終章~未来の価値~それぞれの道
核なき世界が訪れた地球は、平和を謳歌している様に見えた。米国やイスラエルでは、新政権が誕生し、武力に頼らない新秩序の形成が急ピッチで行われていた。その一方で、中国やロシアと言った大国の軍拡はここぞとばかりに行われており、長峰政権の続く日本も新憲法を制定して、徴兵制度を復活。大国の台頭に対抗していた。米国暫定政権の首長から退き一市民となったマルゼイは、長峰に会う為に来日していた。
「おお、長峰!」
「マルゼイ?私は忙しいんだ。元気そうだな?」
「相変わらずだな。」
「貴様の方こそ相変わらずだな。(笑)」
米国で、生活していたこの10年、自由の利かない首長を務めていたマルゼイにとって、この来日は待ちに待った瞬間であった。
「IKDはどうなった?」
「ああ、それならサカヒゲに一任した。俺は隠居の身だよ。」
「サカヒゲは元気にしているか?」
「奴はピンピンよ。元気にしている。」
「日本にはどのくらい滞在するんだ?」
「二週間かな。」
「そんな事より米国は大丈夫なのか?」
「ああ、時折反政府デモが起きるが、内戦状態にはない。全て順調に行っているぞ?」
「それは何よりだ。」
「ところで日本での生活はどうなんだ?」
「御覧の通り何不自由していない。」
「IKDに戻らんか?」
「愚問だな。戻るつもりはない。」
「冗談だが、まだIKD内部では長峰信者が多くてな。手を焼いているんだ。どうしたら良い?」
「そうか。それは困ったな。日本に招き入れたところで彼等の居場所はない。」
「それはそうだ。正常な法治国家にテロリストの居場所はないよな…。」
「期を見つけて米国に行こうか?」
「そいつは良い案だな。来てくれるのは大歓迎だ。」
新国家樹立までは外交カードを切らないつもりでいた長峰にとっては、全く想定外のタイミングでの米国訪問となりそうである。マルゼイがIKD内部の長峰信者に手を焼いているのは、悩ましい問題であるのは間違いない事ではあったが、長峰の米国訪問を引き出したのはマルゼイの狙い通りであり、外交力の賜物であった。米国との国交正常化と言う長峰の思惑も相まって、長峰は米国に行かざるを得ない。そんな情勢になった。
そんな事より、マルゼイが一番気にしていたのは、IKDのNo.2サカヒゲの事であった。長峰信者筆頭の彼の影響力は想像以上に大きく、マルゼイの一枚岩であった結束力が揺るがされていた。まぁ、そんな事はよくある話だが、新政権の樹立にIKDが深く関与している以上、そのあたりのケジメをつけるのは長峰の責任であり、新たなる火種になるのは長峰としては避けたかった。




