もう俺の主君は貴様に変わっている
船体を一切傷付けず、突入して制圧したIKD戦闘員には狙いがあった。船体を爆破してミネフジを破壊するのは簡単だ。しかしそれでは大義が全くない。船体を奪取する事により、IKD戦闘員が乗っていない事を装った"偽軍艦"を保有するのが、彼等の真の目的であった。
とりあえず、IKD戦闘員だけではミネフジの操艦は出来ない為、20人程の海上自衛官は生かしておいた。さすれば、操艦は出来る。IKD戦闘員の目的地は既に決まっていた。イスラエル…である。イスラエルは親米派でありながら、中東屈指の海軍大国である。まずはイスラエルを取り込んで、欧州に乗り込む。それが彼等の思惑である。
まずは近場の大国から戦力を剥ぎ取る。そして来るべき宿敵を倒すべく、計画を着々と進めていた。
「おい、長峰達夫?出て来い!」
アラビア語で叫ぶIKD戦闘員が遂に長峰達夫を見つけた。
「何だよ?もっと早く見付けて欲しかったな。」
そう言うと、長峰達夫は、CIC(中央戦闘指揮所)にいるゴーン・マルゼイの元へ呼ばれた。
「長峰達夫…。この自衛艦はイスラエルに向かう。お前をIKD(イスラム解放同盟)に正式に迎え入れたい。長峰?貴様の父は私が殺った。もう後戻りは出来ないぞ?」
多少の英語が通じる長峰はマルゼイにこう答えた。
「ああ、もう既に俺の主君は貴様に変わっている。もうこの身はIKDと共にある。」