その男の名はゴーン・マルゼイ
イスラム教=テロリストグループ、と言う構図は成立せず、明らかに間違いである。一部の過激派グループの愚かな蛮行ばかりがクローズアップされるが、イスラム教と言う宗教自体は温厚で、殺しは禁忌である。
だが、このジブチ共和国と言う国においては、やはりイスラム過激派の勢力の台頭が著しい。勿論、海外の部隊が駐留している為、彼等イスラム過激派の活躍は影を潜めている。とは言え、イスラム過激派集団のロビー活動は盛んに行われている。
イスラム解放同盟(IKD)も、ジブチ共和国でロビー活動を続けているイスラム過激派集団である。IKDのNo.1ゴーン・マルゼイは、英語とアラビア語を駆使する頭脳派である。
そんなマルゼイと、たまたま非番だった長峰達夫が出会ったのは、ジブチ共和国のとある社交barであった。
「HEY、ジャップ!ここで何してるんだ?」
長峰は明らかにこいつはヤバそうな匂いを感じていた。この男は、何かを求めている。長峰はそう感じた。
「嫌、別に。これは趣味つーかあんた誰?」
「まぁまぁ、そんな肩肘張らないで、おいらの話を聞いてくれ?」
「実は、おいらには野望がある。あんたおいらに力を貸してくれ。」
「いきなりの勢いで何なんだよ?もう帰るぜ?」
長峰は帰ろうとした。すると、マルゼイは長峰の肩を力づくで引っ張り、こう言った。
「お前、日本海軍の兵士だろ?」
「いや俺は海上自衛官だ。」
「その貴章からして少尉だろう?」
「それより、要件は何?」
「こんな洒落た高級barに来るのは、日本海軍か米国海軍かフランス海軍のいずれかの士官しかいない。そんな表の政府の犬を味方につければ、おいらの野望に近付けるってもんよ。とりあえずおいらの話を聞いてくれ無いか?」
と言ったマルゼイは、名刺を長峰に渡した。長峰は少し後ろ髪を引かれる想いで、海上自衛隊ジブチ基地に帰隊した。
「ゴーン・マルゼイ…。イスラム解放同盟って、テロリストじゃねぇか!?」