第3章~密約~
首相府管下で諜報活動と特務工作を担当する。それが、イスラエル諜報特務庁(通称:モサド)である。世界で唯一無二のネットワークとポリティクスパワーを誇るイスラエル情報コミュニティーのメンバーであり、活動の根拠となる法律が存在していない為に、法律的には存在しないがらも、イスラエル国防政策における重要なウェイトを占めている、世界最強クラスのスパイ集団である。
そんな彼等が、近隣の地域で起きた日本国籍の海上自衛隊所属護衛艦ミネフジのIKDによる強奪やイスラエル本国への入国を察知していない筈が無かった。モサド長官パウエル・メロールは言う。
「安心しろ。助言無しに人は倒るる。安全と救済は多くの助言の中にある。」
テロリストの活動を未然に防止するのもモサドの役割ではある。しかしながら、イスラエル国防軍ひいては海軍力においては、心許ないのも現実である。メロール長官は、イスラエル国内に非常事態宣言を出し、ミネフジの国内流入を防ごうとした。
だが、それがあだとなる。マルゼイと長峰は、モサドの動きをシュミレーション済みであった。モサドの動きを予想した上で、あえてミネフジでの強硬と言う手段に見せかけて、地上に部隊を配置した。わずか100人のIKD戦闘員ではあったが、ノーマークでイスラエル本国への侵入に成功した。こうなってしまうと、流石のモサドも手遅れであった。ミネフジの操艦を長峰達夫に託したマルゼイは、自ら先陣をきり、イスラエル軍と衝突した。ここで敗れれば、それまで。確かにこれからの野望を考えれば、世界の上位ランカーとは言え、大国の二番手であるイスラエルを落とせなくては、話にならない。ほぼ奇襲に近かったが、イスラエルが全面的に反撃して来る前の最初で最期のチャンスであった。