≪第一章≫出会い
それから2日経っただろうか。
相変わらず監禁室で歌っていた。
すると突然異音がした。
<ガチャン!>
それは金属の音だった。
「なんだろう?」と、少年は思った。
実際は鉄格子にフックがかかった音だった。
<トタトタ>(壁を登る足音)
その後、突然誰かの声がした。
「おいーっす。」
その出会いは突然だった。
その人は言った。
「君の音をもっと聴かせてくれないか?」と。
僕は言った。
「そんなこと出来ないよ。」
「どうしてさ。」
「だって、監禁室にいるんだよ。」
「いつも歌ってたジャン。」
「それは親にばれないようにこっそり…。」
「ならその音でいいよ。俺に聞かせてくれ。」
「わかった。なるべく静かに歌うね。」
それから少年と不思議な男の人と鉄格子越しの交流が始まった。
少年はその人から外の話をいろいろと聞いた。
社会情勢、その人が持っている音楽の話、目に見える[色]の話。
少年は何もかも忘れて夢中で聞いていた。
時にその人が少年に歌を聴かせることもあった。
親にばれないように小声でひっそりと。
僕はそれに付随する音を出して遊んでいた。
それから4日経った。
あいかわらず交流は続いていた。
その人は言った。
「君は面白い旋律を持っている。」
「え?僕が?」
男は言った。
「ここから出たくないかい?」
「出たいけど、無理だよ。親もいるし。」
「俺は君をここから出すことに決めた!」
「ええ?!」
「準備はしてある。」
その男は道具を使い、鉄格子を壊して本当に少年を外に連れ出したのだった。
外は部屋の中と違い木々の強い香りがした。
外に出るのは生まれて初めてだった。
少年が言った。
「このすがすがしい香りはなんだい?」
「うん?何のことを言っているんだい?」
「僕は外へ出るのは初めてなんだ。この暖かい日差しはわかるけどそれと反対のすがすがしい影の香りが僕には感じられるんだ。」
「あー。それは多分、植物の香りだよ。」
「植物?」
「そう。俺たちが呼ぶ色の中では『緑色』って呼ばれているんだよ。」
「へー。」
少年はしばらく木漏れ日の中にいた。
そして言った。
「これからどうするんだい?」
「ああ、実は連れて行きたい場所があるんだ。」
「え?それはどこだい?」
「それは行ってのお楽しみさ。」
そう言えばと、少年は言った。
「ところであなたの名前は?」
「トムだよ。君は…マイケルでいいんだよね?」
「そうだよ。知っていたの?」
「ああ。ちょっと調べさせてもらった。じゃあ行こうかい。」
それから2人は無言で、トムにマイケルは手を引かれながらしばらく歩いた。
どれくらい歩いただろうか。
初めて…いや、聞いたことがあるような『ピアノ』と違った音色の音が聞こえてきた。
「この音はなに?」
「パイプオルガンの音さ。君は教会も知らないのかい?」
「うん。初めて聞いた。でもこの音、聞いたことがあるようなないような…。」
教会からはパイプオルガンの音色と供に同じ音程の2つの合唱の声が聞こえてきた。
その当時のパイプオルガンは和音が出せず、一つの音しか出せなかった。
その音と同じ音程ので、男女の2つの声が聞こえてきたのである。
僕は不思議に思ってトムに言った。
「なんで3つの音が同じ音なの?」
「うん?それはどういう意味だい?」
「パイプオルガンといわれる音と声の音程が一緒なのが不思議なんだ。」
「君は変わったことを言うね。」
トムが続けていった。
「パイプオルガンはお手本の音で声はそれに習って歌ってるんだよ。」
「へー。そうなんだ。」
マイケルは感心しきりだった。
その時である。
マイケルはその3つの原音に合わせる形で、適当に上のメロディーを歌い始めたのである。
「♪〜♪〜♪」
その『ハモリ』は規則性がなかった。
音楽が終わったとき、トムは感動しながらいった。
「すごい!なんだい?そのメロディーは?」
「わからない。ただ思ったメロディーを口にしてみただけだよ。」
その時、トムは訳もわからず心が震えた。