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短編

その気持ちの正体は

作者: 見伏由綸

時折、自分の部屋の窓から飛び降りたくてたまらなくなる。


別に死にたい訳じゃない。むしろ死にたくはない。

普通の一軒家の2階だし窓の下に針の筵が広がっているわけでもないから、飛び降りたとしても死にはしないと思う。

でも飛び降りてみたい。無性に一方踏み出してみたくなる。


自傷癖の一種かな、とか、想像するのがストレス発散なのかな、とか。

色々考えたけれど、やっぱり飛び降りてみたい気持ちはなくならない。


ついにこの間、その理由がわかった気がした。


それは、抑圧からの解放を求める気持ちなのだ。

いままで挑戦したことのなかったことに、挑戦してみたい。

やっても死なないけど危険だからだめ、と言われてきたことをやってみたい。

ダメと言われるほどやってみたくなるのに似たような気持ち。

自分でもしちゃいけない、やったら危ない、と思っていることに向かっていくことで、どうしようもなくうだつの上がらない今の自分と決別したいのだ。

もっとやりたいことに挑戦できる自分に生まれ変わりたい。

そのための一歩を、踏み出してみたい。

どうしても、変わりたい。

今のままじゃ、嫌だ。


それでも怪我をするのは怖いし、飛び降りたと知られて家族を悲しませたくない。

一人にしたら危ない子だと思われて警戒されるのも、過保護にされるのも嫌で。

死にたいのかと思われるのもめんどくさい。

何より万が一でも命に関わるような危険なことに自ら突っ込んでくほど理性を捨てきれない。


結局、今日も私の部屋の窓は平和なまま。

秋の気配のする涼しい風がなんでもないような顔で通り過ぎてゆく。


怪我もなく、何もなく、無難な一日を過ごして。

私は今日も、一歩踏み出せないまま眠りにつく。

夢の中でさえ、何かから逃げて隠れて諦めるしかできない私が、やりたいことの目を見て挑戦できる日は来るのだろうか。

お読みいただきありがとうございました。

「坊ちゃん」の中に出てくる2階から飛び降りるシーン。昔にあれを読んでからずっと、私も飛べる、飛んでみたい、そんな気持ちが心の奥に眠っています。

坊ちゃんになりきって2階から飛び降りてみる体験施設があったらいいのになぁ、などと意味もなく夢想してみたり…。

それではみなさま、楽しい人生を。

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