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貓の王様  作者: 雨月 そら
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空から空へ新たな旅路

 伊邪那美とも挨拶もそうそうに八咫烏に急かされて身体でぐいぐい強引に押され、鴉の大群の真下の中心部に立った。


 「皆の衆!!我が友獅輝を、我らが本拠地、熊野本宮大社へ連れていくぞ!!さぁ!!(けい)をなせ!!」


 八咫烏が一本足にグッと力を入れて地面を大きく蹴り、空へと鉄砲玉のように勢いよく飛び上がりくるりくるりと羽ばたきながら回旋し鴉の大群の中へと入ると、それはそれは大きな声で叫んだ。

 その瞬間、鴉達は八咫烏の周りをグルグルグルと回ったかと思えば、今度は獅輝目掛けて一気に飛んでくる。それは黒い竜巻のようにも見え、獅輝は思わず昔のことを思い出して胸がグッと苦しくなって胸を片手で押さえながら目をぎゅっと閉じてどうにか立っている状態。

 そんな獅輝を、お構いなしに鴉の大群は獅輝に襲い掛かる。


 ぐーーーーんと、ブランコにでも乗っているかのように獅輝は空へと飛んだ。


 いやいや、大群だった鴉はそれはそれは大きな大きな一匹の鴉となって、その背に獅輝は乗せたのだ。


 「おぉーい、獅輝坊!目ぇ、開けろ!滅多に上空から下眺める機会なんて、そーそーねぇぞ!落ちやしねーし、怖くもねぇ!素晴らし景色を見ろ、勿体ねぇぞ!」


 八咫烏は大きな鴉の横で優雅に飛びながら眉間にグッと皺寄せ、口をへの字にして目を閉じたままの獅輝に大声で叫ぶ。獅輝は八咫烏の声でゆっくりと恐る恐るではあったが、片目を薄く開いて見る。


 そこに広がる景色は宝石箱を散らしたみたいで、夜空とはまた違った色とりどりの光が色々な形を織りなして輝いていた。

 獅輝は初めて見るその景色に驚いて、キラキラと目を輝かせ興奮したよう一気に両目を大きく見開いて下と眺める。


 「これが、人間達の文明の開花の産物だ!そうそうこんな上から、見れやしねぇ!ちゃーんと、目に焼き付けておけよぉ!!」


 獅輝は八咫烏の声も届いていないほど夢中になって、その美しい景色を凝視していた。


 グーン、グーンっと大きな鴉のスピードが早まってキラキラ星のようだった光は光線のように流れ、色が入り混じりまるで虹のように見える。

 その光景が不思議で胸がドキドキと高鳴ってワクワクと楽しくなって、子供みたいな無邪気な笑顔になる。すぐそこに見える光は水の流れのようで、手を伸ばせば掴み取れるんじゃないかと手を伸ばした。


 当然遥か下にあるものを掴み取れる訳もなく、虚しく空を切るだけ。そこで現実に呼び戻された獅輝は、少し虚しさを感じて小さく眉を下げて苦笑する。


 「オイオイ、獅輝!いくら楽しくても、乗り出しすぎだ!ほら、そこに居ろ!」


 夢中で手を伸ばしていた獅輝は、身体が半分外へと出そうになっていた。それを八咫烏がそっと頭で押しやって、元の位置へと戻す。獅輝は自分の不用意さに下に顔を向けて、また落ち込み気味になりそうになる。


 「おっ!おい、獅輝、見ろ!しょげてる場合ではないぞ!あれに見えるは、我らが社の大鳥居よ!これぞ素晴らしい、造形よ!人の魂の結晶だぞ、獅輝!!」


 八咫烏がそう大きな声で叫んだものだから釣られて獅輝は顔をバッと顔を上げれば、今まで見てきたどの鳥居よりも大きく凛々しく逞し聳え立つその姿に、圧巻して思わず目を奪われた。

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