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貓の王様  作者: 雨月 そら
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波上宮から沖宮1

 伊邪那美から預かった一升瓶が六本入った十キロ以上あるケースに背負い紐を括り付けると軽々と獅輝は背負い、腰にはぐるぐると金の綱を巻き付け、準備が整ったので一緒に阿形と一緒に行こうとすると人質みたいに取られ、その代わりに通例通りサーと一緒に周ることになった。

 初めは阿形が側にいなくて心許ない感じはしたが、サーに乗って話してみるとやはり気さくで喋りやすく直ぐに打ち解けた。


 「そういえば、面布?だっけ?あれはなんで、付けてたんだ?」


 サーは伊邪那美から離れると面布が取れて、今見えるのは愛嬌のあるあの顔である。


 「ん?...ああ!え〜となぁ〜、天界では階級てーのがあって、俺らみたいな守護神は下っぱでな〜、上級の神様を間近で直視すると神々しさと大いなる力の前に目が焼けちまうんさー。だから、あの面布で和らげてんさぁ〜」


 「...ん?でも、俺らはなんも付けてなかったけど...直視してたような?」


 獅輝はさっきの出来事を思い出すと、不思議そうな顔をして小首を傾げる。


 「あぁ... それはさぁー、三層の黒塗断壇から下は神様が降りる特別な場所で、獅輝達が住んでる場所でもあるさ。で、その上は神様しか住めない天界になってんさ。その境が...扉開けた向こうは別世界みたいな感じになってんさ。だから、直視してるように見えるけど、実は神様は遥か彼方にいるってわけさー。まぁ、神様でない限りその境は越えられないけど、テレビ電話みたいなもんさぁ〜」


 「なるほど。テレビ電話は使ったことないけど、知ってるぞ!ふむふむ」


 「お、そろそろ着くぞ!しっかり掴まってろさぁ〜」


 「お、おう」


 阿形の件を思い出して少し怖気付いたが、グッと歯を食いしばり目を閉じた獅輝は、今度はサーの身体に密着して胸元をしかと抱き抱える。


 「ん?...じゃ、行くさぁ〜」


 一瞬不思議そうに首を傾げたサーは獅輝を振り返り、なんとなく察した後に合図をして降り始めた。

 急降下、を覚悟していた獅輝だったが、緩やかに山を駆け降りるようにゆっくり徐々に降りて行く。これならしがみ付いていなくてもいいかと両手を離し、上半身をゆっくり起こす。

 阿形の時とは大違いで、心地いい風に気分も良くなって全身に風を感じながらゆっくりと目を閉じた。


 「お〜い。沖宮(おきのぐう)に、着いたさぁ〜」


 間延びしたのんびりしたサーの柔らかい声が聞こえてきて、獅輝は心地よい微睡みから目覚めたような感覚でゆっくりと目を開けた。余韻が抜けきらないのか、少しぼんやりしながらサーからどっこいせっとゆっくりした動きで降りる。


 「......ん?なぜ...山の上?何、あの石?」


 キョロキョロ当たりを見回し、獅輝は腕を組んで小首を傾げる。

 そこは然程高くはない緩やかな山の頂に青々とした木々に囲まれた、梵字が刻まれた古い石碑だけがポツンとあるだけなのだ。

 波上宮の本殿は黒と赤の金で装飾された豪華な社であったのでそれが獅輝にとっては普通となったのだが、それと比べるとあまりに簡素で少々驚もあった。


 「うんまぁ...社は別にあるけれど、天受久女龍宮王御神(てんじゅくめりゅうぐうおうおんかみ)こと、天照大神(あまてらすおおみかみ)様がずーっと昔にさぁ〜、この地に舞い降りてから此処が好きで、入口をこっちに作ったんさぁ〜。だから...まぁ...神様の気分...的な?あ、そんな感じだから、まず、泡盛渡してさぁ〜」


 「...ふんふん...え?泡盛?」


 「獅輝が背負ってるのが、沖縄を代表する泡盛っていう常圧蒸留の酒でさぁ〜。五年物と三年物の古酒に、蔵元秘蔵の熟成古酒をブレンドしたそれはそれは希少な酒だから、たいそー楽しみにされてるんさぁ〜」


 「そんな、すごいのか!」


 獅輝は話を聞くや否や背負っていたケースを、目の前に下ろして地面に慎重に置いた。

 その場にしゃがみ込むと好奇心旺盛な猫といった感じのキラキラした目でケースの中の一升瓶を見つめている。暫くして一本だけ一升瓶をむんずと掴むとその勢いのまま立ち上がり、持ち上げると天高く掲げて見ている。

 深海みたいな深い青色の瓶は美しく陽の光に当てるとキラキラし、海に星屑が降ってきたようなそんなイメージが思い出された。

 ただ獅輝はそんな深い海へ潜ったことはないし、小さい頃のトラウマか恐怖心で浅瀬しか行けないのである。

 不思議だなと小首を傾げたものの、獅輝は持ち前のお気楽さで直ぐに忘れてしまい、持っていた一升瓶を慎重にケースに戻すとまた背負い直した。

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