内紛
IKD(イスラム解放同盟)の指揮官が日本人だと報道されると、米国世論はかつての米国海軍大将ウィリアム・ハルゼーの如く、時には「キルジャップス、キルモアジャップス!」等と過激な表現で長峰の出身国日本を非難していた。
と同時に差し迫るIKD艦隊の脅威を目前にして、隠す事の出来ない本心は穏やかではなかった。マスメディアは大衆をいつも煽るが、今事案については物静かで珍しい。平穏を保ちたい米国民も流石に分かっている。にも関わらず、米国海軍の指揮官であるハロルドは、強気の主張を国民向けに発表していた。
「我が合衆国海軍は、パールハーバーでIKDに負けた訳ではない。あれは勇気ある撤退である。米国本土で地上戦を戦うなど有り得ない。一介のテロリストに我が合衆国海軍が屈する事は絶対に無い。」
ハロルドは米国領土到達前にIKDを壊滅する事を誓った。その一方で、IKDではちょっとした内紛が起きていた。
「おい、サカヒゲ?貴様はいつからIKDの主になったんだ?」
マルゼイがサカヒゲに突っかかる。
「そんなつもりは微塵も無い。言いがかりはよしてくれ。」
サカヒゲは事を荒立てたくない様だ。
「二人とも大きな声を出してどうしたんだ?」
長峰が仲介に入る。
「お前もお前だ、長峰?」
長峰は飛んで火に入る夏の虫状態である。
「何が不満なんだ、マルゼイ?」
「ふざけるな。サカヒゲはこのワシを差し置いて第一艦隊の指揮官として、成果を上げた。その時ワシは指をくわえて長峰とミネフジにいた。」
「マルゼイ、いいか?たかだかあれくらいの事で君はIKDのNo.1を失う程脆い組織なのか?」
「ワシにも前線で戦わせろ。」
「だから君に死なれちゃ困るんだよ。」
「昔のアンタはそんなんじゃなかった。」
長峰もサカヒゲもヒートアップしない様に冷静に努めている。
「どういう意味だ?サカヒゲ!」
「今のあんたにかつての強さはない。」
「調子に乗りおって‼サカヒゲ!」
すると右拳を繰り出した。
だが、サカヒゲはそれをかわして一発強烈なボディーブローをマルゼイに繰り出した。
「ウグッ。」
「サカヒゲ!その辺にしてやれ。マルゼイもいい加減にしろ!IKDのトップはマルゼイだ。内輪揉めしてる内に、これからやって来る米国海軍本隊には一人一隻のピースも欠けてはならんのだ。」
「なぁ、マルゼイさんよ?俺はいつか貴方を越えたくてIKDに入った。だが長峰に出会ってから、価値観が変わった。俺は戦を求めている。IKDの王座に興味はない。長峰とマルゼイどちらが上でも構わない。胸踊る様な戦を与えてくれる方に俺はつく。だから長峰の指示にもマルゼイの指示にも忠実に動く。」




