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2章 1からの始めよう

☆☆☆sideレニヴァル

今日もいい天気だ。

そよぐ風に稔司様の気配を感じるこの頃。

100年前の奇跡で稔司様は小さな石になり、ダンジョンは入り口が閉じたままだったけど今から28年前、閉じてたダンジョンが開いた。


一瞬皆、喜んだが、隙間から次々出てくる魔物退治に追われる100年ぶりのスタンピードの始まりだった。

エルフの里の者が朝、昼、晩、3交代制で

15年前まで男女関係無く大人全員で対応していた。

稔司様の家から声がかかる。

「レニヴァル、昼飯だぞ?何時までも彫像化してないで食えよ!稔司も心配するぞ」

彫像化…。祈祷してただけなのに。

100年前と同じ姿の実李様が木のカフェオレボウル片手にずんずん近づいてくる。

「…実李様。また作って来たんですか?」

「野菜サラダなら神官が食ってもいいだろ?」

 そう言って、この100年間ずっと断食を許してくれない。

「最近生まれたエルフときたら、ピーマンは苦いからイヤだだの、トマトは野菜のクセに甘いから食べたくないだの、ワガママが過ぎるっちゅうの!!」

「稔司様が起きたら叱ってもらわねばなりませんね!」

食べるものも無かった私たちの子供時代と比べると今は恵まれ過ぎてる。

上を見ると果実が「食べて」と言わんばかりに成ってるし、野菜も近くの町に店を構えて売るほどどんどん成るし、大概の事はお金で解決出来る時代になった中、神官の私だけが100年前の生活をする。

 朝日の昇る前に広場の井戸水で身を清め、儀式用の正装に身を包むと、木桶一つを手に持ち、ダンジョンの隣のいにしえの泉で稔司様に供える水を汲み、里の広場に戻る。

100年前に組んだ祭壇の拭き掃除をしたあと、畑で旬の野菜と果樹園で旬の果物を収穫するのに参加する。

そこから、実家で1日で食べれる分だけを稔司様に奉納し、祈祷を始める。

 稔司様が石の一欠片になった当初は収穫した食べ物全部を奉納していたのだが、実李様と穗高様が怒ったのだ。

「売る分まで奉納するな!それに、祈祷が終わるまで食事を我慢させるのは稔司のやりたいことじゃない!大人一人分の食材でいいんだよ!ほら、皆持って行け!」

ラインライトが実李様に言う。

「売る分は奉納した後、すぐ出荷したらよくないかい?」

穗高様がため息をついてから私たちをたしなめた。

「お客様はそんなの知らないから、買って帰ってウチにある小さな祭壇に別の神さまにそれを奉納する」

「「「「「「「あ?!」」」」」」」

ラインライトたちは真っ青になった。

他の神様に奉ったものを自分の崇拝する神様に再度奉る無礼たるや天罰物である。

私たちエルフの里の者は他の神々の許しが得られるまで6年間他の神々に野菜や果物を奉納し続けた。

 創造神様がなだめてくれたのだろう。

すべての神様から里への許しが降った。

ただし、稔司様が起きたら天界に謝罪に来るのと、2度と同じ過ちを犯すなとの塩対応(実李様いわく)でしたが。

穗高様が里でワインやリンゴ酒を作れるようにしなければ稔司様の謝罪は上手く行かないから、神々への感謝を込めて酒造りをしろとご命令なさったのです。

 確かに稔司様なら謝罪は手作り料理でしょう。それには美味しいお酒が添えられたら言う事ありません!

御神酒製造専門部隊が結成されました!

