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ダンジョンマスターの眷属②side穂高

俺はダンジョンで昨日収穫したばかりの野菜がまたたくさん収穫出来ることに何となく納得した。

「これが異世界クオリティー」

エルフのフーリエンさんが、今、剪定バサミの使い心地を絶賛確認中。

「これは良い!今度鍛冶屋で作って貰おう!」

異世界語の修得を頑張っている実李には悪いが、俺、もう稔司の眷属にして貰ったから、稔司の上司神からオマケに全言語習得を貰ったものね!

理解して無い実李とは違って、俺は自分が地球での生を終えたことをあのダンジョンを出た時に理解したし、受け入れた。

何故、爺さんがそんな決断をしなければいけなかったのか。

それは、アジアのカリスマファーマーと呼ばれる五味稲作に取っての深刻な後継者問題が浮上したからだ。


一つは自分の一人息子、五味稲穂の効率的農業。悪いことではないが、農薬使用をしたくない稲作の無農薬栽培をないがしろにしている。五味農場の経営が危うくなる前に俺達の父、五味稲穂夫妻に五味農場の経営権を全て渡したのが20年前。

それからは、6人の孫達に遊び半分で無農薬栽培を教えながら、稲作の作った野菜しか使いたく無いというお得意様の為に古里村という四国の過疎が進んだ村の土地を買い取り少しずつ開墾しながら村の年寄り達と一緒にのんびり仕事していたのだが、俺達孫兄妹の長男、五味耕作が古里村の村長になり、田畑五味ファームを事実上傘下に収めた時から爺さんはまたたくさん悩むことになった。

爺さんは田畑五味ファームは、俺に継がせるつもりでいろんな用意をしていた。

他の兄妹も納得していた。

 しかし、耕作兄貴は自分が継ぐものだと思い込んでいたようで、なんと俺を毒殺未遂まで起こした。

 何とか俺を逃したかった爺さんは、とりあえず俺を大阪の取引先のパン屋にブチ込んだ。俺も嫌いじゃなかったので修行して店を開く準備と、無農薬栽培の畑を大きくはないが持った途端、耕作兄貴から「実李の命はお前の行動一つにかかっているからな?」と言うおぞましい電話を受けた。

 爺さんに実李のことを聞いたら、食事に毒キノコや毒草が、実李のお弁当だけ入ってるときがあるらしい。

それが原因で学校にも行かなくなってしばらく経つという。

爺さんは全国の神社やお寺を行脚して2人をどうにか助けてくれるよう祈りを重ねたら、関東のとある小さな神社で、「その2人を逃してやろう」と神託が降ったが、どんな所か不安だから場所だけでも見たいと爺さんが懇願して、ダンジョン視察が叶ったが、その後1ヵ月も神様からの音沙汰は無い。

 俺は全ての財産を金に変えて爺さんに渡した。……あの時は辛かったな。爺さん泣かせたから。

無事1ヵ月後、神託が再び降りて実李と俺は異世界アンシャルムに受け入れられ、今、実李の根性叩き直し中。

畑仕事してる他はラノベを寝転んで読んでるだけだったグータラぶりで、世間知らず。食あたりを食事中に注がれる共用のお茶のせいだとかたくなに信じてるから、爺さん気が狂いそうなくらい心配してた。

 稔司にちょっとヘコまされろ!

俺のステータスはこんな感じ。

★★★★★★

名前 穂高(土の大精霊/亜神稔司の眷属)

レベル 18

スキル 土魔法MAX/風魔法レベル1/薬草育成レベル1/気配察知レベル0/毒耐性レベル5

創造神様からのプレゼントスキル

★全言語習得

★厄除け

亜神稔司からの信頼 50%

【100%になると自由に外界を往き来できます】

★★★★★★


「50%の信頼を高いと評価するか、低いと評価するか、微妙かなぁ?」

フーリエンさんが、笑う。

「まだ、会ったばかりだもの。ゆっくり関係を築けばいいさ!……今夜、ウチで飲まないか?」

「ごめんだけど、フーリエンさんは男?女?どっち?」

「チッ、引っかかんないか!ホダカ、私以外にそれ聞くと血を見るよ?私は女さ。精霊はエルフにモテるから男でも気をつけな!」

ゾゾォー!

「ふ、フーリエンさん、風避けになって!今夜お酒飲もう!」

フーリエンさんが大爆笑した。

「いいさ、シンジ様につまみを作って貰おう。おいで!」


しかし、その日の夕食が終わった途端、野菜を初売りして来た実李が稔司に吠えかかった。

「稔司、お前が作ったケチャップなのに、何故自分が売りに行かない!臆病者!」

うん、それは俺も思った。臆病者は言い過ぎだけど、何でなんだろう?

