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2章4話 帝都での交渉side穗高

重要な案件の使者兼交渉役になった俺、土の大精霊穗高は、土中を進み大陸横断して帝都サンヴェルまで半日でたどり着いた。

帝都サンヴェル前の森で顕現し、検問をギルドカードで通り抜ける。

それからは、冒険者達がたくさん乗ってる乗り合い馬車で移動する。

人化してると何かと不便だ。

 特に絡まれた時。

「お前、魔法使いなのに鍛えてるな?今日は得物はどこにしまってんだ?ここか?!」

「どこ触っている?殺すぞ」

威圧を載せて睨むと男は大人しくなった。

犬耳の男性冒険者が面白そうにそれを見物していた。茶色の尻尾が少し揺れている。

 こいつ、強いな。地味だけどいい武器と防具付けてる。

「どうした?若いの。私に用か?」

 驚くほど直球。こいつにしよう。

「グランドマスターに急ぎで会いたい。アンタなら何か連絡方法知っているんだろう?俺はタカホという。一応、上級冒険者だけど、ここ20年ほど帝都まで、出てこなかったから今のグランドマスター知らないから、案内してくれないか?謝礼はする。とりあえず前金でこれだけ」

 最近鋳造された、帝国新貨幣で銀貨1枚をその手に乗せる。大体10万円相当だ。

犬耳冒険者は素早くマジックバックにしまうと冒険者ギルド前で下りず、乗り合い馬車の発車場まで俺を連れて戻り、貴族街行きの馬車に乗り換える。

車内に2人きりになってから犬耳冒険者から自己紹介があった。

「最近、特級冒険者になったばかりのアメイだ。周りに言ってないから、人目がある所では名乗れなかった。許してくれ。で?何の用だ」

「エルフ達が秘密に所有していた中級ダンジョンが、突然、神級ダンジョンになってスタンピード手前だから、恥を忍んでお願いに来たんだよ」

「……うわ、最悪。でも、疾風迅雷のロクシターナがいるだろ?今まで通り自分たちで何とかならないのか?」

「グランドマスターに会ってから、そこら辺は話す。何故、秘密にしてたかも」


貴族街に入ってそれ程経たない内に馬車は一軒の結構、豪奢な屋敷の前で止まった。

 馬車を降りて乗車賃を馭者に払っていると、見覚えのある華奢な老人が、玄関から矢のように飛び出して来た。


「タカホじゃないか!やっとお祝いに来たか?!遅い!遅い!!私がグランドマスターになってもう4年も経つのだ!ほら、お前が好きなだけドルガも触らせてやる!入れ!入れ!」

「ミナス、久しぶり。エルフの里からの使者として冒険者ギルドのグランドマスターに会いに来た。ドルガを構ってやる暇は無い」

やっとミナスの口が閉じた。

顔に刻まれたシワを深くして、舌打ちした。

「厄介事か.?まあ、良い入れ!アメイも一緒に聞け。はぁ~、また書類が増えるのか。滅入るな」

小さなミナスの後に付いて長い磨かれた廊下を歩き応接室のようなリッチな部屋に入った。メイドが紅茶を入れて部屋から下がる。

ミナスはドアが閉まったのを確認して話し始めた。

「里のダンジョンがまたスタンピードになったのか?」

ミナスは20年前、帝国の7大都市の一つ、ムーンソウルのギルドマスターだった。

名うてのやり手マスターで良くも悪くもあった。

その頃、エルフの里のダンジョンがスタンピードの真っ最中で狩った魔物の処分に里の皆が困っていた。

 そこで穗高がムーンソウルの冒険者ギルドにマジックバックをありったけ預かり、それに詰めて大量に魔物素材を売りに出していたら、ギルドマスターのミナスの耳に入り、出所を明かさないと買い取らないと脅されて、渋々、エルフの里のダンジョンが何年もスタンピードになっているのを明かした。

 ……あの時、ミナスが根掘り葉掘り事情を聞いてくれなかったら今のエルフの里は無い。

 大陸トップのビーストテイマーのミナスは神域に神の許し無く手を出す怖さを知っていたし、スタンピードが何年も続いているなら、支援しよう、とも言ってくれたので、遠慮なく魔物肉を加工する業者を探してもらったり、燻製肉の加工の工場を資金を渡して建ててもらったり、した。

