IKDのNO.2サカヒゲ・ケイン
意気投合した訳ではない。ただ長峰達夫にとっては、IKDと言うテロリスト達が気持ちの悪い相手達ではなかった様である。寧ろテロリスト達も腹を割って話せば普通の人間であると分かった事は新鮮であった。とは言え、IKDは立派なテロリストグループである。彼等の目的が何であれ、長峰達夫は、一度踏み入れた悪の道を歩くしか他に方法はなかった。
メディアの与えるテロリスト像はまるでステレオタイプ的なものであり、正解とはほど遠い事を長峰達夫は、知った。それは既に周知の事実である。言葉もろくに通じないが、片言の英語とボディーランゲージで会話をしていた。
「長峰?どうだ、調子の方は…?」
「あぁ、まぁ、体調は悪くはない。」
今話しかけてきたのは、IKDのNo.2サカヒゲ・ケインである。サカヒゲは、アルカイダ系グループに属していた経歴を持つ。対ソ戦争の経験がある古株で、戦闘スキルや射撃スキルにおいては、IKDの中でもトップクラスである。普段は物静かで、特に何を話す訳では無いが、部隊の長として圧倒的な存在感を示している。俄然ミネフジの進路はイスラエルである。
「よし、例のあれを持って来い!」
マルゼイが示したのは、イスラエル入国の為のビザであった。極秘裏に入手した入国ビザがあれば無用な戦は避けられる。少ない人員であるため大規模な正規軍と対峙するのは、得てして難しい。まずはイスラエルの全軍を統括している、イスラエル国防大臣リクヌイ・ミゲリーに会うのが目的となる。ミゲリーと接触する為には、多少の戦闘は避けられない。だが、マルゼイには秘策があった。その作戦を達成する為には、中東最強の諜報機関モサドを相手にしなければならなかった。