テロリスト・ゴーン・マルゼイの原点
「そんな暴挙は絶対に許されない。」
イエノ・バラト元合衆国大統領は、IKDによる占領政策に対して強い憤りを覚えた。
「貴国が行って来た全ての戦争責任に対して我々IKDは厳重に粛々と軍事裁判を進めて行く。」
マルゼイの意思は固い様である。それも無理はない。マルゼイの母国シリアでは、大国の代理戦争に巻き込まれているからだ。
「君達に反論の余地はないはずだ。貴国は東京でIKDと同じ事をやっていた。我々の行う軍事裁判から逃げる事は出来ない。」
しかし、マルゼイは法律家のエキスパートではない。そこで、マルゼイはイスラム諸国の法学者達に今回の軍事裁判を任せる事にした。無論、米国の法律家は参加出来ない。
「これはやりすぎじゃないか?」
サカヒゲはマルゼイの推し進める占領政策に一抹の不安を感じている。
「今のIKDがあるのは、長峰のお陰だ。その長峰に後を託されたのはこのゴーン・マルゼイだ。サカヒゲ、君は黙って見ていれば良いんだ。」
マルゼイはサカヒゲの忠告に聞く耳をまるで持たない。長峰がいなくなった今、サカヒゲはマルゼイを止められない無力さを痛感している。マルゼイがいる限り、永遠に自分の序列が変わらない事も知っている。マルゼイを止められないのは、日々の任務に忙殺されているからではない。サカヒゲが踏み出せる範疇を越えているからだ。
「ジハード(聖戦)を制したのは我々IKDだ。ヨーロッパやロシアに中国、インドに日本と言った大国の同士達の力を借りて、ここまでやって来た。米国のこれまでの罪を非道を正す機会は今なのだ。」
大きな被害を受けた米国民はその日暮らしだ。正にギブミーチョコレート状態である。大規模なデモを行う事すらままならない。米国の行く末がどうなるのか?それはまず罪を償ってから考える戦後復興である事は、誰の目にも明らかであった。
「ドイツもイタリアも日本も、今回のジハードよりも被害を受け、罪を償っている。ホロコーストで殺された600万人のユダヤ人よりも、中東やアフリカでは人が死んでいる。その不合理な世界を創出してきた米国には、責任がある。」
マルゼイの意思は固かった。思い出されるのは、親友が米国製のドローンで誤爆された事であった。あのどうしようもないやるせなさ、それこそがマルゼイのテロリストとしての出発点であったのは間違い無い。




