氷の濁り
ニューヨーク裁判を前に米国陸海空軍及び海兵隊の武装解除が終了した。と同時に、米国外にある全ての米軍基地を閉鎖し、部隊や設備も撤収される事になった。これにより、米国の持つ全ての部隊が機能停止となり、核兵器も処分される事になった。すると、ロシアや中国に英国やフランスと言った核兵器保有大国も続々と核兵器の放棄を国連に伝達し、結果として世界中の核兵器が、処分される事になった。
核無き世界の実現がテロリストの活躍により、もたらされるとは、何と言う皮肉だろうか。米国の崩壊による和平プロセスは、長峰の当初案であり、マルゼイやサカヒゲはそのプランを滞りなく進めて来た。この非核政策に関しては世界に衝撃を与えた。マスメディアもこれには騒がずにはいられなかった。"テロリストがもたらした真の平和"と題した記事が出る事もあった。そんな中で、ニューヨーク裁判が執り行われ様としていた。
「久し振りだな、マルゼイ?」
日本に帰国していた長峰がニューヨーク裁判を前にそれを見届ける為にマルゼイにあったのは、ついでであった。
「おお、長峰。元気にしていたか?」
マルゼイは嬉しそうだ。
「見ての通り俺は元気だ。俺のプラン通りに事を進めてくれた様だな。ありがとう。」
長峰もまんざらではなく嬉しそうだ。
「長峰が敷いたレールに乗ったまでさ。まぁ、現場をまとめるのは苦労をしたがな。」
「裁判の準備は順調か?」
「ああ、そこも抜かりはない。」
「長峰は日本で何をしているんだ?」
「内閣総理大臣さ。」
「!?」
「今回の件で知名度が上がってな。」
「今度は政治家か(笑)大したもんだ。」
「なぁに、貴様と米軍相手に命削った頃に比べりゃあ大した事はないさ。貴様だってそうだろ?マルゼイ?」
「確かにな。米国海軍相手にしのぎを削ってた頃よりは気楽なもんかもな。」
「サカヒゲはどうしている?」
「あぁ、サカヒゲも元気だぞ。解散させた多国籍軍の撤収で陣頭指揮をとらせている。俺よりも忙しいよ、あいつは…。」
「そうか。一杯やるか?」
「いや、酒はもう止めたんだ。」
「じゃあこれは?」
「キューバ産の葉巻じゃねーか?良いね!」
「今日は無礼講だ。一服しよう。」
「相変わらず変わらないなマルゼイは(笑)」
旧友との再会は戦いを終え、その混乱も落ち着いた今だからこそ、祝える事もあるだろう。その一献はとてつもなく澄み渡りつつも、先を見通せるグラスの氷の少しの濁りだけは取り除けない様な関係であった。