 俺には親切で優しいおじさんだった。

エルフ達には里開きしろと、しつこく言ってる嫌われ者だったが。


「中級ダンジョンが神級ダンジョンに進化したんだよ。スタンピードが起こる前に俺達の信仰する神様からエルフの里開きせよ、と託宣があってね、冒険者と冒険者ギルドの設立と武器と防具類の店と冒険者の御用達の店なんかの選定を頼みたい」

「わかった!とりあえず今から出発出来る特級冒険者を集める!」

「里の中に今、ギルドとか、武器と防具の店なんかの建物を建ててるから、商売道具を持って来てくれればいい。神級ダンジョンとはいえレベル4~だから中級冒険者達にも声を掛けてくれないか?ミナス」

「ほう、そうか!数がいると、いうことか!わかった任せておけ!アメイ!ひとっ走り冒険者ギルドまで遣いをしてくれ。指示書を書いて来るから、その間に夕食を楽しんでくれ」

「「ありがとうございます」」

ミナスが出て行くとアメイから早速質問があった。

「ミナス様は知ってたけど、秘密にしてたのはどうしてなんだよ?」

「エルフの里自体が神域だからだ。その中にある最も神聖な場所がそのダンジョンだからだ」

神域と聞いてドン引きしてるアメイ。こいつ神域で何かしたか?

「性的な事したら、大事な所が無くなるから、衆知徹底しておけよ?あと、エルフ達に危害を加えたら問答無用で天罰下るからな?」

ノックの音がして話を止めた。

 メイドに食堂に連れて行かれて食事したが、稔司の料理を食べた後じゃ残飯以下だ。

夏野菜のラタトゥイユに、ゾーリン茸のクリームパスタ、思い出すだけでご飯が3杯は食べられるかもしれない!

 アメイが不満げに唸る。

「大体、そんな所に行く奴いるか?」

「1ヵ月は宿と食事はただでいい。エルフの里が持つ」

「マジか!?」

おうおう、テキメン効いたな。

 さすがロクシターナ。冒険者を墜とす方法を良く知っている。

「先着1000人位までだがな。それ以上の奴らは宿の横で野営になるが、食事の用意は必ずする」

「初級の奴らでも行ける!ありがたい!」

「初級かぁ。ソロは無理だな。死ぬぞ?一番弱いのでゴブリンだけど、レベル4からだからな。初級冒険者にはキツいぞ?」

「駆け出しには声掛けるかよ!ある程度使える奴らにするに決まってんだろう?!」

「……わかっているならいい」

こいつが調子に乗るような奴なら切らないといけないからな。

 食後のお茶を飲んでいると、ようやくミナスがやって来てアメイに帝都冒険者ギルドマスター宛ての手紙を渡した。

「ごちそうになりました。では、失礼します!」

「うむ、頼んだぞ!」

「アメイ!受け取れ!」

2枚の銀貨を投げるとアメイはろくに見もせず空いた手で受け取り流れるような所作で食堂から出て行った。

ミナスが手招きしてさっきの応接室に戻って、商人達が来るまでミナスのグランドマスターへの立身出世物語を聞き、お茶を濁す。

「タカホよ。そう言えば案内してくれるのはいいが、エルフの里はムーンソウルの近くなら馬車でいくら急いでも1ヵ月かかるぞ?

その間、里は持ち堪えられるのか?」

「無理だな。だから、初回の冒険者達には反則技を使って里まで持って行く」

「ドラゴンか!?」

「アホか!!そんなデカいドラゴンが帝都に来てみろ!大騒ぎだ!転移だよ!」

ミナスはビーストテイマーだから、そんな事考えたんだろうけど、アホ過ぎる。

「勇者が協力してくれるのか?!」

「いや、里の神様が一番エラい神様にいろんな力とか物を献上して1回だけ冒険者達を運んで貰うわけよ。反則技だから、これっきりなんだよ。だから、遅くても5日しか待てない。何とか商人達も荷物をすませてくれるよう言い聞かせてくれ。今から俺は転移する為の陣の用意をしなきゃならないからミナスに後は丸投げする!」

「何ぃい?!タカホ!そりゃないぞ!!」

「俺みたいな若僧が言ったって聞かないだろ?適材適所だよ!頑張れ、ミナス!」

俺はミナスの絶叫を背後に聞きながらミナスの屋敷を後にした。

評価、ブクマ、初めてです!!

お読み下さりありがとうございます!

嬉しくてどうにかなっちゃいそうです!

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