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ダンジョンマスターの眷属① side実李

 「異世界半端ねぇ!見ろよ実李!ウサギに角生えてるんだぜ!」

四男の穂高がはしゃぐはしゃぐ。

「…お約束だろ?それぐらいではしゃぐなよ」

 只今、エルフ達50人程と荷馬車に収穫して袋に詰めた野菜をエルフの里まで輸送中。ダンジョンから出て5分くらいで穂高は猿ぐつわをされ、手足を縄で縛られて荷車に転がされた。

 こんなに魔物のいる森でうるさいからだ!バカ穂高め!

 護衛してもらうって、稔司が言ってただろ?!

警戒して進むにしては速く歩くのでバテてきた僕をエルフのおじさんが背負って進む。

 他人にオンブしてもらうのって、子供時代にお父さんにしてもらって以来だな。

 異世界こっちは春ぐらいの陽気なんだな。日本じゃ猛暑なのに。

なんて、思ってたら【干ばつ】という言葉がぴったりとはまる、土ぼこり立つ村に入った。村の規模としては大きくあっちこっちに合掌造りの家があるが、木や草さえ生えて無い休耕地に下唇を噛み締めた。

 馬鹿なのは僕だ。

何が、異世界転移してこっちに住むだ!

何でじいちゃんが呼ばれたか、ダンジョンで何で農業してるのか、面白がってた僕の馬鹿野郎!!

このエルフ達の苦闘の日々と努力を思って涙が出て止まらなくなった。

「うあぁああああ」

エルフ達が笑顔で野菜を指差す。僕を代わる代わる頭や背中を撫でて、今度は泥川を指差す。

水までこんなに濁ってる!

病気の素だ。

あやされてる内に日本語で「青空」と表札が出てる里の中の古民家に着いた。

僕を背負ってるエルフのおじさんが稔司を呼んだ。

 僕はエルフのおじさんの背中から下りて、やって来た稔司に決意表明した。


「僕をお前の眷属にしてくれ!」


真剣に言ったのに稔司は微妙な顔をして首を傾げるとエルフのおじさんと話始めた。こっちの世界の言葉だからサッパリ意味が分からない。

 稔司の表情が無くなり、同い年なのに何か気圧された。

その頃には穂高も拘束を解かれていて、僕と同じように里の現状に強張った顔をしていた。

「実李…。眷属ってどういう意味だ?」

「ちょっと、それについて話そうか?実李くんと穂高くん。レニ***もおいで」

 何か、稔司怒ってる?

エルフ達の中でも際立って美少年な同い年くらいの子が家の中から出て来た。

家の中の板張りの床のたくさんイスとテーブルが置いてある4つの席があるテーブルを囲む。レニ***がこぼれんばかりの笑みでプリンの乗った皿を僕とレニ***の前に置いた。

木のスプーンを稔司に差し出されて受け取る。

稔司はレニ***に何か言うと僕の方を見た。


「ん~、何から説明したもんだが。…結論から言うと実李くんの言う眷属とする力が亜神であり、新米のダンジョンマスターである俺にあるかどうか、分からないから、エルフの里長に俺の上司に聞いてもらってるのと、眷属になったら地球への帰省は出来なくなる可能性が高いけど、その覚悟が実李くんにはあるのか?また、未成年者である実李くんの家族はそれについて同意してるのか?

2ヶ月、時間をやるから穂高くんとも良く話し合って決めなさい。一時の情に溺れたり、他力本願で力を望んだり、夢と現実が区別が付かなくなったりしてるようじゃ、後で俺が困るからその辺、白黒付けてくれる?

言葉はレニ***君が教えてくれるって。穂高くん、ちょっと来て。あぁ、偉そうかもしれないけど、俺、君らよりちょっと年上だからね」

 僕は稔司の言い様に腹が立ったが、黙ってプリンを食べた。

………何だ?!このプリン!!めっちゃ美味しい!!

レニ***を見たら夢中で食べてる。

 僕も子供らしく甘味を楽しんだ。


プリンを食べたら、稔司に昼食をごちそうされた。ただの味噌野菜炒めが何でこんなに美味しいんだよ!

