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29/39

29 もっと強ければ

 

 敵と攻防が続いていた時、急に敵の動きが止まり倒れた。そしてその後ろには剣を持ったアーサーが立っていた。アーサーはエレナを見て目を丸くした。


「エレナ様!? こんなところで何をされているんですか? 急いで王宮から逃げてください。見ての通り王宮は今危険なんです」

「陛下は? 陛下はご無事なんですか!?」

 エレナがそう聞くと時、アーサーの顔が曇った。


「……分かりません」

「分からないってどういうことですか?」

「何者かが王宮に侵入した際、私は陛下から離れたところにおり、今向かっている最中ですのでまだ陛下の無事を確認できていないのです。それより、エレナ様。急いでここから逃げてください。あなたが怪我でもしたら陛下が悲しまれますので」

「すみません、それはできません。どうか、私も陛下のもとに連れて行ってください。剣なら多少は使えます。だからどうか」


 エレナとアーサーが話している途中、敵が3人現れた。しかし、それをアーサーは一瞬で片付けた。さすがの腕前だ。


「エレナ様、そのお願いだけは聞けません。ここにいれば必ず危険な目に遭います。ですからどうかお逃げください」


 しかしアーサーがそう言った途端、王宮の入り口から大勢の敵が攻めてくるのが見えた。それを見たアーサーは迷った末に決断した。


「エレナ様、私から離れないでください。王宮から出る方が危険だと判断したので、一緒に行きましょう。エレナ様は必ずお守りいたします。付いてきてください」

「はい!!」


 エレナとアーサーは走った。周りには誰もいない。敵も味方さえも。正確にはいないのではなく死んでいるのだ。ここはすでに戦いが終わった場所だ。エレナはなるべくそれらを見ないようにしながら走った。


 そんな状況で後ろからざっと30人は近づいてきている。いくらアーサーが強いといってもたった2人で対処できるはずもない。


 とにかく誰かと合流できれば。そう思っていた時、前方で戦いが行われているのが見えた。

 しかし、ここで立ち止まっていては後ろの敵に追いつかれてしまう。幸い、ここで戦っているのは10名程度だった。それにこの国で最強の騎士団長であるルイスもいる。ただ、傷ついた仲間を数人庇いながら戦っているので、苦戦しているようだった。


「エレナ様、少しこちらでお待ちください」

 エレナにそう言い、アーサーは戦いに加わった。


「アーサー!? 無事だったのか!」

「ルイス様、私も加勢いたします」


 アーサーが加わったことで戦況は一気に変わった。ルイスとアーサーの息の合った攻撃によってあっという間に敵は倒された。


 そして、戦いが終わったルイスはエレナの存在に気づいた。

「エレナ様!? アーサー、どうしてエレナ様をこんな危ないところに連れてきたんだ?」

「ルイス様、それは走りながら説明しますので今は進みましょう。エレナ様も走れますか?」

「ええ、もちろん」


 そして、ルイスたち5名を加え全員で7名になったエレナたちはリヒトが寝ている部屋へと向かった。道中彼らに、エレナと出会った経緯を伝えながら。


「そういえばルイス様、他の騎士団の者たちは一緒じゃなかったのですか?」

 騎士団長が連れているにしては少ないと思ったのか、アーサーはルイスにそう訊ねた。


「他のものは皆、私たちを先に行かせてくれたんだ。最初は30名程いたのだが、今となってはたったの5名だ。騎士団長として不甲斐ない」


 唇を噛み締めながら、ルイスは言った。

「他のものはどこにいるのか、どうなったのかわからない」

「ルイス様、エマは?」

 エレナがそう聞いたが、ルイスは首を横に振るだけだった。


 一行はそれ以降誰も会話をせず、ただ走ることに専念した。そして、リヒトが休んでいる部屋に近づいてきた時、今度はかなりの人数で戦いが行われていた。狭い廊下で戦いが起こっていたため、ここを通るのはなかなか厳しそうだった。しかし、ここまでくればリヒトのいる部屋までは目と鼻の先である。


 彼らは戦いの中に突っ込んでいった。

「エレナ様、あまり近づきすぎないように付いてきてください」

「分かりました」


 ここにいる敵は、先ほどエレナが戦った素人とは違いきちんと訓練を受けた者たちばかりだった。当然エレナが太刀打ちできる相手ではないため大人しくアーサーの言うことに従った。


「団長!!」

 騎士団長のルイスが現れたことで、味方の士気が上がったのを感じた。

「誰か陛下の元へ向かったものはいるか?」

「副団長が向かいましたが、たどり着けたかは分かりません」

「そうか、エマが向かったのならひとまずは安心だが」


 ルイスがそう言った時、後ろから追いかけてきていた敵が追いついたようだ。

 優勢だったこちら側が一気に劣勢になった。

「くそっ、数が多すぎる」


「エレナ様、こちらに」

 アーサーはエレナを呼んだ。後ろから敵が来たのだから後ろにいては危険だと思ったのだろう。しかし、どこにいても戦場の真っ只中で安全な場所などどこにも存在しない。


 アーサーはエレナを守りながら敵と戦っているため、次第に敵から受ける攻撃が増えてきた。エレナはただ守られているだけだった。


(私がもっと強ければみんなの役に立てたのに)


 しかし、今そんなことを思ってもどうしようもない。今のエレナにできることは何もないのだ。

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