2章3話 ダンジョン再構築
一人、9階層の通路に残されて、ため息を付くと余計に虚しい。
実李君の書いたメモ用紙の続きを読む。
③1階層ごとに魔物レベルを3アップする。
つまり36階層、ここには必要。
最後の階層は稔司の神殿にするように!
④階層が下に行く毎に魔物の数を減らし冒険者達が死なないような仕組みを作り上げる。
例えば、1000→500→250→100→50→10→1
みたいな感じ。35階層は必ず1体だからな!
普通の冒険者達はエルフ達よりかなり弱いから、エルフ達の半分の力が上級冒険者達であるか、どうか、だからな!
人間の冒険者一人は例えると、剣も使えるようになったレニヴァル(100年前)くらいだ!
「はあ~?冒険者ってそんなに強かない?」
マズい!里開きする意味が無いぞ!
慌てて1階層のレニヴァル君の元に転移すると、ロクシターナさんと、お話し中。
「待った!やっぱり里開き止める!」
「「どうしたんですか?稔司様」」
「普通の冒険者がそんなに弱いとは思わなくて!迂闊な提案をした!すまない!!」
2人は顔を見合わせると上品に口元を手で隠して噴き出した。
「もう、穗高様が帝都の冒険者ギルドに行ってしまわれましたよ。人間の冒険者達は総数では少ないんですよ。多種族とのハーフとか、他種族の純血種の冒険者達も冒険者ギルドに加入してますから、そんなに慌てなくて大丈夫です。私達が心配してるのは別の事です」
「攫われるから?」
「エルフの里の中で攫われるような間抜けはいませんし、させませんよ。シンジ様。このロクシターナが里長である内には」
エルフ達は美麗な顔して戦闘狂なのは、よく知っている。
「じゃあ、どうして悩んでるんだ?」
「「ここが神域で、入る為には守っていただかないといけない規則があるからですが、それを大っぴらにすると、神域が穢される恐れがあるからです」」
びっくりした。
「規則ってそんなに大変なのか?」
「いえ、一日二日なら問題無いんですが。それ以上になると、特に人間は欲望を満たすのに精力的に成りがちですし、特に男は何処でも気にせずもよおしたりするでしょう?」
ああな。性的な事か。ん?……そう言えばエルフ達って夫婦でも人前じゃキスもしないもんな。
「いえいえ、シンジ様は何か誤解なさってるようですね。ご不浄の事ですよ!シンジ様が考えてる事は里では禁じられてるのですから」
レニヴァル君が真っ赤になってる。
そうだった!耳に触れただけで大問題になったんだった!
「トイレは決まった場所でしてるんだろ?そこにさせるとか、は、ダメか?」
「私達は見せるつもりはありませんが、唯一子供達から目を離す場所なので、その時を狙っていたら、子供達の将来に関わります!それこそ、レニヴァル様のように相手に全て捧げるしかありません」
うわっ?!覗き見されたら結婚しないといけないのか?!
俺は今更ながらレニヴァル君に姿勢を正して謝った。
「ごめんなさい」
「私は大切にしていただいてるので、謝罪は不要です。……それよりダンジョンの作り替えは進んでますか?」
やぶ蛇だった。
実李君に渡された日本語のメモを見せるとレニヴァル君は一読してロクシターナさんと俺を放ってすごい勢いで会話し始めた。
「セーフティゾーンの考えは素晴らしいです!里長!」
「ボス部屋という概念が良く判らないが、地上まで、転移出来るのはありがたいな」
「ボスというのは、その階層で1番手強い敵という意味があります!この転移陣は一度使ったら、2度目からはダンジョンの入り口からその階層に転移してから探索を続ける事が出来るんですよ」
何だとぉおおおお?!書いてねぇだろ?!
「しかも、ボス部屋にはレベルに見合った宝箱が置かれていて、冒険者達が命を賭けて戦う価値があるそうです!」
何処のRPGだよ!!実李君!ゲームと現実を合体させるな!アアアアァアア!!どうする?俺!!
