの物語はヴァイラちゃん本人の物語だったとか?」
「なわけあるか。」
「そうっすよねー結構いい線行ってると思ったんすけど。」
3人でヴァイラのことを心配していると、ジャックの胸ポケットが光り、時計の音がカチカチとなっていた。
「あれ、なんで今起動したんでしょ、親の愛でしか動かないはずなのに…」
「俺らに親心が芽生えたってことかもな」
「あれ、この時計西を刺してたのに北東を刺してるっす。」
「行き先が変わった…?そんなことありえるんでしょうか…」
「いやぁいかんせん前例がないんでなんともいえないっす…取り敢えず行ってみましょう。」
突然行き先を変えた時計に戸惑う3人は、外を歩けないほど心が折れてしまったヴァイラを1人残し、時計の指す方向に旅立つのであった。
「じゃー1日経ったら帰ってきますから、それまでお留守番っす、出来るっすね?」
「やだ…置いてかないで…」
愚図るヴァイラを優しく諭すジャックの姿は正に母親であった。
「置いてきて良かったのか?1人にするとやばいと思うんだが…」
「大丈夫っす!何かあったらルナさんが飛んでいきますし、たまには1人の時間も大切っす!」
「ならいいが…ルナフェナぁ…お前はいつまで寝てるんだ…」
「お外寒い…ヴァイラちゃんと一緒に居たい…」
毛布にくるまるルナフェナを引きずりながら時計の指す場所に向かう3人であった。