すると、怒り狂ったレニヴァルが実李を思い切りビンタした。

「痴れ者!そんな事も分からないで眷属になりたいとは力を得たいだけではないか!!バカーーー!」

店から走り出たレニヴァルを稔司が追いかける。

フーリエンさんが実李を手当てする。実李は口の端が切れていて氷魔法で冷やして貰うと頬の腫れもましになった。

フーリエンさんは治療が終わると「今日は帰る」と言って店から振り返りもせず出て行った。

 翌朝になっても誰も帰って来なかった。

俺は一晩中起きてても平気な身体になったので、とりあえず実李を寝かせた。

 何であんなに皆が怒ってたのか夜中俺達2人で話し合ってみた。

行かなかったんじゃなくて、「行けない」から皆が怒ったんじゃないか?という結論にたどり着いた。

 何故「行けない」のか?「ダンジョンマスター」だから?

 そこで朝になり、実李を寝かせたが、実李が弱ってる事に気付いた。指先が透明化している!

 マズイ!眷属にもなってないのに精霊化が始まった!主無しは暴走して個を忘れ、空気に溶けてしまうらしいので、俺は焦る。

このままでは実李を失う!

稔司を呼ばないと!店の玄関から出ると広場はいつもと一変してエルフ達が正装でキャンプファイヤーしている。

この暑い中、異様な雰囲気に飲まれた俺はエルフ達が実李の部屋に入って行くのを許してしまった。

裸に剥かれた実李の身体はもう腕が透明化していていて、俺は今から始まる何かに怯えて実李の身体を抱え込む。

里長のイチジュールが俺の抵抗を押さえ込むと実李を抱き上げてキャンプファイヤーまで持って行った。

そして実李を投げ入れた。

「アァアアアアアー!!」

叫んでいるのが自分だと気付かなかった。

ただ、喉が渇いていた。


********side稔司


「市場に行ったから、実李に完全に邪な気が入った。シンジ様、浄めたら眷属にするしか、実李を実李で居させてやることができない。

泉で禊ぎを。レニヴァルがやり方を知っております」

「……人間に戻すことは出来ないのか?」

ヨークヴァルさんは眩しそうに目を細めて俺の顔を見つめた。

「異界から渡ってこちら側に残った時から、生まれ変わっているのです。ユーバリン神様がシンジ様の眷属にと望まれたので力の一端として実体化していただけです。つまりは、このままでは、アンデッド化します」

俺の腹がくくれてないから、実李を欠けさせそうだと。

「わかった!禊ぎをしてくる」

「お早いお帰りをお待ちしております。シンジ様」

ヨークヴァルさんに土下座されたり様付けで呼ばれる日が来ると思ってなかったな。

眷属が付くって、そんな大ごとなのか。

神域もりへ足を踏み入れるといつもと違う。

いつもより神聖な空気が森を満たしている。

泉に到着するとギリシャ神話の神様のような服を纏った数人のエルフ達が泉を囲んで弓の弦を弾いている。レニヴァル君が泉の手前で待っていて俺の服を脱がせて皆と同じ正装に着替えさせる。

「無になって泉に身を任せて下さい」

頭を空っぽにしろって事?了解した!

仕事中にランナーズハイな感じになる事だろうと位置付けて俺は頭を空っぽにした。

するとものすごい量の情報が流れ込んで来る。これは堪らんと正気に返ること何回か、夜明け前に膨大な神としての知識と力を手にしたのを実感した。

今までは「お試し」期間だったのだ。

99の神の一柱として創造神ユーバリン様の直轄地の一つであるヴァルヴェールの森を任された今、自らの眷属を増やして神域もりを本来の精霊溢れる場所に戻さなければならない。

レニヴァル君が泉から俺を引き上げる。

服は自然に乾いている。

「御髪を整えますから」

「大丈夫。今は実李のことが先、先に行く」

大気に溶けた私は次の瞬間、里の広場のキャンプファイヤーの前にいた。

浄めの香木の火にあぶられている全身が浄められた実李を眷属に下して力を分け与える。

実李の言霊により果実の木を育てる能力ちからを。

 本人の意志にそい、清浄な水を司る水の大精霊の地位と力を与えた。

ユーバリン神から預かったあらゆる魔除けのお守りを首に掛け、浄めの火から出す。

兄の穂高が、顔中で泣きながら実李を受け取る。

「穂高さん、神域もりの泉に浸けておいたら、2~3日で目覚めるから、連れて行くといい。説得は任せた」

「ありがとう!稔司」

「ヨークヴァルさん、里長。しばらくダンジョンから出ないので、里の留守を頼みます」

フゥ~、やれやれ。第一段階修了?かな。



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