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貓の王様  作者: 雨月 そら
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天久宮から安里八幡宮1

 安里八幡宮へ着くと赤い木造の社殿に赤瓦の屋根と全体が真っ赤っかという印象で真っ白な鋭い歯を剥き出しにしている厳つい真っ赤な龍の彫刻が施されている。龍を視点に見ていると、この社自体が龍の身体のようだなと獅輝は少し恐ろしく感じた。とは言っても波上宮でだいぶ時間を潰してしまったので、早く終わらせたい気持ちで早々に二拝ニ拍手で中へと入った。


 安里八幡宮の社が目の前に、先程と景色は特に変わり映えがない。今まで通り移動した時の身体がふわっと浮上する感覚はあったし、別の空間へふわっと着地した感覚もあった。見間違いかと獅輝は手で目を擦って、もう一度見るが何も変わりないし、誰もいない。

 しーんとした境内で、おーいと声を掛けるのも罰当たりな気がして困って後にいるサーに振り返る。


 「サー...誰もいないけど...」


 「おかしいさぁ〜...いつもは...」


 「いつもは?」


 サーが口籠るのでどうしたのかと首を傾げた獅輝は不思議そうに問い掛けて、異変に気づく。サーの面白い顔が驚愕したような恐ろしいものでも見たような顔になってしかも言葉を失ってブルブルと身を縮めて震えている。

 何にそんな怯えているのかとサーの視線を追ってその方向へと振り返って見てみれば、先程まで赤い社だったそれが真っ赤な頭が二つある巨大な龍になっていた。


 「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


 巨大な龍が目の前で、あまりのことに獅輝は驚愕して大声を上げ腰が抜けてその場に尻餅を付いてしまう。


 「お主、何者ぞ。勝手に我の寝ぐらに入ったのだ、覚悟はできておろうな!」


 ギロリと金に光る瞳で品定めしているように獅輝達を見て、鋭い牙を剥き出し長い舌をべろりと出して口を舐めている姿は今にも取って食いそうな雰囲気。

 獅輝は蛇に睨まれた蛙状態で怯えから身体が動かず口も動かず、逃げることもできず目を逸らすこともできずじっと龍を見返す。

 暫く見つめ合った状態で沈黙の状態が続いて、ふと獅輝は気づく。この龍は何故、すぐに襲ってこないのだろうと不思議に思ったのだ。そう思った瞬間、張り詰めた緊張感が解けて身体が楽になってすっと冷静さが戻って自分は何しに来たのかを思い出す。

 目の前の龍はまだ恐ろしかったが、それよりも背中に背負っていた酒の方が心配でケースを下ろすと手前に持ってきて中を覗き込み、一本一升瓶をすっと抜き取って上へ掲げて見る。

 陽に照らされてキラキラと瓶は輝いて傷一つなく、中身が漏れている様子もない。

 ほっと胸を撫で下ろすと一升瓶を下ろし、一気に蓋を開ける。


 ふわっと酒のいい匂いが漂って、その匂いに龍の顔が和らいだような気がした。


 その時だ、ピカっと空が光ってキラキラと輝く光の矢がヒューンと一本風を切って龍へと身体に刺さった。

 龍はうぉおとどこかわざとらしい感じに大声で叫び、芝居掛かったようによろよろと身体が傾いてその場にぱたりと倒れた。

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