表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

40代独身男性の幸せ

作者: 猫舌

幸せになるために、必要なことは自分が強くなることだと、やっと気がつきました。

40代の独身男性、童貞、安アパートに一人暮らし。


食事はコンビニ弁当が中心で、たまに大盛りペペロンチーノを昼食に買って食べきれず、夕食と半分に分けて何とか食べきる。


趣味はネットとアニメ。


公務員だが成績は悪く、昇任の意欲はない。

人生の目標とか考えるも、全く浮かばない。


だが、自分は幸せであると、自信を持ってそう言える。


自分の人生はこの安アパートで一人暮らしを始めるまで幸せだと感じたことがなかった。


母親は市立小学校時期から、成績が悪いと自分を殴り、大声で罵った。

母親は高校を出てすぐ就職したので、自分に大学に行け、良いところに就職をしろと常に言っていた。

自分を興奮して殴り続けている途中に、家の電話が鳴ると愛想良く応対し、笑う母親が不思議だった。

母親は時々叫びだし、自分の教科書やノートを家の近くの畑に放り投げ、


「アンタが悪い。アンタが投げたことにしろ、拾ってこい。」


と自分に言った。


自分の家は高台にあって、高さ2メートル下の家の周りは田んぼだった。

ある日、機嫌が悪かったのか、母親は自分を家から田んぼに突き落とした。


母親は田んぼに落ちた痛みにもがく自分を見た後、


「田んぼの稲が倒れるから、早く上がってこい。」


そう言って家の中に入っていった。


自分は左肩を下にして落ちていて、左腕が肩から上に上がらなかった。

左肩の鎖骨が折れていて、全治1ヶ月だった。


自分は父親に、自分で足を滑らせて落ちたと説明した。


中学生になっても、母親は変わらなかった。

市立中学校の入学時に、自分は背が高かったためバレーボール部に誘われて、友人が欲しかったため入部して帰宅した。


中学校の先生は、


「部活動は友人を増やすし、運動にもなるから。」


そう言って自分に部活動を勧めてくれたのだが、母親は自分を殴りながら、


「大学まで友達なんか必要ない。部活動は、一度入ってすぐ辞めたら、内申点に響くから続けろ。勝手な事は二度とするな。」


そう自分に命令した。


母親は、自分が部活動が終わるとすぐに中学校近くの進学塾で勉強するようにと命令し、進学塾の月謝の金額を自分に告げ、


「お前にはこれだけ金をかけているんだ、言うことを聞け。」

と言った。



中学校の3年間、自分が住んでいる街で遊びに出た事は無かった。

クラス、部活動で知り合いは出来たが、友人と言える人はいなかった。


高校受験は市内では成績上位とされる県立高校の普通科に入学した。

高校生になってから、自分の成績は普通科全体で上位ではあるも、トップ5位に常に入るものではなくなった。

小学校、中学校では体育以外の成績はトップだった。


母親は狂乱して、高校1年生の間は定期試験の時には必ず自分を怒鳴りつけた。


高校生になっても、中学生の経験からバレーボール部に入っていたが、3年間で一度もレギュラーになれた事はなかった。

バレーボール部を辞めようとすると、母親は怒って自分に、


「一度決めたら最後までやれ、この根性なし。辞めたら内申点に響くだろうが。部活動は続けろ。」


いつもそう言った。


高校生の記憶も、授業、部活動、塾しかない。


母親が自分に生徒会活動をして内申点を稼げと命令したため、生徒会活動に参加して監査委員になった。

充実した表情で部活動をする高校生の、部活動の予算の調整をするのはとても自分を惨めに感じさせた。


高校生活を過ごす中で、法律を勉強して、警察官になりたい、と考えた。

自分の家庭の環境が嫌だった。誰かの役に立つ仕事がしたかった。町にある交番で、笑顔で道案内をする警察官を見て、あんな風になりたいな、と思った。


高校を卒業してすぐにでも警察官になりたい、と考えたが、母親が許すわけがなかった。


自分は地方の国立大学の法学部の進路希望を高校に提出した。


高校3年生の夏、学年主任の先生から、自分に東京にある私立大学の経済学部の推薦枠を受けさせてもらえると言う話を受けた。

自分は法学部志望だったので、学年主任に推薦は断ると返答し帰宅した。

母親に推薦枠の話をして、自分が断ったと告げると、母親は激怒して自分の腹を殴った。

