Try of liberty
5年の月日が流れても、サカヒゲは日本に戻らなかった。マルゼイはシリアへ行き大統領になった。IKDは結局サカヒゲが形を変えて存続し、米国政治の裏側にて大きな影響力を示し続けた。サカヒゲは何故日本に戻らなかったのか?それは長峰とサカヒゲの決別を意味していた。サカヒゲが長峰との決別を決意したのか?サカヒゲ曰く、
「長峰の元に行く事が自分の成長には繋がらない。俺は長峰に依存し過ぎていた。だから、日本には行かない。」
この5年と言う月日は、長峰自身をも大きく変えた。日本のプレジデントとして、日本の発展に寄与して来た。人生の伴侶も得て、二人の子供を授かった。一国一城の主となった今でも、あの頃…つまりサカヒゲやマルゼイと共に戦っていた対米戦の時と志は変わらなかった。日本を変え世界も変えた。立志大国主義の元に日本は憲法改正を果たし、国防軍を保持した。その先頭に長峰はいた。マルゼイに会った時に長峰はこんな事を口にしていたと言う。
「これからの時代は自主自立の元に平和と自由を追い求められる時代だ。俺達は、固定化された格差を無くし、自由への挑戦を成功していたんだ。マルゼイもシリアでしっかり自由への挑戦に挑んで欲しい。」
マルゼイは、サカヒゲに全てを託しIKDを去ったが、長峰も気付けば50歳を越えていた。そんな彼の夢は、この掴み取った平和を守り抜く事である。血生臭いリアルな戦争を経験したからこそ、勝ち取った平和と自由な社会を継続させたい。長峰はその様に感じていた。そんな長峰に一通の手紙が届いた。差出人はサカヒゲであった。
「調子はどうだ?俺は米国で相変わらずな暮らしをしている。あれだけ貴様に付いて行きたかった俺がいた過去を思い出すと笑える。俺が貴様に必要とされる事はないだろうが、IKDでも何か出来るならば、いつでも力になる。ああ、そうそう。貴様に貰った金貨大切にしてるよ。俺の大切な形見だからな。また、時間を見つけて手紙を書くよ。それじゃ、達者でな。」
長峰はサカヒゲの手紙に驚いた。と、同時に自分も旧友とのコミュニケーションを取らねばと思った。サカヒゲ然りマルゼイ然りである。彼等との出会いが無ければ、長峰は只の海上自衛官に終わっていただろう。共に戦っていた戦友と成し遂げた自由への挑戦は、遂に成功し世界は新たな情勢へと動いて行くのであった。
長峰の二人の子供はどちらも男の子であった。長男マサオはガキ大将的存在の元気な男の子であった。一方、次男のコウジは読書が好きな内向的な性格の持ち主であった。長峰は子育ての事は、妻ユリエに全て任せっきりであり、喧嘩は少なかった。放任主義と言えばそれまでの事かもしれないが、父親としては二人の子供には自由を謳歌して欲しいと、それだけを願う父長峰達男がいた。




