表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/39

32 アーサーの過去

 

 今度こそ助からない、そう思った時。


「ぐはっ」


 とこちらに向かっていた敵が血を吐きながら倒れた。


 そしてその後ろには扉の前で倒れていたはずのアーサーが立っていた。

「アーサー! 無事だったのか」

「陛下!! 遅くなり申し訳ございません」

「助かったぞ。アーサー、そっちはお前に任せた」

「はっ。お任せください」


 そう言ってリヒトはヘンリーと、アーサーは残った4人と戦い始めた。

「くそっ。こいつはさっき倒しただろう。どこにこんな力が?」


 アーサーと戦っている敵が不思議そうに言った。

「陛下が危険な目に遭われているのに、寝ていられるはずありませんから。死ぬ気でお相手いたします」

 アーサーはかなりの傷を負っていたが、4人相手に互角の戦いをしていた。


 リヒトもなんとか持ち直し、ヘンリーと戦っている。

「どうしてまだ戦える? お前はもう限界だったはずだ」

「ここで負けるわけにはいかないからな。今の俺には守りたいものがたくさんある。あの時とはもう違うんだ」


 そう言って、リヒトはヘンリーの剣を弾き飛ばし、首に切先を向けた。それを見たアーサーと戦っていた敵は戦意を失った。


「くそっ、ここまでか。結局俺の復讐は果たされないまま……。なあ、最後にお前に一つ聞きたいことがある」

 潔く負けを認めたヘンリーはアーサーに目を向けた。

「えっ? 私、ですか?」


 なんの接点もないアーサーにいきなり話を振られ、少し戸惑ったように聞いた。


「お前はどうしてこの男に忠誠を誓えるんだ? 俺にはそれが理解できない。それにこいつは前国王、実の父親を殺した奴だぞ? そんな奴にどうして!?」


「それは、私が陛下に命を救われたからです。私にとって陛下は第二の人生をくれた方なんです」

「第二の人生?」


 アーサーは昔の記憶を辿りながら話し始めた。


「はい。もう何年も前の話なのですが、私は幼い頃人様から金品を奪ったり、店から食べ物を盗んだりして生きていました。もちろんそれが悪いことだとわかってはいましたが、そうしないと生きていけませんでしたから。あの頃は毎日生きるのに必死でした」


 エレナは国王の執事なのだからしっかりした家柄の出だとばかり思っていた。


「その、ご両親はいらっしゃらなかったのですか?」

 話の腰を折るのは悪いと思ったが、気になったので聞いてみた。


「はい。物心ついた時から私は1人でした。おそらく捨てられたのでしょう。親の顔は知りません。生きているのか死んでいるのかも」


 エレナは家族に苦しめられた過去があるが、アーサーは家族がいないことで苦しんだ。エレナは家があるだけ、食べるものがあっただけよかったのかもしれないと思った。


「そんな生活をしていた時、私は陛下から金品を盗んでしまったのです。失礼ですが、その時の陛下は幼かったので、まさか国王だとは思いもしませんでした」


 その時のことを思い出し少し申し訳なさそうに話した。


「盗んだ後、もちろん追っ手が来ました。しかし、いつもは簡単に逃げ切れるのに、その時初めて捕まってしまったんです。その時、私を捕まえた方が今の騎士団長である、ルイス様でした。ルイス様に連れられ陛下の元に行った時、目の前にいる方がこの国の国王だと知りました」


 この部屋にいる誰もがアーサーの話に耳を傾けている。アーサーに質問をしたヘンリーもまた口を挟むことなく聞き入っている。


「捕まって処刑されることになった時、正直ホッとしたんです。やっとこんな日々から解放されるんだと。喜んで処刑を受け入れました。もう、生きることに疲れていましたから」


(きっとあの頃の私なら、同じように喜んで処刑されていたかもしれない。あの地獄のような日々から逃げられるのならたとえ死であったとしても)


 エレナはアーサーに共感しながら話を聞いていた。


「でも、王宮についてからなぜか私は陛下のお部屋に招かれました。それだけでなく、豪華な料理まで出てきて、私は何が何だかわかりませんでした」

「どうしてお前は処刑されなかったんだ?」

 不思議に思ったヘンリーが問いかけた。


「私も理由は分かりませんが、その時陛下が執事をやってみないかと仰ってくださったんです。もちろんお断りしました。マナーなんて何も分かりませんでしたし、人に迷惑をかけてばかりの私に陛下の執事が務まるとは思えませんでしたから。それに陛下から物を盗んだ私が、陛下の執事なんてふさわしくありませんから。しかし、決定事項だと半ば強引に執事になり今に至ります」


「お前はどうしてこいつを選んだんだ?」

 長く王宮に仕えていた自分は追い出されたのに、どこの誰かもわからないアーサーは執事にしたことに少し苛立ちを覚えたヘンリーはきつい口調でリヒトに聞いた。


「そうだな。あの時の俺は誰も信じられなくなっていたんだ。そんな時アーサーに出会った。俺と同じ目をしてた。誰も信じられない、この世を恨んでいるような。そんなアーサーが俺と重なって見えたんだ」

「そんなことでこいつを選んだのか?」


「もちろん理由は他にもある。俺から物を盗んで逃げるアーサーの姿を見た時、このまま殺すのはもったいないと思ったんだ。身体能力が長けていたからな。それに自分が処刑されると知ってもアーサー命乞いをしなかった。誰も皆、自分の死を悟った時は命乞いをするものだと思っていたから、半分興味本位でアーサーを執事に任命した」


 初めて聞くその話にアーサーは少し驚きながら聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