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13話 一蹴と賞賛



 ギースはまた俺に覆いかぶさるように至近距離で睨みつけてくる。


「なんだよ? さっきまでブルってたくせによぉ! 女を助けてヒーロー気取りか?! 出てきたところで『魔力0』のテメェに何ができるんだ? 痛え目に遭いたくなけりゃ、大人しくしてろ! もうテメェには興味がねぇんだからよ!」


「何度も言うが、俺はもう『炎剣フレイム・ソード』とは関係ないし、お前にも興味はない。でも、冒険者を支えてくれてる受付嬢に下品なせまり方をするのはやめろ」


「……あぁ? 殺されてぇのか?」


「いや、全く殺されたくはないな」


「……このガキ……!!」


「もう帰れ……。この事はギルドマスターにも報告させてもらう。然るべき措置を受けるんだな、ギース」


 俺は当たり前の事を言っただけなのだが、ギースはピクピクと顔を引き攣らせる。


「このクソザコのゴミが……。俺は弱ぇくせに正義漢ぶってしゃしゃり出てくるやろうが大っ嫌いなんだよ!!」


「そもそも絡んで来たのはお前だろ? これだけ目撃者がいるんだ。どちらにしろ『降格』は免れないだろ?」


「……お前、本当にぶっ殺されてぇのか?」


「やめておけ、お前じゃ無理だ。ちゃんとミラに謝って、ギルドマスターの指示を仰ぐんだ」


「……ガッヒャッヒャッ。このクソザコやろうがッ!! 俺様を舐めてんじゃねぇ!!」


 ギースは丸太のような太い腕を振りかぶり、拳を俺の顔へと飛ばして来る。



パシッ……。



 一瞬で『気』を練り上げながら、それを片手で止める。周囲から「おお……」と少し感嘆の声が上がったことなど俺には気づかない。


 受け止めた拳に少し力を込めて握りこむ。



ミシミシミシッ……



 ギースの骨の軋む音が聞こえる。


「あがっ……うっ……くっ……いて……痛え……く、クソが……。《身体強化ボディ・ブースト》……!」


 ギースは魔法を展開して全身の力を強化するが、俺はもう少しだけ握る手に力を込め、一切身動きが取れないように『痛み』でギースの行動を制限する。



ギシギシギシッ……



「なっ……!! ぐっ、あぁ……」


「ギルドの支えがあっての冒険者。冒険者がいてのギルド。お互いが支え合って一つの組織だ。無闇に冒険者の悪評を広めるな。『冒険者』って職業が妹に嫌われちまうだろ?」


「な、なんで……。くっ……あが……は、離して……」


「……ミラにさっきの言動を謝るんだ」


「いて……。痛ぇ!! ク、クソがッ……。グッ……あ、あぁ……!! さ、さっさと離しやがれ!! このクソッ……」


「あと5秒でもう少し力を込める。5、4、3、2、」


「あぁああ!! や、やめてくれ! わ、わかったから、早く手を離して……くれ!!」



ドサッ……



 俺が手を離すと、ギースはその場に膝を突き手首を押さえて悶絶している。


「……うんちは垂らしていないようですね、マスター! 怪我もさせてませんし、とてもスマートな対応にノルンは見惚れてしまいました!」


 ノルンは俺の顔を覗き込みながら屈託のない笑みを浮かべるが、


「ノルンがわざと俺を笑わせるから、こんなに大事になったんだぞ? 今日はもうキスはなしだ……。非常用の『栞』は俺の髪の毛で挟むからな?」


 俺は『お仕置き』を小さく呟いた。


 ノルンはピシッと固まりパチパチと瞬きをするが、俺はクスッと笑みを溢し、ミラに視線を向ける。


「ミラ、怖い思いをさせて悪かった。すぐに対応出来なかった俺の落ち度だ」


「……い、いえ……。助けて頂いてありがとう、ございます……」


 ミラはうわ言のように呟きポーッと頬を染める。


 俺が「ん?」と小さく首を傾げていると、背後から『殺気』を感じ、即座に固まったままのノルンの腰を引き寄せる。


「……し、死ねぇ!! この『無能』がッ!!」


 ギースは叫ぶと同時に腰元の剣を抜くそぶりを見せるが、俺は剣のつかの部分を足で踏みつけ抜剣を阻止する。

 


チャキッ……



 小さな音を響かせ、数センチ抜かれた剣はまた鞘に収まった。ギースは驚愕の表情で俺を見上げ、ブルッと身体を震わせる。


「な、なんなんだ……お前……」


「抜くな……。それを抜けば『ただの揉め事』じゃなくなるぞ? 本当に俺の命を奪う気か? お前には命を奪われる覚悟はあるか?」


 ギースの目をしっかりと見つめ、本人にしか聞こえない声で小さく呟く。


「マ、マスター……」


 うっとりとしたノルンの声にハッとして腰を離しながら苦笑する。


 ノルンはどんな攻撃でも当たる事はない。でも俺には見えているから、咄嗟に庇ってしまう癖はいつまで経っても治らないのだ。


 はぁーっとため息を吐きながら、ガッチガチに固まっているギースに言葉を促すように首を傾げるが、次第にガクガクッと震え始めただけだ。


「……? 続けるならギルドの外に出ろ。こんな所で戦闘したら迷惑だろ?」


 ギースはブンブンブンッと勢いよく顔を左右に振り、


「ち、違う……。悪かった。俺が悪かった! か、勘弁してくれぇ……!! もうあんたには逆らわねー……。 だ、だから、もう勘弁してくれぇ!!」

 

 ギースはドガッとギルドの床に頭をつけて更にブルブルと震え出した。


(……え、えぇー……)


 怪我するような危害は加えていないはずなのに、心から怯えきったギースの対応に苦笑する。


「な、何者なんだ? ローラン・クライス!!」

「すげぇぜ!! あのギースを屈服させちまった!!」

「後ろに目でも付いてんのか?! 半端じゃねぇ!」

「何がどうなってんだ? 『魔力0』じゃなかったのかよ!?」


 周囲から割れんばかりの歓声が響き渡る。


「い、いま『ソロ』なんだよな? 俺達のパーティーに入らねぇか?」

「馬鹿野郎! 『ローランさん』は俺達のパーティーに入るんだよ!!」

「わ、私、治癒士です!! ぜひ、《ローラン様』のパーティーに入れてくれませんか?!」

「俺、『B』ランクのパーティーで盾役してるんです! ぜひ、俺をローランさんのパーティーに入れて下さい!!」


 俺の周りに押し寄せる冒険者達の波に顔が引き攣って仕方がない。


 これまでにはないほどの周囲の反応に、対応し切れない。王都を救った時ですら、これほど『求められる』事はなかった。


(こ、これどうすれば……)


 顔を引き攣らせながらも笑顔を作ると、俺に押されるような形で端に追いやられたノルンが、ぷくぅっと頬を膨らませているのが見え、クスッと笑ってしまった。



バンッ!!



「何事だ? 俺のギルドで、俺の知らない事で盛り上がってんじゃねえ!! お、俺も混ぜてくれよ!! 何があったんだ!?」



 大声で叫びながらギルドに駆け込んで来たのは、元『S』ランク冒険者、『月光ムーン・ライト』のリーダー。


 王都ルベリーのギルドマスターにして、ルベル王国の冒険者ギルドの総括である『グランドマスター』の『ヨルム』だった。





次話「ノルンのマスター」です。


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