喪服と少女の物語

作者： quo

美しい喪服は、自身の役割をとてもよく知っていた。何かを求めるわけでもなく、そこにあった。

ある家のクローゼットに、特注で作られた美しい喪服が眠っていいました。それは高価な布を使用し、有名なデザイナーが手掛けたもので、誰もが見た瞬間にその美しさに魅了される喪服でした。

ある日、その家の少女がクローゼットを開けて、その喪服を見つけたました。彼女は喪服の美しさに魅了されたました。

喪服は少女に向かって、誰が亡くなったのかと問いかけたが、少女は誰も死んでいないと答えました。

それから度々、少女はクローゼットを開けて喪服とおしゃべりをしました。最初は喪服に質問をすることが多かったのですが、生地のこと、デザイナーの事、いつからここにいるのか等々です。そして今度は、徐々に少女自身のの事を話すことが多くなっていきました。学校のこと、いじめっ子のこと、花壇のお手入れが好きなこと、数学が嫌いなこと。

時間が経つにつれて、少女は成長し、恋の話や仕事の悩みの話をするようになりました。そして、結婚して子供が生まれました。彼女は、クローゼットの喪服と話し続けたました。かわいい子供の話、夫への愚痴、意地悪な隣人の話、今年咲いた庭のバラがとてもきれいな話。

長い年月が経ち、少女は老いていきましたが、クローゼットの喪服と話すことはありませんでした。ある時、喪服は陰干しのついでに庭を見せてもらった。力強く緑の葉をつけた木々や、優雅に羽ばたく蝶、美しく咲き誇る薔薇たち。クローゼットの中と悲しみに暮れる教会しか知らなかった喪服はとても感動ししました。

ある日、知らない女性がクローゼットから喪服を取り出しました。その女性は、少女とよく似ていました。喪服は彼女が死んだことを悟りました。

彼女を見送った喪服はクローゼットでまた眠りにつきました。

ある日、少女がクローゼットを開けて喪服を見つけ、喪服に話しかけました。しかし、喪服は何も答えることはしませんでした。

Regenerate response

喪服は思っていた。もう一度、あの庭が見たい。彼女と。