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2章5話 とある初級冒険者の奮闘記

リップはエルフの里でどうなるんでしょうか?


「ランメル草3束、大銅貨1枚と、銅貨8枚。ブッシュウルフ26体で銀貨2枚と大銅貨6枚とブッシュウルフの報告の報奨金銀貨5枚で、銀貨7枚と大銅貨7枚、銅貨8枚の買い取り金額になります。お疲れ様です!リップ君!」

 はあ?ブッシュウルフって、そんなに安いのかよ!必死こいて持って帰って来たのに、バカにしてる!

 でも、報奨金はよかった!

何食べようかな?

受付嬢のマクアさんからお金を貰う。

踵を返し、冒険者ギルドから出ると中央広場の屋台まで走る。

その前に立ちはだかるゴロツキ達。

「ヨウ!リップ。今日は稼いでたなあ?まあまあ、ちょっと俺達に寄付してくれよ。な?俺達、仲間だろう?ヒッヒッヒ!」

腰に下げてたマジックバックを盗られた。

「返してくれ!!」

ブッシュウルフを30体入れたらいっぱいになるくらいの容量しかないケチなマジックバックは1年前山賊達に殺されて亡くなった両親の形見だった。

「へへへ~!ほら、今日の稼ぎを全部だせよ!出さなかったら、このマジックバックは闇市に流れる事になるなぁ~」

オレは悔しさで顔を歪めながら、ゴロツキ達に今日の稼ぎを渡してマジックバックを返してもらった。

「ヒッヒッヒ!銀貨7枚あるぜ!酒と女だぁ!久しぶりに息抜き出来るなあ!」

「リップゥ!そのマジックバックで俺達にまた寄付してくれよ!ギャハハハ、……何だよ?お前」

いつの間にかゴロツキ達の行く手に一人の青年が立っていた。

「ゴミはちゃんとゴミ処理しないとな」

石畳が割れてゴロツキ達を大地に引きずり込んでいく。ゴロツキ達は驚いた顔をしたまま大地に飲まれその上に石畳が乗って通りにはそれをしただろう青年とオレだけが立っていた。

青年が近づいて来る。

黒髪、黒い瞳。壮絶な程の土魔法使い。

「すまない、遅くなった。カルロスとユーリシアの子よ」

「……な、何で父さんと母さんのこと、知ってるの?」

青年は困ったような顔をしてオレの頭を撫でる。

「里に帰ろう?おじいちゃんとおばあちゃんが待ってる。苦労させたね。もう大丈夫だよ。俺は穗高。稔司の眷族だ」

この人が父さんと母さんが言ってた「ホダカ様」。

何でもっと早く来てくれなかったのとか、いろいろ込み上げる物よりも、すごく安心して脱力してしまってオレは泣いた。

 ホダカ様はオレを抱っこすると高級宿樫の木亭に連れて行き、オレを風呂に入れて、遠慮なく洗った。耳も洗われてイヤだって言ったのに、何回も丸洗いした。

 泣き疲れて、ふかふかのきれいなベッドでうずもれるようにして眠った。


翌朝、香ばしい香りで目が覚めた。

「久しぶりに作ったから、美味いかどうだか心配だけど、お腹空いてるだろう?食べて」

ホダカ様は、変態だけど、優しい。

「いただきます!」

「よしよし。いっぱい食べろ」

しかしながら、パンのおかずばっかり!大理石のテーブルの上に並び切らないくらいある。まだまだたくさん、焼き立てパンが部屋の厨房からどんどん運ばれて来てホダカ様にお願いした。

「借りてる宿の人達に持って行きたいです……」

「宿も引き払わないといけないからいいぞ」

「それから、ロクシターナ様宛てに手紙を両親から預かってます」

「それは、里まで持っていてくれ。マジックバック持ってないしな」

 そうなんだ。

「リップは里に行くのはイヤか?」

「……元々、行くつもりだったから、問題無いけど。……耳を触ったのはホダカ様だから、ホダカ様が責任を取れよな!」

 多分、オレが汚かったからだろうけど、その昔、シンジ様が責任を取ったようにホダカ様には自分で責任を取って貰う!

ホダカ様は、矢継ぎ早にオレに質問をした。

「神官見習いになる覚悟はあるんだろうな?リップは何才だ?男に成る前に自分の股のを切り落とさなきゃいけないんだが、それでも俺がいやらしい目的で触ったというのか?」

ち○こ切り落とす?!

