2章11話 裁きと晴海の眷族化
気が付いたら、37階層が出来ていた。
浄化の泉のプレゼント付きで。
とりあえず、天界の神々に配れるくらいフロランタンサブレを焼いてお悩み相談箱から送っておいた。
パティシエ見習いの青年エルフ達が一生懸命手伝ってくれたから出来たような物だ。
彼らは店を開きたいらしくて毎日アイスボックスクッキーを大量生産して、冒険者達に売って資金を貯めている。良い子達だ。
店になる建物はたくさんあるんだけど、穗高君から許可が下りないか、買い取る資金が無いか、だけだ。
里開きして1週間が過ぎた。
里の恵みを勝手に食べる奴らには声が出ないように罰を下した。
魔法使いには死活問題だ。
過去にさかのぼるが無詠唱が出来た有名な魔法使いがいたらしい。
その魔法使いは自分より弱い魔法使いを殺す喜びに目覚めていろんな悪逆非道なことをして、ちょっと調子に乗って一国を炎の魔法で焼き尽くした。
その国には緑の手を持つ民ドライアドがたくさん住んでいて緑豊かな国だったものだから、大地の女神ハラハナニア様の怒りを買い、その魔法使いは立派な樫の木になり斧で切られてもノコギリで引かれても釘で打たれても、薪になって燃やされてもまた再生し永遠にその痛みを感じ続ける天罰をその身に受けた。
「それ以降、言霊無しでは、魔法が使えなくなったのです!ナイス判断です!稔司様」
「魔力が増える果物を買えばいいのに、盗んだからいけない」
レニヴァル君とケティアル君が話しているだけではない。
里で飼っている日本産の地鶏の卵をくすねて売ったバカ野郎が少なくても20人いるのだ。
ロクシターナさんが、里長として盗みを働いた者の利き手の親指を切り落とす罰を実行する前に里から逃げ出した。
何故かエルフ達が笑っていた。
「私共も魔物ではありませんから、罰金刑にしてもよろしいですよと言ったのに里から逃げ出すなんて、これは不幸な事故ですね」
メリーマンさんが不敵な笑みを浮かべる。
「ここら辺は中級冒険者達が苦戦するような魔物しかいませんし、歴戦の強者なら大丈夫ですよ」
何故かアクセサリー職人のリーダロッテさんがニヤニヤとその後を続ける。
察し。死んだな、そいつら。
他にも薬草畑に入って勝手に収穫後売却。そいつらはポーションが効かない体に作り替えてやった。ゼクト神の教会でお布施をたくさん払って治して貰えば~?
「このダンジョン、薬草無いんですだから仕方なく…」
「里の畑から盗んだ、と。このダンジョンにも薬草はあります。5階層までは、ふんだんに生えてますが?」
「そんなの20~30人が集めたら無くなるに決まっているだろ?!何時までも生えてる訳無いだろう!!それに初級冒険者の俺達がレベル5以上の魔物がいる場所に行けるわけ無いだろう!!お前ホント何にも知らねえのな?!バカだろう!」
ああ、コイツらどさくさ紛れに入り込んだ初心者か。
「おかしいですね?あなたたち、もう少しで中級冒険者になれる初級冒険者なんですよね?」
するとバカにしたように鼻で笑った。
「そんな奴らがこんな所に来る訳無いだろう?ハッ、何にも知らない毛も生えてないガキがよお!うぜぇんだよ、お前!!」
ソイツは俺に殴る蹴るの暴行を加え、お茶を入れる為に席を外してたプライルに5階層の薬草の群生地に置き去りにされて、ガイアドラゴンに食い散らかされた。なかなかのスプラッタだった。
プライルは自分への罰として1週間の断食を課したのだが、俺は自分の油断でボコられただけなのでプライルの嫌いなピーマンを使った青椒肉絲をご飯とかき玉スープを付けて差し入れしたら、ものすごい勢いで食べた。
「ピーマン好きになった」
「よかったな」
「罰になってません!」
