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11話 冒険者ギルドにて……



 ご機嫌なノルンを連れて王都を歩く。


「マスター! まずは『ギルド』ですね?」


 至近距離で俺の顔を見つめてくるノルンに俺は『一度だけ』瞬きしてそれに応え、肯定する。


「それから、剣を調達。すぐにアリスの元に?」


 俺はまた一度だけ瞬きをする。


 王都滞在は5日を予定している。


 今日中にアリスの元に行き、アリス本人の意思を確認する。数回に渡る邂逅でアリスの考えはわかっているが、不当な扱いを受け続ける『聖女』には気持ちを整理する時間は必要だと前から思っていた。



 魔王討伐を果たしたルベル王国の指名勇者『アーサー・ペンドラゴ』のパーティー。


 魔王を討伐を果たし、本来なら『英雄』として讃えられるべき勇者を『災い』を振り撒いた大罪人として処刑し、聖女は『呪い』を治す事のできない『無能』とさげすみ牢屋に入れられているのだ。


 『黒涙こくるい』に抗う術のない者達が、行き場のない憤りを、勇者パーティーにぶつけた結果だが、そのあまりにバカげた判断に俺は、ずっと前から憤慨していた。


 勇者達は果たすべきことを果たした英雄。

 俺の心の指針は勇者の生き様にある。


 

 街を行き交う人達は笑顔を浮かべている。

 この平和を掴み取ったのは、間違いなく勇者の功績なのだ。そして、『これから』起こる事なんて、誰一人として思ってもみない様子だ。


 俺だけが知っている。


 あと3日で王都に黒飛竜ブラック・ワイバーン『A+』の群れが押し寄せる事を……。


(2日早く着いたのはよかったな。3日も準備に使える。『前回』で死者ゼロは達成したが、上手くやれば負傷者すらゼロに出来るはずだ……!!)


 その脅威から王都を救い、その褒賞として『聖女』の解放を要求するのが、今回の段取りだ。


 本来なら王都は壊滅状態となり、たくさんの命が失われることになる。


 この事件を知った俺は王都の人達を救うためにここに訪れ、それがアリスとの邂逅のきっかけになったのだ。


 シャルを救うのも、ダンジョンを攻略するのにも、まずはアリスの力を借りる事が1番だし、そもそも俺は『聖女』の幽閉は不当の措置だと思っているのだから、これは絶対に必要な『1歩目』だ。



「マスター。特に変わった様子はありませんね」


 ノルンはキョロキョロと周囲を観察しながら進んでいる。2日早い王都訪問に『イレギュラー』がないか確認してくれているのだろう。


(確かに、特に変わりないな……。おかしなところも見当たらない)


 しいていえば、俺の大荷物とボロボロの服装に顔を引かれているだけだが、これは『いつも』の事だ。




(……相変わらず、騒がしい)


 冒険者ギルドの横の酒場からは、昼間だと言うのに大きな笑い声や怒鳴り合う声などが表まで響いていて、思わず苦笑してしまう。


 王都のギルドには隣で酔っぱらった冒険者がそのままギルドに来る事が多いから少し苦手なのだ。



カランッ……。



「なんだ? あの大荷物は?」

「……ん? 見ねぇ顔だな」

「ソロか? ふっ。どうせゴブリンをちまちま討伐して小銭稼ぎしてるヤツだろ!」


 パラパラと俺に対する感想を述べる冒険者もいるが、俺は構わず受付へと歩く。


「こんにちは。素材を換金して欲しいんだけど?」


「……す、すごい荷物ですね。わかりました。では、冒険者カードの提示をお願いします」


 受付嬢の『ミラ』は俺の背負っていたリュックに顔を引き攣らせ、冒険者カードを受け取り小さく首を傾げた。


「『ローラン・クライス』さん。……『炎剣フレイム・ソード』、ランクA……。スキル『栞』に……、ま、『魔力0』!?」


「あっ。パーティーからは脱退したから、更新して貰えるか?」


「……は、はい」


 ミラはキョトンと俺の顔を見つめ、ハッとしたように慌ててカードを『真実の箱』と呼ばれる魔道具の中に入れた。


「お、おい。『炎剣フレイム・ソード』って、あの公爵家の……」

「……そ、そうだ! クロロ・ルルーシュ。『神童』のパーティーだ!」

「あれ? ……ローランなんてヤツいたか? 確か優秀なエリートで結成された化け物パーティーだろ? 最短で『A』になった」

「スキル『栞』ってなんだよ。かなり弱そうだな」


 少しざわざわとするギルド。


 これも『いつも』の事だ。


 初めて来た時は(王都まで名が知れ渡っていたのか!)と驚きもしたが、今となっては少しの動揺もない。


 特にここから何かが起こるわけじゃないし、この後、魔物の素材を広げた俺に、ミラが興奮して王都のギルドマスターである『ヨルム』を呼びに行くだけだ。


「……ロ、ローランさん。こちらでよろしいですか?」


 ミラから手渡された冒険者カードからは『炎剣』の文字が消え、ランクは『F』になっている。スキルと魔力量の表記は同じだ。


「ああ。これで問題ない」


「……そ、そうですか。し、失礼ですが、大丈夫ですか? その、新しいお仲間は見つけてあるのでしょうか?」


 ミラは引き攣った愛想笑いを浮かべる。

 ミラは優しくていい子だ。俺の魔力量やよくわからないスキルに戸惑いながらも、毎回俺の身を案じてくれる。


「大丈夫! 心配してくれてありがとう」


「……」


 ポーッと頬を染めるミラにノルンは俺の服の裾を摘む。


(……また『女の子に笑いかけるの禁止です!』とか言われそうだな)


 口を尖らせるノルンにそんな事を思いながら頬が緩んでしまいそうになるのを堪える。


 ミラは受付嬢として明らかに弱そうな冒険者である俺を心配してくれているだけなのに、ノルンは些細な事で嫉妬する困った女の子だ。


「あの、素材を換金して貰っていいか?」


「……はっ、はい!! ご、ごめんなさい! かなり量があるようなので、あちらのスペースで広げて下さい」


「わかった。驚くとは思うけど、そんなに大袈裟に驚かないでね?」


「……? はぃ……」


 ミラが驚きすぎて失神したのは3回。ここで一声かけておくのが失神回避に繋がるし、時間の削減にも繋がるのは把握済みだ。


(……今回はいつもより急いだから、前よりは少なめだし、必要なかったか?)


 そんな事を考えながらリュックを開けようとすると、ギルド内に大きな笑い声が響く。



「ガッヒァッヒァッ!! 『魔力0』の冒険者が『炎剣フレイム・ソード』にいたのか? 『時代を作るパーティー』なんて呼ばれているが、やっぱり大した事ねぇんだな!!」



 俺は声のする方に視線を向けながら『驚いた』。


(誰だ? コイツ……)


 俺はこの冒険者を知らない。


(張り切りすぎて早く来てしまった代償か? ……だ、だっていつもより調子が良くて嬉しかったんだから仕方ないだろ!?)


 心の中で嘆くがもう遅い。


 それにしても、こんなに早く『イレギュラー』が起こるとは思わなかった。チラリとノルンに視線を向けるが、キョトンとして大きく首を傾げているだけだ。


(やれやれ……)


 俺は苦笑しながら、大きな身体を自慢げに見せびらかし、ニヤニヤと笑みを浮かべる赤髪の男と向き合った。




次話「『うんち垂れ赤モグラ』」です。


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