穂高の情報によると、稔司はじいちゃんが野菜を卸していた高級ホテルのレストランで働いていたコックさんで、高級ホテルグループの御曹司だったが、家を出て店をやろうと思ったらトラック転生してしまったようだ。

まだ、34才だったらしい。

アンシャルムというこの世界に来てダンジョンマスターをしてるのは、成り行きらしく毎日手探り状態らしいので、異世界転移に夢見る不登校児童を押し付けられても困る。と、はっきり言われたそうだ。む、か、つ、く!

明日はエルフ達で近くの街に今日収穫した野菜を売りに行くそうだ。

「良い機会だから、いろいろ見てこい。俺がいろいろ言うより勉強になるだろう」

え~らそうに!!稔司のクセに!


「せんべい布団、ハンパない…」

「異世界なら当たり前、って今日は言わないんだな実李」

「うるさい!穂高ほばか

洗顔と歯磨きを持って来た木桶の綺麗な水で済ませる。

 それを見てレニ***が怒っているのを稔司が宥めているようだ。

 何が起こったのかと息を詰める僕らにため息交じりに稔司が言う。

「あのな、これ、この後。俺とレニ***君が使うんだよ。これじゃ、さすがに抵抗あるから、川で水汲んでくるわ。明日からは何とかしろよ?」

「先に言えよ!」

そう言ってすっきりした僕を異物扱いする稔司の視線に(お前もか!)と胸の燠火が燃える。

僕は異世界でもディスられるのか?!


ムカつきながらレニ***の案内で里の入り口に行くと体長10メートル以上の巨鳥が伏せている。レニ***が生肉をやってる間に昨日オンブしてくれたエルフのおじさんが巨鳥の背中に引き上げてくれる。

レニ***も助走をつけて背中に跳びのった。

「すごい!レニ」

「***だから、**」

おお!聞き慣れて来たぞ!もっと話そう!

某外国語流し聞き訓練CDは3日程度の訓練で話せるようになった賢い僕!リスニングには自信がある!

巨鳥の名前がロードシュガーというのと、昨日僕をオンブしてくれたエルフのおじさんはレニ***のじいちゃんでヨーク***さんだというのと、売るときに手伝って欲しい、やった事がないからと、言われた。

赤いソースの瓶詰めを売りたいらしく、中味をスプーンでひと掬いして手の平に置かれた。

 思ってたとおり、ケチャップだった。

すんげー美味しい!……けど、作った本人は性格捻じ曲がってるんだよな、けっ。

 これが、後ろにある木箱いっぱいに詰まってるのかと思うとやる気が無くなる。

はて?な~んで野菜をそのまま売らないわけ?

 疑問は市場に着いてからすぐにわかった。

穂高は行かないっていうから野菜の世話を頼んで来たけど、愛想の良い穂高が来るべきだった、と売り始めて30分経たない内に思い知った。

 地球産の野菜を初売りするのだ。

こんなに美味しいのに、何で売れないの?!

他の露店には淡い黄緑色の野菜しかない。これは丸いとか、細長いとか、わずかの差の同じ品種の野菜だった。

 しかも、何かかなり、酸っぱいとか、固いとか、苦いとか、食べ頃ではない。

 熟すと育てるのに失敗した瓜みたいなぼやけた何の味もしない実になる。

……どうなってんだよ!この世界の食糧事情!

1時間経った頃、ヨーク***さんがコッペパンに切れ目を入れ焼いたウインナーをはさみ、挟んだウインナーにケチャップをかけて配り始めた。ええと?1本丸々渡すの?

ジェスチャーと覚えたてのアンシャルム語で聞いてみる。

「それ、多く、ないか?」

「いっぱいあるから大丈夫じゃろう?」

「じいちゃん、試し売りは30本だけですよ!」

『試食販売か?!もっと早く言えよ!』

僕はヨーク***さんからホットドッグを奪うと1本を7つに切って、1つづつレニ***に渡す。

「え?これぐらいでいいんだ…ありがとう実李さま!」

レニ***が、試食させ、ヨーク***さんが販売する。僕は試食のホットドッグをただ切るだけ。

役に立ったかどうかは微妙な感じ。

野菜の説明に調理方法を付け足すとよく売れるようになった!

稔司が来ればいいじゃないか!

何やってんだよ!アイツ!


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