御神酒製造には様々な苦労がありました。

最初の年は上手く醸造できませんでした。

実李様が「知識チート」とやらでなかったら更に混迷を極めていたでしょう。

次の年は実李様の御助言で穗高様いわく、若い酒が数種類出来て、一樽稔司様に奉納して半分近く冷暗所で保管して3年程寝かせ、半分は中くらいの木樽に入れた。

 ある程度離れた大きな街ムーンソウルにサンドイッチとホットドック、口当たりの軽い新しい酒を提供するオシャレなカフェを店構えした。

 穗高様がパンを焼く指導と経営者としてエルフの里を離れて10年程辣腕を振るった。

 目新しい食事と飲んだことの無い酒に、姿の良いエルフ達が給仕する店は「オシャレ」では無くなったが、お金を稼ぎ始めた冒険者達がちょっと背伸びして行く居酒屋として瞬く間に信じられない繁盛店になった。

 大人になった元奴隷の孤児達もパン職人になり、次々と支店を任せて稼いだ結果、酒類をいくら作っても追いつかない事態に陥り、何店舗かは、果物のジュースを売るのにしたら、果物自体をたくさん種類を食べたいという女性客からの要望が出た。

 実李様がパンケーキのフルーツ盛り合わせ生クリームたっぷり、と言う凶悪なメニューを作り1500ミロアと高い値段にもかかわらず一番人気の商品になった。

それはさておき、御神酒の3年物は全部神々が晩酌して気がつくと無い。

 最初は盗まれたのかと里長だろうが身内だろうが取り調べる懲罰隊が出来、私も取り調べられたので、保存庫に行って見ると神々の神気が溜まっている。


「神々がお飲みになっています。犯人はいません」


……思う所があったので一樽は残すようお願いしておいた。

翌年から残した一樽は、穗高様と実李様にあげた。

2人はエルフ達と1年に一度宴会をするのだった。無欲な方達です。

それからスタンピードが28年前に起きるまでは酒造りは途切れる事がありませんでした。

更にスタンピードが終わった14年前から酒造りが再び始まり、3年物の在庫が作ったら無くなる状態になり、天界で酒盛りでも始まったんだろうかと誰かが何気なくいいました。

 皆がその日から14年、神々の宴が終わるのをそわそわと待ってます。


最初に稔司様を感じたあの感覚が私を襲いました。

 最初に私たちが出会った洗濯場へ駆け出します。

実李様は先に行けるはずなのに私の後から付いて来ます。

川岸に懐かしい稔司様あなたの姿。

今は澄んだ川で遊ぶエルフの子らに十重二十重に囲まれて困ってらっしゃる。

「「「「「「「「「「「「「レニヴァル様!シンジ様捕まえた!」」」」」」」」」」」」

「レニヴァル君、助けて」

また会えたら、その時は笑顔で「お帰りなさい」を言うはずだったのに、私は何故か安心から泣いてしまい、稔司様の背を追い越してしまったにもかかわらず稔司様にすっぽりと抱きしめられて途切れ途切れにお帰りなさいを言う。

「お帰り、な、さいませ。お待ち、して、おりまし、た。皆が、待ってます。よろしければ、里の稔司様の家に参り、ましょう」

稔司様は私だけに聞こえるように囁く。

「レニヴァル君迎えに来ただけで、ダンジョンにすぐ帰らないと姿が保てないんだ。先にダンジョンに帰るから、ちゃんとご飯食べてゆっくり一晩寝て作業着に着替えておいで。ダンジョンの中片付けるからね」

「はい!」

稔司様は神格が落ちてしまったようで、ようやく姿を保っていたのか、そう告げると消えてしまわれた。

実李様が私の肩を叩く。

「先に行く。あれじゃ、護衛が必要だから。久しぶりに肉喰って、体力付けて、キッチリ休んでから来い!」

実李様に跪き稔司様の事をお願いした。

「かしこまりました。あの方をお願いいたします」

100年ぶりの肉料理は稔司様に作っていただこうと決めている。だから、野菜サラダとおにぎりで、腹を満たし、寝る。

明日が楽しみでなかなか寝付けなかった。

これから先、何が起ころうと稔司様を無くさないと、新たに自らに誓うのだった。



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