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貓の王様  作者: 雨月 そら
23/28

みんなん祭で力比べ

 「はぁ〜...ん?」


 派手な音はしたものの尻が痛くないことに気づいた獅輝は視線を地面に落とし、そこでようやく地面が畳であることに気づく。少し驚いたように目を見開いて、顔を上げるとくるっと身体を回転させ反対を向く。

 

 弧を描くように神々が仲良く並んでいるそこは少し離れていて、獅輝が座ったらその姿を隠すくらい一段高くなっている。

 その神々の中央には玉依姫尊が持参したのだろうか、らふてーが大盛りに乗った皿がどーんと置かれ、神々の両脇には大きな(かめ)が置かれている。

 その甕には人の姿の、サーとさっきまではいなかった阿形がそれぞれいて、封が開いた甕からひしゃくで酒を掬って沖縄の陶器でできた酒器である海を思わせるような色合いのカラカラへせっせと流し込むと、らふてーを長い橋でつまみながらお猪口で酒を飲んでいる神々の元へ忙しく置きに行く。

 熊野権現以外の男神は皆ガタイがよく、食べるスピードも飲むスピードも早くて折角全員に配り終わっても酒が足りないとカラカラを掲げて要求するものだから、休んでいる暇がないようだ。

 流石にその忙しそうな獅子達へ話し掛けるのは忍ばれて、どうしたものか小休憩とばかりにぼんやり他人事のようにその宴会場を眺めた。


 「獅輝さん」


 「へぇ?あ、はい」


 気が抜けすぎて横にシーが来たことにも気付かず、間が抜けた声を上げてからシーを見ると少し苦笑しながら返事を返す。そんな獅輝に対して、シーは平然としていてニコニコとした笑顔を崩さない。


 「獅輝さん、皆さんから褒美は頂けましたか?」


 「あっ!はい!待ってくださいね」


 背負ったままのケースにやっと気がついて、よいせっとケースを畳の上に降ろす。そういえばさっき勢いよく尻餅を付いたが、中は大丈夫かとケースの方へと身体の向きを変える。

 後から後悔がじわじわと湧き上がって、そろりそろりと中を覗いてみる。

 幸い、経木の包みとパイナップルは無事であるのは確認できて、獅輝はほっと胸を撫で下ろしその二つを取り出すとシーへと渡した。


 「なぁ、シー。俺は、あっちの方を手伝った方がいいんかな?」


 盛り上がっている宴会場を指さして、少し迷いながらシーに相談するとシーも宴会場の方を見る。


 「...少しお待ち下さい」


 そう、シーが言った時だった。


 「相変わらず、顔が長いですねぇ〜」


 水天が午ぬふぁの顔を片手でペチペチ軽く叩きながら、ケラケラ陽気に笑ってるいる。顔が真っ赤で、明らかに酔っている。


 「誰がブサイクな顔長だって!僕は、こんなにもイケてるというのに!ちょっと僕よりイケた顔してるからって、容赦しないぞ!立て!勝負だ!」


 「ブサイクとは言ってませんが、いいでしょう!勝負です!」


 午ぬふぁも顔も真っ赤で酔っているのは明らかで、酔った勢いか、二人はすくっと立ち上がると開けた場所へとドカドカと移動する。

 互いに相向かいパンパンと両手を叩くと柔道着のような上着に帯を締めた格好になり、キュッキュッと帯を閉めると礼儀正しくお辞儀をして右四つの姿勢で互い帯を掴んで相撲を始める。

これは下で行われている、沖縄角力と似ている。


 ドーン!!


 いい勝負ではあったが、ちょっとの差で午ぬふぁが勝つ。


 「わははは!僕の勝ちだ!」


 「まだまだですよ!三本勝負ですからね!」


 二人は楽しげにまた、取っ組み合いを始める。速玉男命と事解男命はその二人に気づくと寄ってきて、ドカっと近くに座ると酒を片手にに楽しげにやんやと囃し立てる。

 他の神々は下で行われている沖縄角力と酒に夢中で、全くそっちは気に求めていない。


 「あの中へ行けば、十中八九、相撲をやらされますよ。まぁ...いつも、この祭りに乗じて力比べをしたいみたいなんです。それでも、行きますか?」


 今でも派手な音がバンバン聞こえ、神々は笑っているが畳といえど痛いのではないかと思って、わざわざ痛い思いをするのは勘弁してほしいと獅輝は首をブンブン横に振る。明らかに、勝てそうにないと思ったのだ。


 「なら、これから私は料理をしなければいけないのですが、お手伝いして頂けますか?」


 「喜んで!」


 獅輝は面倒臭そうな彼方へ行かなくていいのかと思ったらそれはそれで嬉しく、いい笑顔でいい返事を返した。

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