二人とも静かに盛り上がっている側で内心、汗だくの俺。
レニヴァル君がチラリと俺を見て大きく目を見開く。
「稔司様、ひょっとしてポイントが足りないのですか?」
ギクリとした。
レニヴァル君は花の咲くように笑う。
「焦らなくて大丈夫ですよ。宝箱に入れる予定の物ならこちらで10年前から大陸中の匠に創らせてありますから。スタンピードで得たレベル60までの魔物の素材で作った武器や防具、エルフの里で作っていろんな付与をしたアクセサリーなどがたくさんあります。レベル50までの宝箱に後で私が収納に行きます!連れて行って下さいね?」
俺は無言でレニヴァル君を抱きしめた。
レニヴァル君は俺の背中を擦った。
ロクシターナさんも、俺の頭を撫でている。俺は泣いていた。
みっともない!
「私たちは半人前同士です。頼る所は頼って下さい。ただし、こんなことになるとは思ってなかったのでレベル50以上の階層の宝箱の中身は稔司様が用意して下さい。頑張って植樹してポイントを稼ぐので創造神様にステキな何かと交換していただいて下さい」
ロクシターナさんが年長者らしい安心させるような笑顔で助言してくれた。
「元はホダカ様が稼いでくださったお金ですから、ケチかもしれませんが武器や防具はパーティーに一つでいいでしょう。レベルが低い内には宝石とかの財宝もあった方が日銭に困っているので助かるでしょうけど、レベルが上がるに吊れて武器や防具類が切実に欲しいのです」
現場の人の意見は貴重だ。
「財宝なら何とかなるかも……」
俺のつぶやきに2人のエルフが驚く。
そして最下層36階層には50万ポイントを使って俺の神殿を囲む広大な塩湖と立派な鉱山が出来た。
翌日から、エルフ達総出で塩湖で男達がスコップを、鉱山で女、子供達がツルハシ代わりにピッケルを忙しく動かすのだった。
上げててよかった!ダンジョンレベル!
ただしダンジョンマスターレベルが低いのでそこまで値段の高い鉱石は採取出来なかったが、珍しい水晶系のパワーストーンが山になるほど採れたらしい。
俺にはサッパリ解らなかったけど実李君がアクセサリー職人のエルフ、リーダロッテさんとその弟子達でササッとアクセサリーを作ってお使い魔法で日本に売りに行ってしまった。
ア然である。
1本のネックレスを3000円、パワーストーンの原石は、1つ8000円で売れ、総額4700万円荒稼ぎしたらしいが、産地の証明が出来なかったので半値以下での叩き売りになったと言い、実李君はご機嫌ナナメだった。
貴石や宝石などをオシャレに組み合わせた指輪やネックレス、シルバーのブランドアクセサリーなどの金目の物を大量購入して帰って来た。
3日目はダンジョン再構築。
2階層から作り替えようと思ってたが、魔物レベル1~3の魔物を今回はもらって無いので2階層は草原エリアで魔物レベル4~6のゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンナイト、ゴブリンメイジ、巨大化したホーンディア、スラッシュボアを数え切れない程放った。
早速エルフの子供達が弓の的にしていたのを確認してエルフって子供の頃から戦闘狂だなと思った。
3階層は森エリアで魔物レベル7~10のオーク系のレベルが低い物とゴブリンロードやゴブリンキングの巣を設置した。
その調子でどんどん階層を重ねて一気に35階層まで設置完了してボーナスポイントを100万ポイント消費して結界魔法をMAXまで上げた。
実李君に怒られたのだ。
「セーフティゾーンのレベル5?!はあ?せめて、レベル50までの階層で、完璧に機能するように作り直せよな?!」
そして、レベルの精霊さんにおすすめされるまま、結界魔法をMAXにした。
ダンジョンマスターレベルが上がってるので、そんなにボーナスポイントが要らないらしい。
予想外だったのが、ボス部屋に設置した冒険者用双方向転移陣にただでさえ少なくなったボーナスポイントが消費されたことだった。
他の魔法やレベルアップに使った分に比べると微々たるものだったが、21000ポイントがサヨナラしていよいよボーナスポイントの残りは96000ポイントしかない。
……ヨシ!頑張れ、俺!