母親は明日朝すぐに、学年主任に推薦の話を受けると伝えろと言った。


自分が東京都に私立大学に推薦入学が決まると、母親は周囲の人達に自分の大学合格を自慢して回った。


母親から離れ、大学に入学しても、すぐに自分の性格を変える事は出来なかった。


高校の推薦枠の維持のため、大学の授業は全出席し、成績は良くなければならず、大学で知り合った人と、遊びに行くことは大学3年生までなかった。

大学の授業は難しく、全ての時間を勉強に当てていた。


地方国立大の法学部志望だったので、東京の私立大学の学費ほどのお金は家になかった。

自分が大学生活で使える金額は、通常授業の単位を取り終わる大学2年生の修了まで実家からの仕送りの1日千円だった。


大学3年生になってから、自分はアルバイトを始めた。


大学の知人と一緒に食事をした事は、大学3年生になるまで無かった。

大学の成績を維持しながら、アルバイトをこなし、初めての外食で食べた、大学の近くのお店の板チョコ入りの豚カツはとても不思議な味で美味しかった。


大学卒業時期になって、母親から連絡があった。

実家に戻って、県庁か市役所の公務員試験を受けろと母親は言った。


自分が警察官になりたいと告げると、母親は電話越しに、


「東京の大学まで行かせて、何で警察官なんか。戻ってこい。実家から通勤できるところの公務員になれ。」


と怒鳴った。


母親の言いつけどおり、自分は公務員になった。

職場には活気がなく、笑顔はもちろんない。

受付から回ってくる書類の処理と受け渡しだけが仕事の全てだ。

定時になったら周囲を見回し、ぎりぎりまで残業手当を稼いで、両親のいる家に帰った。


たまに食事の味がしなくなることがあった。


母親はは高齢になり、車の運転もできなくなった。

母親は自分が大人になっても気に入らないことがあれば自分を怒鳴りつけた。

自分の給料は口座から出してくる度に母親が財布から抜き取った。


父親は自分が幼い頃から変わらず、母親が自分を殴り、怒鳴りつけても静かに見ていた。

大人になっている自分が、母親に土下座させられ、罵られても、ただ見ていた。


ただ、こんな自分に機会が訪れたのだ。


母親が唐突に、自分を怒鳴る際に、


「この家は私の名前の字が入っているお前の弟に譲る。お前はもういい。」


そう言ったのだ。


自分には4歳年下の弟がいる。


弟が母親に怒鳴られたり、殴られていたりしたのを見た事はない。

弟は結婚もしていて、娘と息子がおり、自分が住む家から車で15分くらいの場所に家を建てて住んでいる。

弟の名前には『幸』と言う母親の名前の文字が1文字入っており、自分が見ても弟は幸せに暮らしていると思う。


弟の家族が家に来て両親と食事をするときは、自分は両親と住む家の2階の自分の部屋から出ることが許されていなかった。


社会人になってから、弟と会ったのは玄関ですれ違った時と、弟の結婚の両家の食事会に出たことを含めて、自分が社会人になって約20年で5回くらいだ。


母親の母で、自分には祖母にあたる方は、孫に100万円ずつ財産を残して亡くなったと聞いたが、自分は受け取っていない。そう言う事だ。


今、自分は実家を出て安アパートで暮らしている。


自分の周りは漫画やゲーム機で囲まれている。


誰に気を使うことのない、一人暮らし。


食事はコンビニ弁当が中心だが、今は気が向けば、若い頃に憧れた焼き肉食べ放題や、夜中のラーメン屋に行く自由がある。


結婚はしない。

自分が好意を持った人はいたが、自分の母親に関わらせたくなかった。


思えば、母親が自分を結婚させるために、自分の携帯電話の番号やメールアドレスを勝手に母親の知人を通じて女性に教えて、自分に対し、相手の女性を食事に誘えと言った事があった。

自分が母親の命令に逆らったのは、女性に結婚を申し込まなかった事だけだ。


自分はこの一人暮らしを守りながら、母親の寿命が尽きるのを楽しみに待っている。


葬式には出ない。

弟に任せる。


遺産相続は、遺留分の現金のみ受け取る。


最初から幸せな人生を送っている弟に、両親も、家も全て差し上げよう。


自分はやっと自分が幸せだと言える。

誰にも邪魔はさせない。

自分のようにならないように気をつけてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