25話 クロロ一行のダンジョン攻略 ③
――最果てダンジョン 20階層
グオオォオオオオン!!
凄まじい咆哮を上げたのは20階層の階層主、鎧熊『A+』。鎧のように鉄の岩を貼り付けたような巨熊である。
鋭い爪は人を引き裂く事など容易で、発達した顎と牙はどんな鎧に身を纏っていても簡単に噛み砕いてしまうほどの威力を持っている。
「ゴーン。ヘイトを集めろ。背後から焼いてやる」
「おう! 任せとけ!」
クロロの言葉にゴーンは何の疑問も持たず駆け出した。
「《身体強化》!」
身体中に魔力を流し込み、巨体に似合わぬ軽快で柔軟な身のこなしで鎧熊の懐に入り、大斧を振るった。
ガキンッ!!
鉄と鉄が激しくぶつかり火花が散る。ゴーンはギョロッと睨まれても一切怯む事なく余裕の笑みを浮かべる。
(ガッハッハ! 魔物ってのはバカばっかりだ!!)
鎧熊が右腕を振り上げた事を確認し、今日『2度目』のスキルを発動させる。
「《鉄壁》!!」
どんな攻撃も1日3度、無効化させるゴーンの【鉄壁】。発動中は動く事はできないが、この隙をクロロが見逃すはずはないと、早速使用したのだ。
(俺の防御とクロロの攻撃がありゃ、小細工は必要ねぇ! ちまちま無駄な作戦なんて、何の意味もねぇんだよ!!)
心の中でローランに向けて悪態を吐いて衝撃を待つ。一瞬で鎧熊の背後に回り込んだクロロの姿が目に入り、勝利を確信する。
「やっちまえ! クロロ!!」
「《煉獄竜》!」
ゴォオオオオオ!!
真っ赤な炎の竜の中には光の粒子が点々と輝いており、薄暗いダンジョンを照らす。
(相変わらず、ヤベェなぁ!)
ゴーンが更に笑みを深めると同時に、ガンッと衝撃がくるが、痛くも痒くもない。
ブワァッ! パチパチパチッ……
鎧熊の頭がクロロが放った炎の竜に飲み込まれる。
グオオォオオオオン!!
巨大な咆哮に戦闘の終わりを確信するゴーンは、スキルを解除するが、ギョロリッと自分を見つめる真っ赤な目と視線が交わる。
「クロロ! まだ死んじゃいねぇ!!」
咄嗟に叫んだが、もう目の前には熊の手があった。
ガキンッ!!
ゴーンは咄嗟に盾で身を守ったが、後方に吹き飛ばされ壁にめり込む。
「ぐはっ……!!」
衝撃と共に吐血し、全身の痛みに顔を歪める。
(な、なんで……? 何で生きてやがる?! クロロの『煉獄焔』を喰らったんだろ?!)
キンッキンッキンッキンッ!
頭は燃え続けながらも、鎧熊はクロロに襲いかかっている。クロロは剣で力を上手く受け流しながら対応しているが、その表情は信じられない物を見ているかのようだった。
「ゴーン! 早く前衛に戻って、クロロを助けなさいよ!」
慌てて駆け寄ってきたメリダは回復をかける前に言い放つ。
(ふざけやがって……。怪我してるのがわからねぇのか?)
背中に激しい痛みと腕の骨折。どう見ても負傷している自分に対して、メリダのふざけた言葉は苛立ちを募らせるには充分だ。
「さっさと回復させやがれ! ぶっ殺すぞ!」
「……あ、うん。ごめん。『気づかなかった』。《超回復》!」
ポヤァ……
メリダの回復を受けながら、ゴーンはメリダの言葉にピクピクと顔が引き攣るのを感じる。
「はい! 早く行って! クロロが1人で戦ってるじゃない! あんたは盾でしょ! 回復してあげたんだから早く行きなさいよ!!」
「なんだよ、テメェ……」
ゴーンの方など一切見る事なく、クロロが剣で受け流すたびに「あっ! いや!」などと声を上げるメリダに頭の血管がピクピク動いている事を自覚する。
「何やってんの! さっさと行きなさいよ!」
やっとこちらを見たメリダの表情がひどく驚いているような物に変化していくが、ゴーンはメリダの首を掴み上げ、地面に投げ捨てた。
ドガッ!
「な、何するのよ!! 回復してやったじゃない! ウチにこんなことしていいと思ってるの? 回復がないとアンタは何も出来ないくせにっ!」
「うるせぇ。黙ってろ! 殺すぞ?」
「な、なによ! こんな時に何言ってるのよ!」
「黙れってんだよ!!」
ゴーンは倒れているメリダの腹に蹴りを入れて、クロロと鎧熊の方へと歩き始めた。
「う、うぅ……ぐっ、い、痛い……」
ゴーンは後ろからうめき声を上げるメリダに視線すら向ける事なく、クロロの戦闘をジッと見つめているミザリーに声をかける。
「おい! ミザリー! どうなってやがる? 何でアイツはクロロの炎を喰らっても死なねえんだ?!」
「なぜでしょうか……?」
「はぁ? ふざけんなよ? さっさと弱点を教えろよ! あの『無能』のノートがあるんだろうが!?」
「……」
「さっさと出せよ! 何黙ってやがる!?」
「あ、あと少しです。あと少しでクロロ様の魔力が……」
ミザリーはカタカタッと震えながらクロロの戦闘を見つめている。
(なんなんだよ! どいつもこいつもッ!!)
ゴーンは混乱していた。
何をすればいいのかわからない。【鉄壁】はあと1度しか使えない。討伐法もわからない。
こんな事は、このパーティーに入ってから初めての事だった。
――ゴーン! 【鉄壁】はまだ使うな! 冷静に攻撃を受け流せ! あと3回凌いだら、大技が来る! そのタイミングで【鉄壁】! その間にクロロの煉獄とミザリーの弓で仕留める!
頭の中にはローランの声が響いていた。あれは確か炎剣がAランク昇格をかけた『大鬼王』の討伐の時だった。
――さすがだな! ゴーンは絶対に砕けない『最強の盾』だ!
嬉しそうなローランの笑顔が頭に浮かぶ。
――当たり前だろ? テメェみてぇな『無能』とは全てが違うんだよ! このパーティーのお荷物がッ! 2度と俺に指図するんじゃねぇ!
ローランが嫌いだった。何の『力』もないクズが必死になって、『頑張ってます』なんて顔がムカついて仕方がなかった。
(ク、クソが……)
未だに頭が燃え続けているのに、鎧熊の赤い目には鋭さが消える様子はない。
「ゴーン!! 何してる!? さっさとフォローに来やがれ!」
血走った瞳に鬼の形相を浮かべるクロロと目が合うとゾクッと背筋が凍る。
(な、何すりゃいいんだよ……!?)
ゴーンは何をすればいいかわからない。ただ、ダンジョンに入る前にクロロに植え付けられた『恐怖』に突き動かされるように駆け出しただけだった。
次話「クロロ一行のダンジョン攻略 ④」です。
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