「いいの!俺が結界張ってりゃよかっただけなんだから、プライルが罰を受けるのはおかしい」
プライルに睨まれたがロクシターナさんが来てプライルを部屋から出すと事件は終わりを迎えた。
ちなみに古の泉をダメにした奴らはユーバリン神様が塩の彫像にした。
ちょっとした騒ぎになっている。1階層でもいろんな所で塩の彫像が見つかっていて、何をした天罰か冒険者達が慄いているのだ。
神域ダンジョン冒険者ギルドのギルドマスターが連日ロクシターナさんに謝罪と何の天罰かを確認してるようだ。
さて、晴海さんだが、今浄めの炎で浄化中。
実李君の時は半日近くかかったけど、晴海さんは、それ程浄化に時間が掛からなかった。
思うにピュアな人だったからだろう。実李君がピュアじゃないとかじゃなくて、地球にどれだけ未練があるかなのだが、無いらしく儀式はサクサク進み浄めの泉に体を沈める。
後は浮いてくるまで待てば良い。
エリックとカリュンが見張り役だ。
後は政美さんの寿司屋の場所だが、大きな街で海の魚が獲れるところが良いという。
うん。貴方、アンシャルムで最強の戦士だし、好きに生きれば?
しかし、ロクシターナさんが待ったをかけた。
「この世界の海では食べられる魚は絶滅しました。魔魚しか住んでません。ホダカ様が調査した所、煮ても焼いても毒があって食べられないし、生で食べたら多分死ぬそうです」
エルフ達が寿司を否定的な目で見てた訳が分かった。
それでも政美さんは諦めなかった。
「稔司、ダンジョンに地球みたいな海作ってくれや!」
「う~ん。やって見るけど、上手く行かなかったらごめんなさい」
38階層を創り砂浜、磯、港を創造する。海は日本近海を思い浮かべそこで獲れる魚やら貝、いか、タコ、イセエビなんかを考えてたら、いきなり、誰かが助けてくれた。
寿司が握れる魚をドンドン海に放流して行く。
「マグロは養殖にしましょう」
聞いたことのある声がすぐ後ろからした。
振り返るとさっき浄めの泉に沈めたはずの晴海さんだった。ちゃんと精霊になったか、鑑定。
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名前 晴海(海の大精霊)
レベル 39
スキル 全言語翻訳レベルMAX/水魔法レベルMAX/浄化レベルMAX/寿司職人レベル8/漁師レベル1
特殊スキル 凪
☆プレゼントスキル☆
海神ラメールの加護
☆海鮮類育成
【自分の知る海の生物の生命育成が可能。「美味い寿司喰わせてくれよ!」なお、稚魚の放流にはお金が必要です!】
時空神マイターシンの加護
☆ストレージ
【いっぱい荷物を持ち運び出来ます!寿司魚専用!!】
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なるほど。昨日の報酬の1億円を渡すか。
マジックバックに入れないとな。
ストレージは魚専用らしいし。
その時、神気が砂浜に降り立った。
ドワーフの姿をしてるが見上げる首が痛くなるくらいの巨神が自分が片手に持っていた家屋をそっと砂浜に置いた。
【皆から昨日の食事の礼だ。政美、受け取れ】
「おお?!俺の店!!ありがとうございます!」
何で「雪柳」が?
不思議に思う俺にはユーバリン神様からの手紙。
【昨日はごちそうになったね~。金目鯛の煮付け、美味しかった~。
実はね、雪柳は晴海の嫁の作った借金の抵当に入っていて、あと1週間足らずでコワイ人達の物になるはずだった~。
昨日の夜一家全員で夜逃げしたから店持ち帰ってきたんだ~。どうせ、壊す予定だったからいいんだよ~。
ま、そういうことだから、大事にしましょう~ 創造神ユーバリン】
毒嫁め。滅びろ!