イヤだっ!オレ、母さんみたいなお嫁さんもらって自分の子供に父さんみたいに剣と弓を教えるんだから!

「ホダカ様は、オレの耳にさ、触らなかった!オレが自分で洗った!!」

ホダカ様は、ニコニコしてオレの頭を撫でた。クソ~~~!覚えてろよ!

「リップは、帝都で宿引き払う他にやりたいことあるか?」

「魔物の友達連れて行きたい!オレの狩りの相棒なんだ!」

「……リップは、テイマーか?」

「ううん!テイムしてる訳じゃない!……だから、街に連れて来られないの」

「そっちが先だな。食べたら行くぞ!」


◆◆◆

帝都近郊の森に来たオレはいつものように相棒への手土産にホーンラビットを弓で2匹仕留める。

「おお!さすがエルフ!お家芸だな!すごいすごい!」

 ホダカ様に褒められて誇らしい気分で胸を張る。

口笛を吹くと相棒は木の上からオレに巻き付いて来た。

「カロン、お肉だよ」

「それってブラックラインサーペントだろ?しかも名前が死神かよ。似合い過ぎてて笑えんわ」

カロンは大きいけど大人しい大蛇だ。それにとても綺麗で肉が美味しいので常に金目当ての冒険者に狙われている。

 でも、敵には容赦しないから「黒い死神」と呼ばれている。

「カロンはリップが引っ越すけど付いて行くか?」

カロンは口にくわえていたホーンラビットを取り落とすくらい、驚いたらしい。

カロンはオレを軽く締め付ける。

「イタタタダ?!か、カロン死ぬ!苦しい!わかった!連れてくから!骨が折れちゃうよ!!」

細長い舌でチロチロ顔を舐められて体が軋むほど痛いのに嬉しいという妙な感情を味わうのになった。

 ホダカ様はオレ達から目を離して自分の目の前をジッと見ている。

「おい、カロン!リップにテイムされるなら連れて行ってやる」

 ホダカ様が言った途端、左手の甲がピカーッと光って光が収まるととぐろを巻いた蛇のアザが出来ていた。

「ヨシ!テイム出来たら里に着くまで小さくしてやる」

「出来るの?!そんな事」

「ああ、稔司が力ちょっと貸してくれる、って言うから冒険者ギルドで登録しないとな」

ホダカ様は素早くカロンの額に触った。

 結果カロンは革ひもくらいの赤ちゃん蛇になった。

「か、カロン?!こ、これ、ホントに元に戻る!?」

「戻るよ。心配しなくていい」


冒険者ギルドに行くと昼間なのに冒険者達でごった返していた。

 ホダカ様に引っ張られてカウンターにたどり着くと、受付嬢達が、忙しそうに冒険者達に叫んでいる。

「どっちに行くかは任せます!ただ、帝都のスタンピードが先です!それを頭に置いた上でエルフの里の神級ダンジョンに挑むかどうか、決めて下さい!」

 そりゃあそうだよな。森に入った途端、ブッシュウルフがあんなにいるんだもの。

 エルフの里に神級ダンジョンが出来たからって、ほいほい行けないだろ。

ふと、隣のホダカ様を見上げると青い顔をしていた。

 ひょっとしてエルフの里の神級ダンジョンもスタンピードが起こりそうなの?!

「……ホダカ様?」

不安になって、呼びかけると、ハッとしたようにオレとカロンの従魔登録をすませてくれた上、カロンの自動調節機能付き魔導具の金貨3枚もするアクセサリーまで買ってくれた。

 それから、オレの借りてる宿に行きホダカ様が作ったパンの半分以上を宿の女将さんのマリーさんにあげて、お別れの挨拶にした。

「帝都に帰って来たら寄るんだよ?元気で!」

「マリーさんも、これ以上太っちゃ体に悪いよ?」

ホダカ様にゲンコツされた。

「失礼しました。レディマリー。今までリップの世話ありがとうございます。また、時間が取れたらちょくちょく来ますね。行くぞ!リップ!」

 ホダカ様は、脳筋に違いない!

にじんだ涙をカロンが舐めて慰めてくれる。

父さんと母さんが帰りたかったエルフの里に期待と不安を胸に向かうのだった。

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